もう4月も下旬ですが、3月の月イチ文庫(書店の店頭で気になった文庫を買って読むシリーズ)。
最近、本を読むという習慣と本を買うという行為が復活したので、読みたい本が渋滞している(のでこの記事も遅くなった)。
今回選んだのは多和田葉子さんの『献灯使』。
もともと多和田葉子さんは好きで、「ヒナギクのお茶の場合」「球形時間」など読んでいた。独特すぎる唯一無二の文体で、文字を読むときにしか発生し得ない何とも不思議な読書体験ができる作家さんと思っていたけれど、かなり久しぶりに著作を手に取った。
「世界が認めたデストピア文学の傑作」と帯にあって、多和田葉子さんの描くデストピアってどんな?!読みたい!と思ったのだ。
表紙も何だか不穏だし、そんなに楽しい話ではないんだろうなと思いつつも惹かれた。
案の定、すいすいと読み進められるタイプの小説ではなくて、少しずつ読んだ。フィクションなのだけれど、どきり、ずしり、とくる。もしかしてこんな未来があるかもしれない・・・という妙なリアリティがあった。
まさにディストピア。
私はディストピアの中でも真摯に生きようとする物語に惹かれてしまう傾向があって(ピクサー作品なら断然『ウォーリー』が好き)、この作品でも登場人物が絶望しているようで時折見せるキラっと光る何かがとてもよかった。