採卵前週期のピルは有り無し? | 不妊治療DE1000万円

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過去の不妊治療をエッセイ漫画にしています。

採卵前週期のピルの是非について質問を受けました。
記事にしてもいいか聞いたところOKとのことで載せることにしました。
文字ばかりなので(^_^;)
興味ある方だけどうぞ。


質問内容

突然のメッセージですみません。
マンガが大変わかりやすく、いつも勉強させて頂いております。

質問なのですが、ドシローさんは採卵前周期にピルを処方されることはごさいますか?
私は初めての採卵がロング法で、採卵前周期にピルを飲みました。採卵・受精数は多かったのですが、凍結数が少なく、胚盤胞にはなりませんでした。この結果を踏まえて、次はアンタゴニスト法か黄体フィードバック法を提案されており、また採卵前周期にピルを処方されました。
採卵前周期のピルはロング法や卵巣機能の高い方には有効のようですが、アンタゴニスト法や卵巣機能の低い方には逆効果だとお見かけしまして、ドシローさんの知識やご経験で何かお考えがありましたらお伺いしたいと思い、メッセージさせて頂いた次第でございます。

お忙しいところ恐縮ですが、お返事頂ければ幸いです。


返事
質問ありがとうございます。
えっと、実はドシローは採卵前週期にピルを処方されたことはありません。(^_^;)
なので実体験からお答えすることはできないのですが、
結論から言うと、私はアンタゴニスト法の前週期のピルは一部の場合を除いて推奨しません。
今回の質問の場合は先生が「ピル飲まなくていいよ。」というのであれば
飲まない方がいいと思います。

前週期のピルは先生によって是非がわかれていて
使用するほうがいいという先生としない方がいいという
先生がいらっしゃいます。

メリットデメリットを説明しますね。
元々のメリットは
「baseline ovarian cyst(たぶん遺残卵胞)の形成を抑制すること、
妊娠周期にGnRHアゴニストを使用する心配がないこと、
胞状卵胞のサイズが均一化すること、
ある程度採卵日を調整することができること」
などがあるそうです。
これは↓の本(p140)からの引用です。


これにはデメリットは書いていません。
この本はちょっと古くて2012年発行です。
わかりにくいので、一般向けに書かれた本からもメリットを引用してみます。
次の文は下記の本からです。
「前週期から薬を飲む意味はいくつかありますが、一言でいうと、お料理の下ごしらえの様なものです。採卵する周期に成長する卵胞たちは、この時すでに大きさに差がつき始める
時期に差し掛かっており、普通にホルモンを浴びると大きさにばらつきが出て、
採卵のタイミングを測るのが難しくなります。そこで、薬でホルモンを抑えるのです。」
これは↓の本(p172)からの引用です。

これもデメリットは書いていません2016年発行の本です。

要するに大きなメリットは「遺残卵胞(たぶん)ができにくく育つ卵胞のサイズを同じくらいにできる。」
ということだと思います。
ではデメリットはというの
質問でも指摘されていますが、
「Long法では前周期にピルを用いた場合有効ですが、Antagnist法では逆効果」
松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ(https://ameblo.jp/matsubooon/entry-11525620087.html)というものがあります。
またドシローが一番の基盤にしている本が↓なのですが、

この本は不妊治療の教科書(と紹介している医師のブログがある)と言える本で、
この本でもアンタゴニスト法での採卵前週期ピルの使用は否定的です。
長いですが引用します。(2017年発行)
読み飛ばしてかまいません(^▽^;)
「複数の卵胞発育を促すためには、卵胞のコホートを同期させる必要がある。ART周期の前にOC(ピルのこと)を投与することにより、FSHに対する反応性が向上すると報告されたが、その後はこれを支持する報告はなされていない。
GnRH antagonist法(アンタゴニスト法のこと)の前処置にOCを用いた影響に関する
メタアナリシスではOC投与群ではFSH投与量の増加と投与期間の延長があるだけで、採卵数や妊娠率は改善しなかった。子宮内膜厚の菲薄化や着床率の低下なども報告されており、OCによる前処置は治療スケジュールの調整など非医学的な理由以外に積極的な適応がない。
一方、PCOSでは月経周期の調節が必要となる場合が多いが、OC服用20日目にGnRH agonistを皮下投与するロング・プロトコールにより、血清ホルモン値が正常化し、受精率、着床率、および妊娠率が向上し、OHSSが減少したと報告されている。」


実は、松林医師のブログの論文と「生殖補助医療の~」で論拠になっている論文は
一緒だと思われます。
ここで言われていることは
「アンタゴニスト法では前週期ピルはメリットはないよ。ただしPCOSの場合を除く。」
ということだと思います。
また長期間ピルを使うとAMHが低下するといわれています。
やめると3か月くらいで戻るそうです。
一時的にもAMHが下がり卵胞数が少なくなる可能性があるので
その意味でもピルは飲まなくていいなら飲まない方がいいと思います。

それで結論としては今回はアンタゴニスト法かプロゲステロンを排卵抑制に使うようですし、PCOSでもないようなのでピルは使用しない方がいいと思います。

なので質問者様がもう、答えを書いていらっしゃいますが、
「アンタゴニスト法や卵巣機能の低い方には逆効果」なので必要ないと思います。
ながながと書いて結局
「そのまま正解です。」
という答えですみません(^_^;)
ただ担当の先生がピルでそろえた卵胞でのみ採卵していてばらつきがある卵胞での採卵をあまりしたことがないと例えば20㎜卵胞1つ10㎟卵胞5つなどの場合いつ採卵するかの決定が鈍る可能性があります。
なので先生があまりやったことがないという事ならば帰って結果が悪くなる可能性も視野に入れて
ピルを飲むか飲まないか決めるといいと思います。
私はピルは飲んだことがありませんが、ロング法はやったことがあります。
すごく卵胞がそろいました。
それ以外の時は時によって2個くらい先に大きくなって後10個くらいが小さいことがあります。
なので場合によってはピルをまないと揃わなくて不安になる可能性はあります。
またアンタゴニスト法ではなく黄体フィードバック(黄体ホルモンによる排卵抑制方法)についてですがこれは薬の投与はショートに法に似ていますが、薬効的にはアンタゴニストに似ています。
なのでこちらもピルは飲まなくていいと思います。(たぶん)

ただ質問者様が書いておられる「採卵・受精数は多かったのですが、凍結数が少なく、胚盤胞にはなりませんでした。」
ということの改善にピルを飲む飲まないがそれほど大きく関与するかというとそれはまた別問題の様な気がします。
もちろん改善する可能性もありますが、あまりしない可能性もあります。

この胚盤胞にならない理由は、
人によって年齢だったり投与している薬が合わないとか、また培養液が合う合わない、
血中ホルモンの数値が問題がある、トリガーから採卵時間が短い、血流が悪い、栄養が行き届いていない。精子に問題がある。など様々な要因が考えられ、ピルだけの問題ではないかもしれません。
が決定してこれと言えるものもないので、一つ一つ調べていくしかないかもしれません…。

やっていなければ耐糖検査(HOMA-Rとか)をやるのもいいと思います。
血糖値が高い場合、メトホルミンを飲むだけでかなり改善が見込め培養が改善する可能性が高くなります。
あとビタミンDとかDHEAとか測れれば測って
足りないものはサプリとかで飲むのもいいですよ。

AMHが低いらしいですが、採卵数が多いそうなのでちょっと不思議です。
ピルをやめて再度測ると高く出るかもしれません。



あまりお役に立てなくてすみません。
何か参考になればよいのですが…。(^_^;)

どうも質問ありがとうございました。(^_^)