もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

イラン革命防衛隊コッズ部隊司令官の殺害に思う

2020年01月05日 | アメリカ

 イラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官が、イラクのバグダッド空港で米軍によって殺害された。

 この行動に対し、イラン最高指導者のハメネイ師は「倍するジハード」を宣言しアメリカは3000人の即応旅団を増派する等、中東情勢は一挙に緊迫したように感じられる。アメリカの主張は、ソレイマニ司令官がイラン国内の反政府デモの弾圧と近隣諸国の武装勢力への武器供与・戦闘指導に指導的役割を果たしているのみならず、「アメリカの外交官や将兵を今にも攻撃するという確度の高い情報があったため」としている。コッズ部隊は、イラン最高指導者の私兵である革命防衛隊にあっても最精鋭・最尖鋭部隊で、諜報・謀略・破壊活動を主任務としているとされる。これまでにも中東地域内での暗殺・テロ・対米攻撃の多くを直接・間接に行ったとされ、日本でも平成3(1991)年に「悪魔の詩」翻訳者の筑波大学の五十嵐一助教授が大学構内で何者かに殺害された殺人事件にも関与したと云われていることから、アメリカは相当に高い確度の情報を得て予防的な意味での殺害に踏み切ったと観ている。しかしながら、部隊指揮官を殺害しても、コッズ部隊の運用や運営は、既にシステムとして確立・稼働していることから、部隊の活動を瓦解させてアメリカに対するテロ活動を完全に断つことは困難ではなかろうかと推測する。事件の経緯はともかくとして、中東地域の情勢は余りにも理解できないものである。サダム・フセインがイラク指導者であった頃のイランはイ・イ戦争を戦ったようにイラクとは犬猿の仲であったが、時は流れてイランの対敵謀略部隊の指揮官が公式にイラク国内で活動している。かって中東諸国では曲がりなりにも国家という単位で行動してきたが、昨今はイスラム各宗派の連衡・確執を軸に紛争が起きるため、なんとも理解できない様相を呈している。いわば国境と国家は無いに等しく、戦国大名が覇権を争った戦国時代とも観られるが、価値観が並立し通信手段が発達した現在に、織田信長が登場することは期待できないと考えるので、この混迷は今後とも続くのだろう。

 このような情勢下で、日本は間もなく海上自衛隊の護衛艦と哨戒機による海上警備行動(情報収集活動)を発令するが、活動範囲はオマーン湾やアラビア海北部、アデン湾の公海としてホルムズ海峡は除外、不測の事態が生じた際も武器を使用して保護できる対象は日本籍の船舶に限る方針となっている。この方針が列国のROE(交戦規程)に当たるのだろうが、なんとも中途半端の感を否めない。若し、護衛艦の視界内で他国籍のタンカーが攻撃されていても護衛艦は発砲すらできず、当該タンカーが蹂躙されるのを座視せざるを得ないこととなり、世界世論の笑いもの以上に指弾の的になることは明白である。憲法9条が身の安全を保障していると主張していた中村医師がアフガンで殺されたのは先日のことである。憲法9条は世界基準ではないことをもっと理解して自衛隊の活動(国策)を考えて欲しいと願うものである。


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