静まりゆく豆腐 | 友野雅志の『TomoPoetry』

友野雅志の『TomoPoetry』

日々書きためている詩をのせます。noteには下にのせています。https://note.com/mtomono

宇宙は凍えている
右と左の手を握っていた手は
透きとおり
くだけてなくなった
まだささやきは聞こえている

覚えているかい
心がこごえていく年月を

目的地にはたどり着いたかい
そもそもそういうものをきみは見ていただろうか

豆腐は悶えている
すべての愛のかたまりのように
憎しみの跡がのこる肉体
星が凍ると磨かれ
欲望が緑の芽のようにのびると
切り刻まれ
きみは浮いている

ぶら下がっている死を売る
死からしたたる時間を四角に切る
その時間だけは
きみの手で触ることができるだろう
無数の立方体に
宇宙の命が凝結している

ポン酢にひとつ
唐辛子にひとつ
ヨーロッパのオリーブオイルにひとつ
人類はすでに酔っている

売ることと買うことを知った
罪と穢れを
夜ひとり食べる

地球も凍えている
魂がもだえているきみも
リボンに結ばれた愛
銀色の指が
時間をあける
豆腐は
徐々に崩れていく

夜ひとり
記憶を四角い立方体に切る
罪を食べる
何名か名前をわすれる
愛を食べる
遠い星雲がふりまいている波の味
新しい魂がかたまる

名前
夜風が語ったが忘れてしまった

手をやすめると
多分 太陽系も銀河もない
冷めた湯に
浮いている宇宙が静かになる