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毎年このシーズンがやって来ると
とてもいやな気分になる。
花粉症も今ではベテランの域を迎えたが
緩和の為の作戦もいっこうに効き目がない。
2021年に投稿したちょっと笑える
一瞬の出来事をも一度。


務を終えマイカーを見ると
粉塵が屋根にうっすら積もっていた。
運転席に座るとその酷さは如実で
粒子が重なりあう様子は
顕微鏡のウイルスを見ているようだった。
思わずウォッシャーノズルを作動する。
ベージュの弧が描け始めると
気の済むまでそれを繰り返した。
昼間、麓の山肌が
霞みを帯びていたのは
昨日の風雨で解き放たれた
杉花粉のせいだと後から推測できた。


宅駐車場に着いて
エンジンを切ると
まもなく、
絞り出す様なクシャミが出た。
おまけが出た。
また、出た。
またまた出た。
またまたまた出た。
そのせいでフロントガラスの内側が
私の唾の飛沫だらけになった。
グスグスと鼻をすすりながら家に入ると
妻が夕食の支度をしていた。
"おかえりー"
彼女はマスクをして花粉を防御していたが
玄関を出入りした私のせいで
途端に、
ックション!
ハッション!
ハックョン!

ハックション !

ゥんーーーーー。

小さく絞り出すよなクシャミが
彼女のお尻から出た。
後ろ姿は小刻みに震え
明らかに笑っているのがわかった。
暫く、
私達の笑い声が続いた。