盆栽は形を求める
あるいは形を強制される
喜びは小さな鉢につめられている
日々水が注がれ
時にはキスしてくれる
ナイフの唇で
指を切りおとすほどに
きみの肉体はラップに包まれている
生の甘苦しさも死のかた苦しさも表さない
きみは夜
きみのなかに成長する盆栽に気づく
盆栽はきみの肉体の枠から出ることはできない
だれにも聞こえない声で笑う
あるいは きみの腸が振動するようにふるえて泣く
盆栽は語らない
盆栽は四肢を切り落とされ
献上される
盆栽はいつも
きみの額のなかにある
盆栽の枯れていく過去
盆栽の見ることができない未来
盆栽のセックスと排泄
きみのなかで
薪になる
火をつけてみるといい
盆栽の詩が聞こえるだろう
盆栽の生活が語られるだろう
落とした腕と脚が
チリチリと鳴くだろう
その夜 きみは魂となりきみを知る
きみが失った腕
きみが割いた下腹
きみの金切り声
きみの額のなかで鳴りひびく
真っ暗な闇ときらびやかな朝
そこにはもう花がない
鳥が鳴く窓がない
きみは鉢に種をまく
きみのためでなく
芽を出すだろういのちのために
見るのはきみの目ではない
きみが知らない目が見る
きみが知らない雨が降る
きみが知らない風が吹く
きみの香りがない星に
一本の細い枝が伸びる
水が注がれる
この水は
わたしたちのいのちをしぼった
水
盆栽は
まだ形をもたない
風とともに会釈をする
わたしは見えないきみに会釈して
一日をはじめる
一日でいいのだ