眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

西日の千日手

2020-10-26 16:58:00 | 将棋の時間
おじいちゃんの部屋は
特別離れた場所にあり
いつでも西日の中にあった

僕が右に銀を繰り出すと
おじいちゃんは金を寄せた
ならばと左に銀を繰り出すと
おじいちゃんは金を寄せた
同じ手順が十回以上続いた

おじいちゃんは
僕に似て意地っ張りだ

攻略を図れば防御を固め
どこにも隙を作らず
突破口を与えてくれない

銀を繰り出せば金を寄せ
目先を変えてもついてくる
譲れない中盤に
僕は数え切れない銀を繰り出した

苦い顔をしたおじいちゃん

「まいった」

突然
小さな声で
負けを認めた
(まだ駒もぶつかっていないのに)
だから局面はずっと止まったままだ

おじいちゃん
お腹空いたんか

あれは千日手だったのに

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 創作オムレツ | トップ | Aボタンのリクエスト »

コメントを投稿