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 やはり大河ドラマには、「不穏な空気」が不可欠である。

 

 古くは伊達騒動を原田甲斐の新しい解釈で描いた山本周五郎の『樅ノ木は残った』、先に記事で綴った吉川英治(池端俊策)の『太平記』、2022年に三谷幸喜がリメイクする『草燃える』(公式には『鎌倉殿の13人』はオリジナル脚本だが、『真田丸』が『真田太平記』のリメイクという意味ではやはりリメイクだ)、『独眼竜政宗』だってそうだ。大河の名作には例外なく、この得体の知れない「不穏さ」が濃厚に渦巻いている。

 

 

 

 

 

 ただ事ではない位の殺気と不穏さを孕むからこその大河ドラマ、なのである。明治維新~近現代が大河のテーマになろうともなかなか受け入れられない理由が、実はここにあるのだ。戦国時代が好まれるというのは結果論でしかない。
 
 現代ドラマではまず描かれる機会のない「不穏さ」に満ち満ちている限り、大河ドラマは無くなりそうで無くならないのだ。こればかりは間違いない。
 
 そして『麒麟がくる』では、この「不穏さ」が明らかに意識的に強く描かれている。『真田丸』『おんな城主 直虎』等との最大の違いはここではあるまいか。

 大河ドラマに必要な「不穏さ」…流石に池端俊策は、大河に何が必要なのかよくわかっている。今回の「ひとりぼっちの若君」には、そんな不穏さが満載だ。
 
 
 何せ織田信長、8歳の竹千代(徳川家康)、明智十兵衛がこの段階で一同に会するのだ。それも取って付けた様な偶然ではなく、信長が反対する今川との人質交換について、信長が竹千代に「どうしたいか」…いやこれはもう所見を述べさせたと言っていいと思うが…今後に繋がる非常に重要なターニングポイントで、である。
 
 染谷信長が十兵衛から、何故海釣りに出るのか問いかけられ、信長は母・土田御前(檀れい)からの愛情が薄かったことへの想いを赤裸々に吐露する。これは従来見られそうで見られなかった、信長のパーソナリティを解き明かすヒントとして埋め込まれた、一種の「時限爆弾」だ。
 
 当然この時に信長が話した、土田御前の愛情は自分に似て色白な弟の信勝(木村了)に向けられていること、そして家督を継がせたいのは信勝の方であることも、言うまでもなく今後の動向を指し示す「不穏な告白」、である。ここに琴線に触れられた感を覚えない大河の視聴者はそんなにいないと思う。
 
 この先、このトラウマがどの様にの信長の人格に影響を及ぼすのかを追う楽しみが出来た。この辺りは非常に気が利いている。
 
 
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 もうひとつ…尾野真千子伊呂波大夫は流石であった。相変わらず全身に持ちうるモノ全てを使って、役を演じ切っている。いやその役を「生きて」いる。
 
 
 これが門脇麦川口春奈との絡みだと、女子会以上のやり取りが出せない。川口春奈は降ってわいた大変な役割を担い、これによく応えているのは同意だ。ただまだ、場面の空気を支配するまでの力量には今のところ至っていない(もちろん、今後もそうだというつもりはない)。
 
 まだまだ川口春奈はこれからなのである。その分、内包された未知の伸びしろは予想外の方向に発展する可能性がある。だがそれはあくまでもこの先のお話。
 
 尾野真千子の女優としての力量は、ある意味既に完成されたモノなのだ。
 
 尾野真千子と絡むと、大抵の演者は彼女にコントロールされる。今回門脇麦はもちろんのこと、堺正章でさえ完全にオノマチの支配下に置かれていた。
 
 彼女と同等の存在感を出して呑まれない役者など、男優といえども数える程しかいない。
 
 今回はそのことを再認識させられた。
 
 
 …最後に、次回・3月29日の第11回「将軍の涙」について。美濃・尾張・駿河そして三河の動向、これらと京都の情勢が交差し一つの流れになる。池端が意図する「室町時代の終焉」の描写はますます拍車がかかるであろうし、例の沢尻エリカ降板の影響から完全に脱することが出来るのも、この第11回からだ。
 
