COVID-19、通称コロナ。本当に世界中で大変なことになっていますね。それもあっという間に世界中に拡散し、昨今急速に進んだグローバライゼーションの影響が悪く出てしまった感じです。コロナ蔓延初期、私は密かに日本よりもカナダの方が最初に大きな影響を受けるんじゃないかと思っていました。なんと言ってもカナダは多文化国家、世界各地からやってきた人が多く住んでいる国ですから。バンクーバーなんかはその良い例で、多分人口の3~4割は移民なんじゃないでしょうか。ところがどっこい、皆さんご存知の通り、コロナショックは最初に日本を襲います。2月時点では、カナダの友達や同僚が私の安否を心配するメールを頻繁に送ってくれるほど(ありがたや~)、世界のニュースは日本でのコロナ感染を心配していたのですが、それが3月に突入すると、突如アメリカで爆発的にコロナ感染が広がり、それは当然の事ながらお隣カナダをも直撃します。今現在カナダでは約8万人の感染が確認されていて、死者も6千人超出ています。私が住んでいるバンクーバー市が属するBC州でも2400人程度の感染者と149人の死者が出ています。このような急展開により、カナダでは早くも3月から完全ロックダウンが実施されました。



このカナダにおけるコロナ感染リスクの上昇とロックダウンの実施は、医療ソーシャルワーカーの現場にも大きな影響を与えています。例えば私が働いている腎臓透析科。腎臓透析患者は基本的にCOVIDー19の感染リスクが高いと言われています。それは透析患者さんの多くが腎臓病以外にも心臓疾患、COPDと呼ばれる慢性肺疾患、糖尿病、高血圧など様々な病気を抱えている為です。さらに透析患者さんは週に3回病院で透析治療を受けなければならないので、ロックダウン下でも家から病院まで通わなければいけません。とくに車を持っていない、運転できない高齢の患者さんはハンディーダートと呼ばれる公共の乗合バスを使って通わなければならないので、病院内外で多大なCOVIDー19感染リスクにさらされます。そのような環境なのでロックダウン実施直後から、腎臓透析科の医師、看護師、そして透析機器を扱う技師以外の医療従事者には自宅勤務が決定しました。もちろん腎臓科のソーシャルワーカーも自宅勤務になりました。



皆さんもご存知の通り、私は昨年秋から1年間のセバティカル(無給休暇)に入っていて、この有事にもかかわらず現在C病院の腎臓透析科の職場には不在中ですので(涙)、ここからはマメに連絡を取り合っている私のソーシャルワーカー同僚Rさんの情報に基づいてお話していきたいと思います。



どうやら腎臓透析科ソーシャルワーカーの自宅勤務はBC州のロックダウン決定直後に突然マネージャーから言い渡されたらしく、「悪いけど明日から自宅勤務でお願いします」の状態だったらしいです。これはかなりキツイ・・・準備期間無しのいきなりの自宅勤務。Rさん曰く、当日は大混乱だったそうですが、そりゃそうだ。私だって思いっきり動揺するでしょう。まず第一に、医療ソーシャルワーカーには「自宅からできる仕事」と「自宅からではできない仕事」があります。例えば腎臓透析科ソーシャルワーカーの場合、ハンディーダート(過去ログ参考)のような患者さんの交通手配は自宅からでも簡単にできます。電話でハンディーダートに連絡すれば良いだけだしね~。でも患者さんの突然の容態悪化・・・死んでしまった場合のご家族への連絡&サポートなんかは自宅からでは難しそうです。刻々と変わる現場の状況が分からない中、中途半端にご家族に連絡するわけにはいかないし。

緊急時以外のカウンセリングやメンタルサポートなんかは、多分電話でも出来るだろうけど、しかし面と向かってのサポートと電話口からでのサポートでは、やはり結果にも違いが出るんじゃないかと思うけど、どうでしょう?あと障害保険や生活保護の申請のお手伝いも電話口で出来そうだけど、でもすごく手間がかかりそうだ・・・書類とかどうやって説明したり送ったりするんだろう?さらに、患者さんの医療情報どうやって自宅から見るの?見れるの????



