梅雨のなか回転する
深紅の傘
ブルーの銀河系
化石のように罅が入った心臓
眩暈した希望
次から次へと忘れていく歴史
いつしか始皇帝の墓に埋められる
紅海を歩いて渡る
風にめくれる日記や
純白のウエディングドレス
深夜のフイルムの空回り
予想した
世界の河川の音を巻きとったパリ
夢を燻製にしたアフリカの風
歴史を湿らし続ける南アメリカの山脈
欲望が身を投げる大西洋
言葉が砕かれ敷き詰められたシルクロード
それらを回転させながら
わたしたちは歩く
紫陽花に太平洋の深海
血とかなしみを
魚類の乾いた骨のように砕いて
空には
太陽のような苺が
振り子になって揺れる
苺はいつも
人生最後のように赤い
飢えを感じながら
白い陶器に乗った苺を
時間の丸い裏で
潰す
誰の命なのか
誰のための苺なのか
苺は
誰の命なのか
誰のための苺なのか
苺は
丸く
世界を映している歴史の丸い裏で潰される
真っ赤に塗った天安門
赤い壁を埋めたシベリア
トマトを瓶詰めした黄金海岸
鉈でスイカを割るアフリカ
電気が流れるネオン
鞭で収穫する苺
真っ赤に塗った天安門
赤い壁を埋めたシベリア
トマトを瓶詰めした黄金海岸
鉈でスイカを割るアフリカ
電気が流れるネオン
鞭で収穫する苺
苺を手にのせる
手の血の歴史によって匂いはいろいろ
梅雨のなか
苺を握りしめる
梅雨のなか
苺を握りしめる
帰りつく時には苺は潰れている
だから苺は
人類の失敗の味
人類の失敗の味
わたし自身の過去の苦み
なんとか残っている他者の苺のように
まだ見ぬ未来の甘さ
まだ見ぬ未来の甘さ
潰れた苺を
飲みこむ