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【現代思想とジャーナリスト精神】

【『改正特措法緊急事態宣言の危険性』宇都宮健児】と2020都知事選

櫻井智志

 Ⅰ:【序】
この論攷は以前執筆したものである。宇都宮健児氏が東京都知事選に出馬を公式に記者会見したことを契機に、6月18日告示前に再度新たな可能性の視点から皆様に提示を考えた。

 元日弁連会長の宇都宮健児氏は、社会に広く目を向けた社会運動家である。「週刊金曜日」の編集委員のおひとりでもある。都知事選にも2度出馬している。

❶2012年12月16日投票日東京都知事選
当選 猪瀬直樹 得票 4,338,936票 得票率66.27%
次点 宇都宮健児 得票968,960票 得票率14.58%
立候補者9人
マック赤坂・トクマ・松沢成文・笹川堯・中松義郎・吉田重信・五十嵐政一
・宇都宮健児・猪瀬直樹

❷2014年2月9日投票日東京都知事選
当選 舛添要一 得票 2,112,979票 得票率 43.40%
次点 宇都宮健児 得票 982,594票 得票率 20.18%
立候補16人
ひめじけんじ・宇都宮健児・ドクター・中松・田母神俊雄・鈴木達夫・中川智晴
・舛添要一・細川護熙・マック赤坂・家入一真・内藤久遠・金子博・五十嵐政一
・酒向英一・松山親憲・根上隆

 このように二度もトップを追う都民の支持を集めた宇都宮氏は、弁護士の専門性を駆使しつつ民衆の側にたつ実践的知識人である。
 では、2⃣で宇都宮健児氏はどういう考え方かを転載し、3⃣で私見を述べたい。

Ⅱ: 【改正特措法緊急事態宣言の危険性  宇都宮健児】

 新型コロナウイルスの感染拡大が深刻さを増す中で、適用対象に新型コロナウイルスを追加した改正新型インフルエンザ等対策特別措置法(改正特措法)が3月13日成立し、翌14日に施行された。改正特措法は、人権を制限する権限を政府や自治体に与える法律であり、慎重な審議で求められていたのに、わずか3日の国会審議で成立させてしまった。

 この改正特措法によれば、一定要件を満たせば多くの人権制限を伴う「緊急事態宣言」を政府対策本部長である内閣総理大臣が発令できることになっている。

 緊急事態宣言を発令する要件は、「全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるもの」という抽象的で曖昧な表現となっており、具体的なことは政令に委ねてしまっている。

 緊急事態宣言により定められる緊急事態措置の実施期間は2年までとされ、さらに1年の延長が可能となっている。内閣総理大臣が緊急事態宣言を発令する場合や実施期間の延長にあたっても、国会の事前又は事後の承認は必要とされていない。

 緊急事態宣言が発令されれば、多数の者が利用する施設の使用制限等が可能となるので、集会の自由(憲法21条1項)が制限されることになる。集会などを制限することが感染拡大の防止にどの程度効果があるのかについて十分な科学的根拠は示されていない。

 また、改正特措法では、NHKが指定公共機関とされ、民間放送事業者も政令により指定公共機関とされ得ることから、放送事業者の報道の自由や表現の自由(憲法21条1項)に対する規制が可能となっている。

 さらに、都道府県知事は、臨時の医療機関開設のため、所有者等の同意を得て必要な土地・建物等を使用することができるが、一定の場合には同意を得ないで強制的に土地・建物等を使用することができることになっている。憲法が保障する財産権(憲法29条)が制限されることになる。.

 安倍晋三首相が専門家の意見を聞かずに独断でイベント自粛や一斉休校を決めたことで、国民生活に混乱を広がっている。この上、内閣総理大臣への権力の集中と市民の自由や人権の幅広い制限を伴う改正特措法による緊急事態宣言は、絶対に発動させてはならない。
(週刊金曜日 2020.3.27 第1274号)

Ⅲ: 【私見】

❶ 「改正特措法緊急事態宣言の危険性」論文、6つの危険を指摘
➀緊急事態宣言の具体的なことは政令に委ねている。
➁宣言発令も延期も国会の事前・事後の承認はともに必要とされていない。
③集会の自由(憲法21条1項)が制限され、感染拡大防止にどの程度効果があるかに十分な科学的根拠は明示されていない。
➃放送事業者の報道の自由や表現の自由(憲法21条1項)ほの規制が可能。
➄都道府県知事は強制的に土地・建物等を使用、憲法が保障する財産権(憲法29条)が制限される。
⑥内閣総理大臣への権力集中、市民の自由や人権のは場広い制限を伴っている。

宇都宮健児氏は以上の視点を踏まえて、緊急事態宣言の発動を強く戒めている。
宇都宮氏は、たえず緊急事態宣言が、日本国憲法の論理に違背し解体させる必然性を見通し、予見している。

❷現在における改正特措法の実際
 私は、日本におけるコロナ感染症対策に違和感をもっている。
最初にコロナ感染症の患者が発生しても、政府は有効で機敏な対策をとったのだろうか。むしろ政府が対策を打ち出すたびに、少しずつ社会は壊れていった.外出禁止を指示され駅前や繁華街のひとの姿のすがたをテレビは写し続けた。ひとがいなければ「街はさびれている」、ひとが何人もいれば「若者によって感染が拡大する」とけなす。
 経済が下降して倒産の危機が迫る。まるで首尾一貫していない。

❸小池都知事、吉村府知事
2人は「スピード感」を十分にだし、「やってる感」のパフォーマンスも上手だ。
だが、「やってる感」が見えれば見えるほど、小池百合子知事が都民の弱者に立っているかといえば、言葉はじょうずだが、実行は都民本位でなく自分オンリーであることが透けて見える。
 だが、保健所の人員・予算の合理化削減、公立病院への援助の削減など、今までに東京・大阪に関わってきた政治家や政党の政治行為が、新型コロナ感染症を強力な怪物・モンスターのごとくにしてしまったことを忘れてはならない。維新の会、自民党、
都民ファーストの会。これらが与党の自治体―東京都・大阪府―は、肝に銘ずべし。


❹ 宇都宮健児の可能性はコロナ禍再建東京の手がかり

 政党や政治家における閉塞状態は、新たな都市づくりによって再建の担い手を当選させるとは限らない。それでも、パフォーマンスと大衆受けする当選術で当選すれば万事良し、の現状ではない。東京都の法律と働かされかた、産業とサラリーマン、都市計画の建設的展望と百年先の将来への街づくりと安全な都市環境を具体的に描きだし、政策立案の展開図と見取り図を作成することだ。

 宇都宮健児氏に当選して東京再建をお願いしたい。さらに、いま東京百年プランを問題提起してもらいたい。その作業は大変だ。

都知事に当選しただけで終わった過去の都知事の末路を観れば、困難で実現多難な課題である。後藤新平・美濃部亮吉に続く三番目の賢人知事の誕生、いまの都政を地に足ついたものへする取り組みとなろう。

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