~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

「インプラント」には限界があります。その限界の要因を解明することが患者の皆さんへの未来へと繋がる、ということについて

2019-08-08 12:30:25 | 手術による合併症


 ここに添付したのは、先月7月26日読売新聞に掲載された人工乳房の自主回収に関する記事です。
 
 この出来事自体は、側弯症とは直接の関係はありませんが、これに関連する国内外のニュース等を読んでいて気になったことが
 ありましたので、ここに記してみました。

 私自身の知識・経験的背景として、人工乳房自体を詳細に語れる立場にはありませんが、1980年代後半の米国での
 ダウコーニング人工乳房に対する集団訴訟のことが思いだされました。シリコーンが原材料なわけですが、あのときは
 確かこのシリコーンが自己免疫に影響して病気になる、というような内容だったと思います。
 結果的に医療機器として製造販売していたDow Corning社はこの訴訟を契機として会社がつぶれたことを記億しています。

 しかし、それから10年ほどたちますと、「あれ」は何かおかしい。人工乳房・シリコーンは病気とは無関係だった。というような
 研究・学術発表がでてきていたと思います。

 何が真実であるかは、私にはわかりませんが、「医療・医学 (Medical)」にはつねに、このような側面があります。

 メリット - デメリット という範疇で考えることもできますし、一方では

 だから医学などは信用できない (民間療法のほうが安全だ) というような主張に結び付ける人々も大勢いるわけです。

 ただ、このような記事を読むときに、ぜひとも考えていただきたいのは、100点(安全)か0点(危険) かではなく、

 何が問題となっているのか ? その記事は発生した事のどこからどこまでを示したものなのか ? ということを冷静に見つめて

 いただきたいということです。

 
 (青文字は august03のコメントです)

この事例で言えば、現時点で報告されていることは、

  ・およそ想定できる範囲での国内での使用患者数は約3万人

  ・同製品が原因とみられる血液がん(リンパ腫) ....正確には,ブレストインプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)
   による死亡例 1人が国内でも確認された

   ⇒ 発症 1/30,000

  ・米国FDA報告として、同リンパ腫の発症者は 世界で573人、このうち33人が死亡

   ⇒ 世界で何万個あるいは何十万個販売されていたかの数字の報告はない
     仮に、日本の3万個から類推すれば、世界での販売数は 20~30万個を大きく上回ると予想します。
     573/300,000 = 0.2%


  ・死亡と同人工乳房との直接の因果関係は医学的に解明されてはいない

  ・いわば、米国FDAは、患者の安全を考えて「予防的措置」として販売会社に対して「自主回収」するよう指導した
   米国FDA自体が、患者に対して、ただちに人工乳房を取り除く必要はない と述べている

  ・国内死亡例は、17年前に乳房再建で埋入した事例

  ・米国FDA Medical Device Reportによれば、
   死亡患者 33人のBIA-ALCL発見時の年齢は 37歳~83歳 (インプラント手術後 1~20年、中央値9年)
   インプラントした時の理由 Reconstruction (乳房再建) 5例、Augumentaion(豊胸術) 17例、不明 11例

  ・インプラントした患者さんには、定期的に医療機関を受診することが推奨されている

  ・BIA-ALCLの診断方法、診断基準は確定している

  ・自覚症状の目安としては、 [ インプラント周囲の腫れ、疼痛、左右非対称、しこり、発赤、胸の硬化、潰瘍 など ]




  ここから今回の本題に入らせていただきます。


  タイトルに

  「インプラント」には限界があります。その限界の要因を解明することが患者の皆さんへの未来へと繋がる、
   ということについて」

  と書きましたのは、この人工乳房自主回収に伴うニュースのなかで、次の幾つかの記事を読んだことが関係しています。


  引用は、 CNN Health . Breast implants are not meant to be lifetime devices


"Breast implants are not meant to be lifetime devices. They have a lifespan,

  and that might range from seven to 10-plus years, based on the implant and patient,

  " Dr. Tommaso Addona, a plastic surgeon and president of the Long Island Plastic Surgical Group in New York,

   said in March.

