Mさんに会わない宣言をしたものの、結局会ってしまっている。
ここが私の甘いところ。
Mさんも初めは「会わないで頑張る。ちゃんと話を前に進めるように7月に行動する」と言っていた。
でも、毎日の電話はほぼ変わらずだったし、朝のモーニングコールも変わらずにしていた。
これまでは私の方から、「次いつ会える?」と言う事を訊く事が多かったけど、会わない宣言をしてから言い出す事はしなかった。
するとMさんの方が、「こんなに会わないのは耐えられない。早番の夜は会いたい」と言い出した。
私も全く会わないのは辛かったし、進行状況も確認したかったから、会ったりはしていた。
でもやっぱり、目に見えて何か行動に起こしてると言うものはまだ見られない。
そんな時、この前の病院の定期検診で、病気が少し進行している事を主治医の先生から聞かされた。
外出時は酸素が必要なレベルだと。
このままでは心臓に負担がかかり過ぎると言われた。
酸素導入となると、取り扱いや使い方の指導のために1週間くらいの入院が必要で、家族の人も使い方の勉強をしないといけないと言われ、今は母と同居してるから、母と、いずれは婚約者の方にも説明しなければならないと。
いつ導入するかは、婚約者の方と一緒に来た時に話しましょうか、と言われた。
彼は前から、私の病気の事についてもっと詳しく知りたい、どんな事がダメでどう言う事をしていったら良いのかを知りたいと言うことで、主治医の先生に話を聞きたがっていた。
一度一緒に行く予定だったけど、彼の指の腱鞘炎が悪化したためそっちを優先してもらってから、話は頓挫していた。
これに関しては後に優月紫石さんに相談した時、彼が、私がいつも元気そうだから切羽詰まってる状態じゃないと思って楽観視していたと言う。
まぁ、主治医の先生も、「見た目が元気だから大丈夫だと思ってしまうけど、数値を見ると酸素必要なんですよね」と言ってたくらいなので、普通の人からしたら元気そのものに見えてしまって当然なのかもしれない。
そんな状況になり、正直、困ったなと言う感じだった。
これを彼にどう伝えようか、伝えたら、結婚を考え直すんじゃないかとか、病気を理由に急がせるのも引き目を感じて言い出しにくい。
そこで、優月紫石さんに相談すると、紫石さんからMさんに伝えてくれる事になった。
彼は私の病気の進行具合を聞くと、「えっ!」と驚いていたらしい。
でも、私にはお母様の認知症の問題を解決しないと先に進めないと言ってたけど、紫石さんには、実は仕事の方が大変だと言う話だった。
多分そこは、一時期毎日のように弱音を吐き、私まで精神的に落ち込む日々が続いたから、私に弱音は吐かないと約束させてしまったからだと思う。
だから私に言わないで溜め込んでしまっていたのかも。
いつまでも食事ご飯食事ご飯のデートで、手を繋ぐことですらスマートに出来ない中坊のような関係で、私はそれを早くぶち破りたくて、二人きりで話せる環境が欲しいとずっと伝えて来た。
でもその話になると、いつも黙りこんでしまう。
紫石さんもその事を彼に伝えた時も、長い沈黙が続いた後、「はい・・・」と言ったそうだ。
翌日、彼は休みの日だった。でも休みの日は会わない事にしてるし、その日はやる事があると言ってたので、私は姉と母とランチに出掛けた。
病気の事を話すと母は、「そんなんじゃ断られるんじゃない?」と言う。
「そんな病気が進行してしまって、面倒だなと思って逃げる人も多いじゃない」と。
確かに、そう言う人は多いかもしれない。
口では病気の事を理解してると言ってても、実際目の当たりにすると、「やっぱり無理!」と思ってしまったって不思議ではない。
姉が、「そう言う人じゃないんだよね?」と訊いて来て、「そう言う人じゃないよ」と返したけど、心の中はザワザワしていた。
母は、「私に会いにも来ないし、会う気あるの?」と言って来た。
これには少しびっくりした。逆に、会う気あるんだ?と思った。
彼はもちろん、私の母に会いたいとは言ってたけど、まぁ、ビビってる。
「僕と会ってくれるのか怖い」とか言っていた。
彼との話題が出たのをいい事に、籍は10月までに入れるけど、すぐには出て行かないと言うことは母に伝えた。
すぐには出て行かないって、いつ出て行くの!?とモンスター化されたらどうしよう・・・と思ったけど、そこはすんなり受け入れてくれた。
酸素導入の話も、母か彼か、どっちかが説明聞きに行くのでもいいと言ってくれたし、まぁ、母なりに受け入れてくれてるようだから、そこは少し安心した。
そんな事を伝えたかったし、紫石さんと夜に話したはずなのに、Mさんから何の連絡も来ない。
一度着信はあったけど、その後連絡しても出ないし、メールも返って来ないと言う状況が続いた。
母に怖い事を言われたし、何か思い悩んでいるのかとか悪い方に考えてしまっていた。
その日は結局連絡は取れず、いつものようにモーニングコールをかけると、普通に出てくれた。
そして、「紫石さんから電話があったよ。病気の事も聞いたし、急いで進めた方がいいと言われた」と。
朝だから詳しく話す時間もないから、夜に話そうと言う事で電話を切った。
夜の電話で、急いだ方がいいと言われた事に対して、どう思ってるの?と訊くと、
「早く進めないといけないなと思った」と言う。
母と姉との会話も伝え、母に、病気の進行を知って断って来るんじゃないかと言われた事を言うと、
「そんなの、初めから分かってる事だし、いつまでも元気のままで居る訳ないと思ってるし、そんな事思うんだったら初めから選ばないよ」と、やっぱり彼らしい答えを返してくれた。
そう。この人は初めからこのスタンスのままで居てくれている。
だから私は彼を好きになったし、彼だったら私の事を見捨てないで居てくれるだろうと思っている。
「次の病院には絶対に一緒に行くよ」と言ってくれた。
結婚の話が先に進まないと言うのもモヤモヤはするけど、やっぱり、こうした時に私の病気とどう向き合ってくれるのか、その本質を見られた気がした。
紫石さんには、二人きりで話せる環境を一日でも早く、と言うアドバイスを教えてもらったけど、頑固な彼には難しかった。
何をそんなに頑ななのか、ただ話をしたいと言ってるだけなのに、「今回はそう言う気分じゃないんだよね」って、一体いつだったら「そう言う気分」なんだ?と。
そもそも、「そう言う気分」って何??
って、もの凄く謎。
女心が分かってないと言うか、女性と男性の考え方の違いなのか、紫石さんも、今回は無理っぽいねとのこと。
でも、毎日のように「疲れた、疲労が抜けない、しんどい」と言い続ける彼の身体の方が心配だ。
人って元気な時じゃないと、前向きな行動や前向きな事に取りかかりにくいし。
今回も紫石さんに色々とお世話になり、不器用な私達二人と真摯に向き合ってくれて、本当に助かった。
病気が進行してしまって、私が前みたいな考えでいたらきっと、「彼に申し訳ない、彼に迷惑をかけられない」と言って、自ら身を引いてしまっていたかもしれない。
そんな考えに至らずに、こんな病気持ちでも私に出来ることもあるだろうし、彼の支えにもなってあげたいと思えるようになった。
そして私も幸せになっても良いんだと言う気持ちを保てている。
私は素晴らしい恋愛カウンセラーの方と出逢えたけど、そうした人と出逢えずに同じ恋愛の繰り返しをしている人も多いと思う。
これも一つの出会いなんだと思う。