横須賀うわまち病院心臓血管外科

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ARNI ついに日本でも発売

2020-07-31 18:06:24 | 心臓病の治療
https://blog.goo.ne.jp/gregoirechick/e/610adf008d001b1a743ed7e14fc9b962

 昨年の11月9日のブログに記載したARNI =angiotensin receptor neprilysin inhibitor(アーニー と呼ぶそうです)はいよいよ日本でも薬事承認され、この秋にも発売されることになりました。海外ではその心不全治療効果の優位性が認められ、非常に多くの患者さんで使われているそうです。このお薬は、商品名はエンレストといい、ネプリライシンという酵素を阻害するサクビトリルという薬と、アンジオテンシン1の受容体拮抗薬であるバルサルタンの配合体で、内服すると体内でそれぞれの薬に分かれて作用するものだそうです。
 ネプリライシンという酵素は、心不全治療作用のあるナトリウムペプチドファミリー(ANPやBNPなど)の分解酵素で、この酵素をサクビトリルが抑制することで、血中のBNPなどの濃度が上昇、または長時間作用するようになって、心不全治療効果を増強する目的に研究が進みましたが、実はサクビトリルだけを投与すると、AT1受容体が増加して、これが心不全治療効果を減弱してしまうため、期待するような心不全治療効果が出なかったそうです。そのため、選択的AT1受容体拮抗薬であるバルサルタン(ディオバン)と組み合わせることで心不全治療効果を増強することが可能となった薬剤だそうです。
 レニン・アンジオテンシン系の抑制は心不全治療効果がある、ということで、世界的にアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬=Angiotensin Converting Enzyme Inhibitor)の使用がガイドラインでも認められ、実際にエナラプリル(レニベース)が推奨されていますが、初めてこのARNI(エンレスト)は大規模臨床試験で、エナラプリルの効果を20%上回ったそうで、今後の心不全治療の基本薬となりそうです。ACE阻害薬との配合体を作ることも研究されてきましたが、これだと下肢浮腫などのACE阻害薬の副作用が強く出るために、ACE阻害薬ではなくAT1受容体拮抗薬(ARB=Angiotensin Receptor Blocker)との配合体が選択されたそうです。
 海外での市場規模は既に2000億を超えており、内服薬としては上位にくる薬剤になりそうです。
 特に低左心機能の心不全患者さんの寿命を延長するとともに、心不全再入院を減少させることが期待されます。
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