『麒麟がくる』第11回「将軍の涙」視聴レビュー(2020年3月29日：NHKBSプレミアム)

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 ・ 今まで過剰に気にしないつもりであったが、沢尻エリカが帰蝶を演じた映像の差し替えは一度収めた撮影の成果に、こちらが思っていた以上の影響を与えたのではないかと思われた。

 

  様々な登場人物、そして市川海老蔵の語りに至るまでの統一感やバランスが、これまでの10話分と比して感触が異なっているのがハッキリ観て取れたのがその理由だ。

 

　

・　だとしたら川口春奈を迎え入れた代償は、この10話分に限定して言うのならば、思っていた以上に小さくはなかったということか…沢尻が降板しなければ、というよりも、最初から川口春奈で組み立てられていれば、その成果は随分違ったモノになった気がして仕方がない…惜しいことだが、最早取り返すことの出来ない過去である。

 

 

・　過去記事でも触れたが、従来暗愚な守護として描かれていた尾美としのりの土岐頼芸は、今回も一見鷹に現(うつつ)を抜かすばかりとみせかけ、その内面にはいつか必ず斎藤利政(道三：本木雅弘)に「ほぞ」を噛ませんと虎視眈々としている姿がまたも描かれた。その腹の内はやはり子・斎藤高政(伊藤英明)に暗黙のうちに向けられ、斎藤家を内部から瓦解させんとする。その秘めたる怨念は、いずれ「長良川の戦い」における、戦国の代表的な「親殺し」となって結実する訳だが…そういえば先日のニュースではモックンこと本木雅弘の道三入道に扮したメイクが遂に公開されていた。明智家の命運をも左右するこの「長良川の戦い」、遠くない将来に観ることが叶うハズだ。

 

 

・　再度川口春奈の話に戻すと…今回明智十兵衛(長谷川博己)が平手政秀・帰蝶そして信長(染谷将太)に拝謁するシーンで、平手が出ていき、前回に続きまた十兵衛・帰蝶・信長の三人になったシーン。

 

　三人で織田と今川の仲立ちを誰に頼むか話し合っている場面で、信長は帰蝶の膝枕でくつろぎ帰蝶の頬を撫でていた。あそこで見せた帰蝶様の何とも言えない笑み…あれを観て私は、確かに川口春奈は唯一無二の帰蝶になったと確信した。

　あのシーンが沢尻エリカだと、あまりにも脂っこ過ぎるのだ。

 

　きっとこれは、これまでの10話で積み重ねてきた川口春奈の帰蝶様の、努力によるイメージづけの賜物なのだ。いまこうして川口が他に代え難い帰蝶になるまでの苦労・努力は、充分に評価して然るべきだと私は思っている。

 

 

・　十兵衛が将軍・足利義輝(向井理)に会うため近江の坂本を訪れ、満員の宿でひょっこり細川藤孝(眞島秀和)に再会した場面には少しだけ苦笑したが、まあ全体の出来を考えると許して良い「都合の良さ」だろう。

 

　今回近江の館での将軍向井と、セリフの無かった谷原章介の三淵藤英までもが心地良い存在感を示しており、この後の十兵衛が美濃に向かう引きから、次回の第12回｢十兵衛の嫁｣予告のいきなりの「不穏さ」…といった対照を示した構成も期待を裏切らない。

 

 

・　この先は駿河も尾張も美濃もそして京も、いつどこから「不穏」がはみ出してきてもおかしくない展開が続く故に、次回が十兵衛が妻木の煕子と婚礼する回であるとはいえ、この胃が痛くならんばかりの不穏さが約束されている安心感に、またも期待を募らせずにはいられない訳である。

 

・　これは覚書を兼ねてだが…今回も脚本協力で岩本真耶サンの名がOPクレジットで見られた。また是非、メインライターも務めてもらいたい。また、前回の記事で書き損ねた織田信広を演じた役者は佐野泰臣という中堅の俳優である。

 

・　そうだ…書き忘れていたが、今回は駒こと門脇麦の出番は、無い。

 

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