森まゆみ著「子規の音」 | 山あり谷あり 投資の記録

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大切なことを忘れないために

 子規が好きでたまらないという著者による正岡子規の生涯を描く評伝。随所に子規の俳句、短歌、手紙、随筆がちりばめられていて、味わい深い。好奇心旺盛で、旅行や野球が好きで、食べ物に目がない子規が描かれる。

 1689年、東北を歩いて旅をした松尾芭蕉の後を追いかけるために、子規は、1893年に東北を鉄道と徒歩で旅をする。著者は、2014年、子規の足跡をたどるために、車で東北をまわる。

 周囲の反対を押し切り、日清戦争に記者として従軍し、肺結核が悪化して、神戸で療養する。そこから、四国松山の夏目漱石の下宿にころがりこむ。そして、東京に帰る途中に、立ち寄った奈良で作った句が、有名な「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」である。

 その後、脊椎カリエスを発症し体は不自由になるが、創作活動は、ますます活発になっていく。俳句と短歌の革新運動に取り組み、夏目漱石をはじめ、多くの友人や門人と交流した。また、病床で「墨汁一滴」、「仰臥漫録」等の随筆を書いた。生きるエネルギーに満ちた35年の生涯だった。