横須賀うわまち病院心臓血管外科

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左小開胸アプローチによる両側内胸動脈を使用した心拍動下冠動脈バイパス術

2020-09-10 17:40:17 | 虚血性心疾患
 冠動脈バイパス術における低侵襲治療としては、横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では左小開胸アプローチによる心拍動下冠動脈バイパス術を積極的に採用しており、この4年間で70例あまりの冠動脈バイパス術のうちの1/3の患者さんで左小開胸アプローチを採用しています。左前下行枝への1枝バイパスが左小開胸アプローチの約半数を占めますが、残りの半数は両側内胸動脈や大伏在静脈、右胃大網動脈を使用しての対角枝、回旋枝、右冠動脈領域への血行再建の組み合わせで最大3枝まで実施しています。
 この低侵襲心臓手術、なかなか普及しておらず、関東地方で実施している施設は数カ所しかないようですが、その理由として手技が難しくて難易度が高いため、無理してやろうとする心臓血管外科が少ないからと思います。1枝のみの再建であれば、ふだん正中切開アプローチで冠動脈バイパス術をオフポンプで行っている外科医であれば、左内胸動脈さえ採取できれば難しくはありませんので、経験のある外科医も多く、実際に筆者も他施設に技術指導に出かける機会も多いのですが、多枝バイパスを左小開胸アプローチで積極的にやろうという外科医には殆どあうことはなく、ほんの一握りだけだと思います。
 外科医をこのMICS-CABGから躊躇させる最も大きな理由は右内胸動脈の採取と上行大動脈への大伏在静脈中枢側吻合です。末梢側の吻合手技事態は普段の正中切開アプローチとそのなに代わりませんが、このグラフトの採取などは格段に難易度が上がります。この難易度の高い手技にチャレンジしていくという、挑戦を続けるスピリットが必要です。
 横須賀市立うわまち病院に赴任してからは小開胸手術を積極的に採用するなど新しい手術手技に一つ一つ挑戦してきましたが、このMICS-CABGは特に難易度の高いチャレンジといえます。
 不確定要素のあるこの手術では、右内胸動脈が使用出来なかったり、上行大動脈への中枢側吻合が出来ない場合の代替案を常に容易しておくという外科医としての引き出しの多さも必要になります。
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