・・・と自宅勤務と聞いただけで色々な疑問や問題が私の頭の中に浮かんでくるのですが、これをRさん達現場のソーシャルワーカーは1日で答えを見つけ出さなければいけなかったのです。これは大変だ・・・そして役に立てなかった私を許してね(涙)あ、でも仕事のパートナーであるRさんとはまめにコンタクトを取っています。私の担当の患者さん達の容態も知りたかったし、またRさんと業務相談にものったりしたりと・・・だから、ちょっとだけは役に立ったよね?(と思いたい 笑)。



さて気になるソーシャルワーカーによる自宅勤務ですが、Rさんによると、腎臓ソーシャルワーカー自宅勤務の1日は、まず透析科当直の看護師長に電話することから始まるそうです。そこでソーシャルワーカーのサポートが必要な患者さんのリストをもらい、透析中の患者さんに直接電話口で相談にのる、もしくは患者さんの自宅に電話をかけて相談業務を行うという流れになります。ただ、通常時なら患者さんの問題事項を医師、看護師、栄養士、薬剤師、などのチームメンバーと連携して解決にあたるのですが、今は自宅勤務のソーシャルワーカー。チームでの意思疎通は簡単にはできません。さらに栄養士や薬剤師も自宅勤務なので連絡をお互いに取り合う術がありません。現場ではZoomみたいなリモートIT技術も使われてないみたいだし(情報保護の問題で?)。なのでコミュニケーションのキーパーソンは必然的に看護師長となります。看護師長が中心となり、看護師では対応できない患者さんの問題をそれぞれの専門職に割り振っていく。もちろんそうなると、現場で直に接する看護師さん達が、患者さんの悩みを聞き取っていく事になるのですが、看護師もコロナ対策を行いながらの看護業務で忙しく、なかなか患者さん一人一人のニーズを確認していく事は困難で、あくまでも緊急対応的なサポートしかできないとRさんは嘆いていました。ま~これは本当に仕方がない事です。それに自宅から患者さんに電話をするのも実は結構大変です。まず第一に、自分のプライベートな電話番号を患者さんに教えるわけにはいかないので、あくまでも電話は一方通行。患者さんがソーシャルワーカーにコンタクトを取りたい場合は、一旦病院まで電話してもらわなければいけません。そこで留守番電話を残してもらって、それをリモートで聞いて患者さん宅へかけ直す・・・まるで伝言ゲーム状態です。非常に効率が悪い。その辺のインフラ整備はソーシャルワーカーの自宅勤務における今後の課題でしょう。ただ患者さんの医療情報は実は自宅からリモートアクセス出来るらしく、さらに自宅からでも電子カルテに記入も出来るそうです。Rさん曰く「どうやらコロナ以前、随分昔からカルテにはリモートアクセス出来るようになってたんだって。私全然知らなかったよ~」と私に教えてくれたのですが、私も知らなかった・・・もっと早くに教えてくれればいいのに!ま~きっと職員が個人情報を漏らしたり悪用したりされるのが嫌だったから公にはしてなかったのでしょう・・・と疑り深い私は思ったのでした(笑)。



そういう感じで3月から始まったソーシャルワーカーの自宅勤務も、先々週くらいから週3回は自宅勤務、そして週2回は病棟勤務というふうになりました。と言うのも、ここ数週間でBC州のコロナ感染は峠を越えたようで、感染ケースは日々減少傾向。先日からはBC州でもついにフェーズ2と呼ばれる「段階的自粛解除」が始まりました。ただし、ソーシャルワーカーも病棟では完全防護しなければいけません。このように!


Rさん、完全防護した格好をポーズ付きの写真で私に送ってくれたのですが、それを見て思わず「あははは」と大笑いしてしまった不謹慎な私・・・いやいや、だってポーズも面白かったし、何よりその姿はもはや私の知っているソーシャルワーカーの姿ではなかったから。でも、大笑いした後、一気にドヨーンと暗くなりました。こんな姿をしなければいけないほど、コロナ感染のリスクは深刻なのか・・・それにしても完全防護のソーシャルワーカーRさん、「この格好で患者さんと話できるのは20分が限界よ!息苦しいし、声はこもっちゃうし、聞こえにくいし、患者さんとの意思疎通がすごく難しい。1時間患者さんの対応してたらめまいがしてきた」と私にグチをこぼします。そりゃそーだ。そもそも通常時はマスクだってつけないのに、いきなり慣れない完全防護服での相談業務。とくに患者さんとの「自然な会話」が命のソーシャルワーク業務において、完全防護服での対応はいろいろとやりにくいだろうな~と思います。患者さんはどんなふうい感じるんでしょうね、完全防護服でやってくるソーシャルワーカーに。多分、感染リスクの心配は軽減されるんだろうけど、アプローチはしにくそうだね。ワーカーの顔もよく見れないからリラックスして話しにくそうだし・・・という感じに相互に違和感を感じつつ任務遂行しなければいけない日々が続いています。



