道草 | 友野雅志の『TomoPoetry』

友野雅志の『TomoPoetry』

日々書きためている詩をのせます。noteには下にのせています。https://note.com/mtomono




給与明細を短冊にする
五七、そのあとは続かない
きみは不満だ
短冊でなく数値にしてほしい
太陽系の惑星間の法則は
リンゴの曲線に似ている
アップル   それぞれに落下する
恋の相手としては簡単すぎる
パイ   無限につづく
紫の指が有機分子の六角形にひろがる

わたしたちの家庭だ
生きるための場所であり
死刑執行の判決を公にする
きみはゴミ箱に投げる
指紋の残るパイ
歯型のついたリンゴ
足跡がひかる太陽系

空では
カシオペアと白鳥座が形を崩した
赤ん坊の泣き声に似た
捻れる音とともに
わたしたちは川を渡る
抱きあいながら
罵しりあいながら
互いの空を
ナイフで割きながら

あくる朝
血と夜空と川をはさんだサンドウィッチ
きみが二個
わたしも二個
ナイル川に流れた血の味
黄河でカラカラなる骨
昨夜の
きみの呪いと
わたしの憎しみの味

きみはピンクのドレッシングをかける
わたしは何もかけずにかぶりつく
その間に
六千万人の難民が星を見る
あるいは骨を見る
ひとりの人が
ひとりの人と出会い
何処まで彷徨うか考える

外に出ると
道はない
魂は迷いながら
迷っていないように振る舞いながら
真っ直ぐ歩く
完璧な道草
音にならない挨拶をかわしながら
道を見つけるまで
黙礼する