『満月のスープ』20191212 絵の完成とおひさまカフェ① | 風のたまごを見つけた   

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この惑星はなんて不思議!

 

 

 

早くも!

今年最後の満月ですね。

お元気で、お過ごしですか。

 

 

昨年、始まった、『満月のスープ』。

今年最終章です。

 

なにが起こるわけでもない

少女の心の旅路を、いつも

ご一緒していただいて

ありがとうございます♡

 

ブログというメディアは短く、。。

はい、、

わかっていますが

いよいよ、最終回が近づいて

またまた、文字数たっぷりになってしまい

規格をはずれそう。。

 

そこで

今回は、本のように、

章立てで、見出しをつける形にしてみました。

そして

章ごとに分けて、アップしてみました。

 

ワンシティングといいますが、、

ひと座りの時間で読みとおしていただく

(作者としては!)短い文章なので

一回でアップしたいのが本音なのですが、

 

場面場面を、読んでいただくのも

ブログらしさかも、と思い

①②③に切り分けちゃいました。

 

ご自身のお時間のなかで

ちょっと、お散歩でもするように

読んでいただければ

幸いです♪

 

 

 

そして!

 

いつもの、満月のメッセージ、

今回は

ちょっと嬉しいシンクロがあり、

次の新月に、朗読動画として、

お送りする予定です。

 

とっても素敵な音楽と共に!

 

③の最後でお知らせします♪。

 

では、

レイラとベンの人生の節目、

12月の『満月のスープ』をお楽しみください。

 

 

 

 

満月のスープ 第二章  10

 

 

絵の完成とおひさまカフェ   café du soleil

 

 

 

 

雪の結晶完成の日 ブルーウーマン雪の結晶




窓の外、空をきって飛ぶ鳥が光った。



絵の完成。

 

レイラは名前のサインを入れると

縛ったポニーテールを

ばさっと、ほどいた。

 

 

 

誰も信じないだろう。

 

いま、誰かが、この絵をぶちコワして

いちからやり直すことになっても

全然構わない、とレイラが思ってるなんて。

 

 

カラダの内側ではまだ何かが

描かれ続けている。

完成は、終わりでなかった。

始まりなんだ、とレイラは
知った。

 

 

 

 



 

 

うんと悩んだ末、
レイラが最後に選んだ題材は
やっぱり、おばあちゃんだった。

 

肖像ではない。

細かな色のドットで描かれた、海の絵。
 

その色のドットが、

海とひとつになった、おばあちゃんを、

真ん中に、浮かび上がらせる。

 

 

森の中に現れる精霊が
グリーンマンなら、
海の中の、おばあちゃんは誰?

 

すぐに言葉が浮かんだ。

 

 

「ブルーウーマン」

声に出してみた。
ちょっと寂しい響き。

そして、凜とした強さがある。


レイラがずっと頼って
甘えてきた、おばあちゃんという存在を

ずっと見つめていたいのに、

それは幻想なんだと、気づいてしまった

さみしさのブルー。

 

 

凜とした力は、
もう、「おばあちゃん」の役割を終えて、
ずっと大きな広がりになった
海みたいな、おばあちゃんの力。

そこにあるものの、全部を生かそうとするブルー。

 

今、ここから、レイラが出会う、
こわいけど、胸が高なる、なにか。

もしかすると、
 

そのブルーウーマンは

レイラ自身なのかもしれない。

 

 

突然の直感がちらっと光って
消えた。






ガラス窓越し、冬晴れの陽射しが

ほのかな光を床に落として、
絵の前に座りこんだレイラの頬を

照らしていた。

 

おろした髪を手ぐしですきながら

レイラは、冷静な目で絵を見つめ直した。

 

「やっぱりレイラが描きたいのは

コンクールに出すような芸術じゃない」

 


絵の中のおばあちゃんの胸の中心には、、
レイラが貼り付けた、形見のターコイズが

輝いている。

 

なぜかそうするために、石を見つけた気がして

ちっとも迷わなかった。


これはレイラの考えた、本気の魔法。
ここに来るひとたちへの。



「石に触れて下さい。あなたが今
一番会いたい人を思い描いて。
レイラも一緒に祈ります」


 

 

レイラは真っ白い紙に
手書きでメッセージ文を添えた。


見る人が、本当に会いたい誰かに
出会えると信じられる絵にしたい。


ここに通いながら
レイラの心に生まれた一番強い思いだった。





レイラは
使った絵筆をひとつにまとめて、

タオルに包んで、丁寧に抱えると、
玄関から外に出て、カフェの裏手に回った。




足の裏には、固くなった地面の感触。

 

丘の斜面はすっかり冬枯れて、
細い渓流だけが、生き生きと光を照り返していた。

レイラは、小川にしゃがみこみ、
タオルを開いて地面に広げ、

等間隔に筆を置いた。


制作のあと、レイラはわざと外に出て、
いつも、この水流で、筆を洗った。
 

不思議に、描いている時間と同じくらい
絵筆を洗った時間が、愛おしい。

 

描いてる間は無心になれたけど

 

心のおおいがとれるたびに
暗い感情や不安があふれ出して

混乱した。

大嫌いな、嫉妬深い自分。

離婚した両親に、泣いて

謝っている小さな自分。。

 

 

けれど、

この小さな川の水で
絵筆の色を流してゆくと
なぜか少しずつ、心も透明になって、
また星が整列するみたいに、自分の

気持ちが整った。

 

 

その循環が、

レイラの心の川幅を、少しずつ広げてくれた。

 

 

なかなか絵にとりかかれなかったのは
テーマ選びに時間がかかったからじゃない。
とっくに心が決まっているのに
それを認めるのが怖かったんだ。

 

臆病なレイラが

一番怖かったこと、、

 

 

 

 

扉の向こうに立っていたのは
誰でもない、

 

自分だった。

 

 

 



冷たい水流で一本一本を、洗い終えると
レイラは、立ち上がり、

空を見上げて

きっと、もう言葉なんて使わない

おばあちゃんに、話しかけた。

 

はじめて、

自分との約束を果たした気がして。



「おじさんに予告したとおり、
クリスマス前に、完成したよ。
おばあちゃん」


あれほど時間がかかったのに、
出来上がってみると、一瞬の夢のようだ。

いまは、もっともっと、描いていたい。
 

 

 

絵の完成とおひさまカフェ ② に続きます

 

 

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