ただ病院全ての医療ソーシャルワーカーが自宅勤務かと言えばそうではなく、Rさん曰くC病院の急性期病棟のソーシャルワーカーはロックダウン後も病棟勤務をしているそうです。これは大変な事です。ロックダウン中は公共交通機関も制限されているので通勤するのも一苦労。おまけにリスクも高まります。さらに家で高齢者や病人などと同居している職員はきっと気が気でないはず。そんな状況下、カナダでも一般市民からの看護職及び医療現場で働く職員へのリスペクト&応援は熱く、BC州も当初は看護職だけに与えるとされていた臨時ボーナスを医療職員全員に支給することに決めた!との連絡が先日私の属する組合から来ました。これは大変評価できます。看護職と同様、他の医療専門職も同じようにコロナの感染リスクと闘いながら現場で働いています。患者さんと密に会話をするソーシャルワーカー、直接体が触れ合うPTさんやOTさん、患者さんを運ぶポーターの皆さん、患者さんと最初にコンタクトをとる医療事務員・・・組合の情報によれば、1時間あたり一律$4の追加給を支給するとの事。これは日給にすればおよそ30ドルちょっとのボーナスとなります。もちろんお金の問題ではないのですが、このような危機下でもそれぞれの職務をこなす医療現場の職員の仕事ぶりを政府が認めてくれた事は大変よろしい!といつでも上から目線の私でも深く感銘を受けたのでした。



幸いな事に、今のところ、私の透析科からはコロナ関連の死者は出ていません。カナダでのコロナ感染拡大当初、私はすごく心配していましたC病院のキャパシティを。なぜなら平常時でさえ、廊下で患者さんが寝かされるくらい常にベット不足と人手不足に悩まされている予算ギリギリ病院だからです。おまけに過去には病院併設のドーナツ屋さんに入院患者さんを寝かせる!(過去ブログ参照)なんて事件も起き、「ドーナツ病棟がある病院」と世間を騒がせたこともあるC病院。しかし私の心配をよそに、今回はうまく対応しているようです。やはりドーナツ事件から学んだ危機対処のお陰か!?それともロックダウンが功を奏したか????

私は現在東京に住んでいますが、正直、絶対日本の方が人口比における病床数は多いと思います。そもそも病院数も絶対数日本の方が多いし。そんな日本、そして東京でも「医療崩壊か!?」と騒がれているのですから、絶対C病院はヤバイだろう?と確信していたのですが、そんなC病院でも大丈夫なら東京で医療崩壊が起きるとはとても思えないのだが、それは私が東京をまだちゃんと知ってないだけなのか?それとも「医療崩壊」の定義が違うのか?ドーナツ屋に患者を入れなきゃならないほどの慢性的病床不足でも「医療崩壊」とは絶対言わないのだから、カナダの医療業界は根性があります(笑)。それにドーナツ屋に患者を入れちゃえ!と思いついた人のクリエイティブなセンス、危機管理能力にも脱帽ですてへぺろとカナダ下げをしてみる私は一体なんの話してるか分からなくなって来たのですが、しかし今回に関してはC病院の対応に大変感心している私なのでした。やれば出来るんじゃんC病院!



それにしてもこんな大変な時だからこそ、私も役に立ちたかったな~・・・と東京でのんびり自宅謹慎(?)している私は罪悪感と悔しさが混じったような気持ちを感じます。また頑張っているRさんに申し訳ない気持ちにもなります。でも考えてみたら、私も秋には仕事復帰するわけで、その頃までにはコロナは終息していて欲しいけど、現実的にはきっとまだまだコロナ騒ぎは続いてることでしょう。そう思えば、今のうちに気力を蓄えておいて、秋の本番に備えればいいか・・・と自分を慰める(?)今日この頃。それにソーシャルワーカーにとっての本番は、実際今年末から始まるだろうと私は予想しているから・・・ま~それはまた次回のお話で。


でもとにかく本当に良かった、C病院の透析患者さん達が無事で。これからも頑張れC病院の医療戦士達よ~~~!!!!!!!!