 視聴率的にもV字の回復を果たして、真価を発揮するのはここからであろうから…この先もテコ入れの横車や雑音に惑わされずに制作意欲を保ってもらいたいモノだ。
 

 

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<あらすじ>

 

 

 遠くから聞こえる旅芸人の一座の笛や太鼓の音に引かれるように、駒(門脇麦)はふらふらとその方向に歩いていった。

 

 神社の境内にいた一座。懐かしくなった駒は旅芸人一座にいた頃の技を披露し、座員たちや駒を探しに来た東庵(堺正章)を驚かせる。

 

 一座の主である伊呂波大夫(尾野真千子)もにこやかに駒を見つめる。

 
 伊呂波大夫先代の女座長の娘で、駒の姉代わりなのであった。駒と伊呂波は5年ぶりの再会であった。
 
 天文18年の末、三河で戦が起きた。尾張との国境にある安城城に、今川軍が攻めてきたのである。城は落ち、守っていた織田信広(演:?)が捕らえられた。
 
 信広は織田信秀(高橋克典)の側室の子で、信長の腹違いの兄にあたる。
 
 今川義元(片岡愛之助)は信広と松平竹千代(岩田琉聖)の人質交換を要求してきた。元々竹千代は今川に人質として送られる途中、田原城主・戸田康光の裏切りで織田の手に渡ったという経緯がある。

 人質交換の件は、信秀が遣わした使者によって斎藤利政(本木雅弘)にも知らされた。竹千代が今川に渡れば、義元は三河全土を支配したも同然となり、隣国の尾張は窮地に立たされる。尾張と盟約を結んだ美濃は、泥を被ることになるかも知れない。
 
 利政が例によって、明智光安(西村まさ彦)十兵衛(長谷川博己)を呼びつける。
 
 利政はほぼ間髪を入れずに、十兵衛に尾張行きを命ずる。言うまでもなく帰蝶に探りを入れてくるためである。
 
 尾張・熱田の市場。十兵衛は菊丸(岡村隆史)を探し出し、味噌を用意させた。味噌を那古野城の帰蝶(川口春奈)に届けるという名目のためである。
 
 帰蝶に拝謁する十兵衛。
 
 そこに信長(染谷将太)が戻ってくる。湯帷子を袖脱ぎにし、半袴姿で頭は茶筅髷…猪を鉄砲で仕留めた帰りとあって、嬉々とした様子である。
 
 帰蝶が、先に話した鉄砲に詳しい従兄の明智十兵衛だと紹介する。早速信長は、携えた鉄砲を十兵衛の前に差し出し、どこで作られたか当ててみよと命ずる。これをつぶさに改め、職人まで言い当てる十兵衛。信長はさらに上機嫌になり、間にあがれと言う。
 
 十兵衛、信長、帰蝶の三人のいる間に現れる竹千代。既に将棋の駒と盤まで携えている。
 
 一度は、もう童と将棋は指さないと突き放そうとする信長。これを竹千代は、堂々と十兵衛と帰蝶のいる前で、「父(松平広忠:浅利陽介)を討ち果たしたことなら心配無用」と返してのける。
 
 帰蝶そして十兵衛に席を外すよう促す信長。
 
 そして竹千代の口からは、敵・今川を知るために人質になることも厭わないという意図が発せられる。
 
 一緒に城に参上した菊丸を探す十兵衛。だが既に、菊丸は帰ったのだという。
 
 …だが菊丸は、天井から信長と竹千代の将棋と会話を、ジッと伺っていた…。
 

 

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『池袋ウエストゲートパーク』 2000年4月14日~6月23日 金曜日21:00~21:5(初回放送) TBS
原作:石田衣良 脚本:宮藤官九郎 監督:堤幸彦 プロデューサー:磯山晶
オープニング:Sads「忘却の空」

 
出演:
長瀬智也、窪塚洋介、渡辺謙、山下智久、佐藤隆太、阿部サダヲ、加藤あい、妻夫木聡、高橋一生、坂口憲二、古田新太、西島千博、須藤公一、矢沢心、小雪、きたろう、森下愛子、小栗旬 他