  
  米国形成学会会長のコメント

  人工乳房は一生埋め込んでおくことを目的としたものではない

  人工乳房それ自体にも、製品としての寿命がある

  おそらくそれは7年から10年強というところではないか




 また、日本乳房オンコプラスティクサージェリー学会・日本形成学会・日本乳癌学会の連名報告の中で、

 “現在(2017年5月まで) PROFILEには 126例の症例が登録されています。

  会員の先生方には症例報告にご協力くださいますようにお願いいたします”


  ⇒ 国内で同人工乳房を埋め込んだ患者さんが 約3万人いるなかで、患者登録が 126例 



 国内の場合、人工乳房を用いているのは乳がん手術をされた患者さんが大半だと想像されますので、術後定期検査を継続されていると

 予想されます。ですから、万が一にも BIA-ALCL血液リンパ腫を発症したとしても、その定期検査で発見されることになると思います

 早期発見が治療に繋がるわけですから、ここで私などがあらためて言うまでもなく、継続されることを願っています。


 と、同時に、医学全般の進歩を願う立場として、「患者登録」という先生がたの努力にもぜひとも協力していただきたいと願うのです。












 ここに掲げた3大学の「患者さんがたへのお願い」は根底にあるのは、同一の流れだと思います。


 医学・医療にはメリットもあれば、デメリットも存在します。患者さんにとっては、“メリットが全て”というのは当然なのですが

 メリットをメリットたらしめる為には、どのようなデメリット (リスクとか不具合や合併症の意味として) が存在するのか、

 その原因・要因は何か? それに対してどのように対策を練ればいいのか ?  


 このような事を考えて、明日の医療に繋げていくには、 [ 患者さんのデータ ] が必須となります。

 データとは、ひとりのデータよりも、ふたり、ふたりよりも三人、......それは多ければ多いほどデータとしての信頼性が高まる

 こととなります。



      私 august03の述べたいことは、ひとつです。 

      手術は避け得るならば、しないのがベスト


      しかし、しなければならない手術は

      民間療法者に騙されて後悔するよりも


      手術を受け入れて、それに立ち向かうことで

      得られるものが必ずあります。 
 

      ということ。




 下記に、側弯症手術後のリスクを年齢を併記した形で示してみました。(思春期)側弯症で手術をするとなった場合、

 お子さんの年齢は 10代前半だと思います。

 そして、現実として手術をすれば「終わり」ではなく、そこから「新たな闘い」が始まります。

 多くの場合は、「闘わずに」一生を終える方が大半だと思いますが、年齢が上がるに従って、骨の老化現象とも相まって

 なんらかの形で、再び整形外科(脊椎外科)の先生と共に、その発生した症状と向き合う事になります。











 昨今は「個人情報が洩れることを恐れて」このような医学データに協力することに対して、ネガティブな反応を示される方が

 増えていると感じます。


 個人情報は保護されて当然ですし、個人情報を取り扱う立場の人や組織はその防衛の完璧さを求められるのも当然です。

 患者データの入った USBを 持ち歩いていて紛失した等ということは絶対にあってはいけないことです。

 「患者さんへのお願い」を読みますと、過去に発生したそのような事例も踏まえて、情報の秘匿性・保護について

 二重三重にシステムを構築していると読むことができました。

 

   脊椎手術を受けられた患者さん、

  これから受ける患者さんには、ぜひとも先生がたの意図と、

  将来の医学・医療の発展のために

    登録制度に協力されることを願ってやみません




 そして、私は、先生がたとは別の視点から、手術(後)の不具合・合併症について、患者の皆さんへの情報提供を今後何回かに

 分けて、記載していきたいと思います。 体内に“医療機器 (インプラント)”を埋め込む手術の場合、手術1年を経過して

 発生する不具合には“インプラント”に起因するものが少なくありません。


 患者さんは医療機関・医師を選ぶことはできますが、“インプラント”を選ぶことはできません。

 しかし、現実には、(医療機器メーカーが製造販売する) “インプラント”によるトラブル というものもある。
 
 ということは、患者の皆さんも知っておかれるほうが良いと考えました。





 
 関連する記事として カテゴリー [ 手術よる合併症 ] もご覧ください。


august03


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