にほんブログ村 テレビブログ テレビドラマへ にほんブログ村 テレビブログ 大河ドラマ・時代劇へ  

 

 昨日の記事で私は、NHKの例の情報系バラエティ番組『チコちゃんに叱られる!』を「現在のNHKの象徴」と書いた。さらに言うと、過去記事ではこんな文面もしたためた

 

>実は私は、ここ最近のNHKの視聴率の稼ぎ手である『まんぷく』および

>『チコちゃんに叱られる!』、そして視聴率で苦戦する
>『いだてん』には共通点があると、最近思い始めているのであるが、
>これについてはまた次の機会に触れておきたい。

(2019年1月28日アップ  "『いだてん』第4話視聴率11.6%の苦悩…NHKを取り巻く厳しい環境"より。)

 

 

  この『チコちゃんに叱られる!』は2月9日・土曜朝の再放送にて、遂に「笑点」「世界の果てまでイッテQ!」を抑えて週間視聴率(娯楽部門)のトップに躍り出たのだという。今こそ、あまり間を置き過ぎると私自身が続きを書き忘れかねないので、時間のあるうちに過去記事のその先を書き記しておこう。

 

  ・ 番組形式がかの『トリビアの泉』を踏襲している。ちなみに『チコちゃん』プロデューサーの小松純也は『トリビア』の監修を担当していた。

 

  ・ オープニングテーマ『カリキュラマシーンのテーマ』は1974年~1978年まで放送された日本テレビの教育番組『カリキュラマシーン』からの借用。また、エンディングテーマは『がんばれ!!ロボコン』2代目のオープニングテーマである。

 


 

 

 

  ・ チコちゃんの着ぐるみがいかにも昭和風。もっと言うと『ちびまる子』風。

 

 …こんなところか。要はこの『チコちゃん』、過去に他民放局が蓄えてきた映像財産のスクラッチ(寄せ集めの意で使っている。ゼロベースからの製作という意で使ってはいない)なのである。恐らくは知らず知らずのうちに懐かしさを覚える『チコちゃん』のこの空気が、TV前の40代以上の世代の視聴習慣性を引き起こしているに違いない。

 

 つまりは換言するとこうなる。『チコちゃん』を企画し制作したNHKスタッフ陣は、面白い番組を「創造」するというよりも、既視感を覚えるビジュアルや過去に他局民放の番組で人気を博した要素を借用することで、高視聴率番組を世に出した、と。

 

 そこでもう一方のNHKの視聴率の雄である連続テレビ小説(朝ドラ)の『まんぷく』。まるで夢遊病者の様な安藤サクラがOPに登場するだけで避けたい欲求が収まらない『まんぷく』にも、民放要素は満載だ。

 

 

 ・ ヒロインが道化に近い。モデルの安藤百福夫人をここまで戯画化して、よくぞ家族の承認が得られたな、と思う位。

 

 ・ CMや広告に依存しない日本放送協会らしからぬ、特定の企業の商品をストーリーの要たるテーマにしていること。過去にはニッカウヰスキー創業者を主人公とした朝ドラ・『マッサン』などもあったが、描き方が表層的な分、『まんぷく』の方が遙かにインスタントラーメン宣伝番組の印象が強まっている。2月13日の放送で立花萬平(長谷川博己)がチキンラーメンをモデルにした「まんぷくラーメン」を完成させて以降、チキンラーメンの売り上げが激増したというのがその証左。

 

  ついでに言うともうこの『まんぷく』になると、近年の過去の朝ドラと比較してストーリー性の高い脚本やヒロインの説得力ある生き様は皆無で、限りなくバラエティ、コントに近づいている。

 

  私が最近完全にハマった『カーネーション』と比較すると雲泥の差である。しかしながらそこはNHKの朝ドラ…時計代わりの視聴という昔ながらの役割もある以上、クオリティ的にはこんなところで丁度良いのかも知れない。なにせ平均視聴率22.7%を稼ぐ「国民的」ドラマである…。

 

  2011年後期~2012年前期の『カーネーション』はどこから観ても非の打ちどころのない最高のドラマだと私は思うが、たったひとつだけ残念な点がある。それは、この作品が、「連続テレビ小説」「朝ドラ」の枠内でしか語られないことが多いことだ。賛同してくださる方もいることと思うが、『カーネーション』は最早朝ドラの枠を超越した存在であり、到底歴代の朝ドラと同列で正鵠を得た意義を語り尽せない作品である。いずれはこのサイトでも、思うところをふんだんにしたためておこうとは思っているが…。

