2019年11月04日
『半井桃水との別れ』【樋口一葉】
噂、桃水との別れ
また噂が立った。
半井桃水とはもう縁を切れと伊藤夏子から言われた夏子。師、中島歌子に尋ねると桃水が周りの者に夏子を妻だと言っていると。つい最近、尾崎紅葉に紹介すると言ってくれた桃水。夏子は困ったが、噂を信じその話しを断る事にした。しかし桃水に直接会い真相を聞いてみると、桃水が雑談の中で話したことに尾ひれがついて噂として流れてしまったことを知る。桃水は人の噂は手に負えんと憤りを見せたが、噂とはいえ夏子のためにはならないと、しばらく会わない事を提案し、夏子もそれを了承した。夏子の試練の日々の始まりである。
その後、試練を振り切るように立て続けに作品を発表、連載など、夏子は筆を取り続けていく。だが、いくら作品を作り続けてもお金にはならず、どん底の暮らし、借金の生活は変わらなかった。
吉原の商人生活
明治二十六年七月、夏子たちは吉原へ移り荒物屋を開く。それは文学を捨てる覚悟を意味していた。せっけん、たわし、マッチ、磨き粉などで始めた荒物屋、子どもの喜びそうな駄菓子を仕入れればよく売れ、千足神社の大祭の時には景気付けにマッチをこれでもかと並べて盛り上げた。しかしその日を食べ繋ぐのにやっとのもうけには変わりない生活。そんな時、懐かしい人物、「文学界」の編集者 平田禿木(ひらたとくぼく)が夏子の前に現れた、夏子に文学界の原稿を書いてもらおうと尋ねて来たのだ。夏子は急なことに戸惑った、が、書きたいという直感が夏子を再び筆に向かわせた。そして二ヶ月後、久しぶりに夏子の作品「琴の音」が発表される。
〜つづく
参考引用資料
『樋口一葉ものがたり』
(日野多香子作・山本典子絵)
教育出版センター
画像
photographer『sasint』
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