 

 

ドラマ『カーネーション』のテーマと完全に合致した最強のオープニング・テーマ。


  さて、最後に今現在は完全に非難の渦中に投じ込まれた感のある『いだてん』、である。2019年NHK3本柱の中では、唯一マトモな支持を得られていない、過去例が無い程場違い扱いされた大河ドラマである。

 

 

 


  結局はこれも、NHKが自らの経験や財産を活かすことなく、民放の手法をいただいて製作した「大河ドラマの放送枠を借りたクドカン劇場」である。

 

  ・ そもそもクドカンはTBSをメインとして、2002年~2005年辺りから台頭してきた脚本家である。『あまちゃん』以前の代表作である『池袋ウエストゲートパーク』、『木更津キャッツアイ』、『タイガー&ドラゴン』を思い起こしていただければ異論は無いかと思う。

 

  ・ 主人公と同等にドラマ前面にフィーチュアされているのが、全盛期を過ぎたとは言え民放の権化とも言うべきビートたけし。

 

  ・ 同じく従来から相性が悪いと言われている綾瀬はるかを、今回も起用している。綾瀬はるかもまた、CM等で民放を象徴させる存在と言うべきだろう。

 

  ・ 加納治五郎に扮する役所広司、足袋のハリマヤのピエール瀧といったTBS日曜劇場の『陸王』を彷彿とさせるキャストを起用し、また『陸王』を想起させる設定も見られる。

 

  ・ CMを行わないハズのNHKが、『いだてん』の番宣に関しては殆ど異常としか言い様のない執念で、あらゆる番組に捩じ込んで来た。今後も大金を投じて特別番組を連続して製作せざるを得ない事態は、十分に考えられる。

 

 …こんなところだ。そして『いだてん』に関しては完全にNHKの目論見は外れ、遂には存続の危機まで囁かれている。

 

 以上を俯瞰してみると、NHKの「民放寄り」戦略は手堅く当てることもあれば、視聴者に意図を見透かされて反感を買うこともあるといった、危うい地盤の上に成り立っていることは明白だろう。

 

 なぜ彼らは、どこの民放も培っていないNHK独自の資産を以って、番組製作を行わないのであろうか?なぜ彼らは、日本放送協会は視聴率を気にしないなどと言いつつも、ここまで民放と大差が無いような番組作りに励むのであろうか。

 

 視聴率以外の判断要素をもってしても、誰もが望んでいるとは言えない大河ドラマを1話あたり5,000万円以上かけて製作し、なおかつ打ち切りの憂き目を心配する必要もない放送局は、日本でNHKだけである。過去を遡ってみても、『坂の上の雲』の様に一切のスポンサー無しで250億円もの製作費を惜し気も無く投入できる放送局は、日本でNHKだけである。

 

 

 しかしながらもう、時代はそんなNHKの存在を許さない所まで来ていることに、関係者の皆様はお気づきなのであろうか?

 

 それほどまでに民放寄りの番組製作をしたくて仕方がないのであれば、競争する土俵もいっそのこと、民放と同じにしてみては如何であろうか。

 

 中途半端な姿勢で「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」方式を以って湯水の如くお金を浪費することで、視聴者の支持を得ようなんて考えは間違ってはいないであろうか?ならばいっそのこと、NHKも遅まきながら民営化して、よりシビアな姿勢で番組制作に心血注いだ方が、よほど視聴者からの応援を得られると思うのであるが…NHKはどの様にこれについてお考えなのであろうか?

 

 

にほんブログ村 テレビブログ テレビドラマへ にほんブログ村 テレビブログ 大河ドラマ・時代劇へ  

BS時代劇 「小吉の女房」 NHKBSプレミアムにて放送中

    毎週金曜 20:00~
    【BS4K】 毎週水曜 18:45~
    【再放送】毎週日曜 18:45~

作 : 山本むつみ
音楽 : 荻野清子
出演 : 沢口靖子 古田新太 鈴木福 升毅 高橋和也 高橋ひとみ 石倉三郎 江波杏子 里見浩太朗 他

語り : 春風亭昇太