ドイツ語できる人向けの情報ではありますが、Youtubeでドイツ人のMS患者さんがこのドラマ『Balanceakt』を紹介していて、ついさっきまで見ていました。

オーストリアとドイツのテレビ局の合作の1時間半ぐらいの長さのドラマで、ドイツ語は普通にわかりやすいです。このままYoutubeに消されずに残ることを祈っています。文字起こし機能を使えばドイツ語字幕として読むこともできるし、便利ですね。

 

 

主人公は建築家として定期収入がない作曲家の夫を経済的に支え、息子と3人で暮らす女性。ある時から片目がぼやけるようになって神経科を訪れ、多発性硬化症と診断されます。一時はステロイドパルスでかなり回復するものの、仕事でプレゼン中に尿もれを起こしたり足の感覚が衰えて行ったりで再発症します。そのせいで仕事は首になり、夫は家計を支えるために妻に代わって定期的な職を探し、望んではいない音楽教師として働き始めます。妻はMSで変わっていく人生で混乱し、まだ小学生の子供は母親が病気なので学校に行かずに助けると言い出し、夫は妻の変化を受け止めきれず諍いが増えていきます。ドラマの最後は妻が夫に素直にサポートが必要だと告げ、夫も彼女を今後も支えて一緒に生きていくことを誓うハッピーエンドでした。

 

 

このドラマを見ると、こちらでは『MS』(略さないとMultiple Sklerose)という単語だけで多くの人が難病だとすぐにわかる認知度の高い病気だとわかります。病名を聞いてみんな絶句してしまう。でも、難しい病気だとわかっていても具体的な病気の症状や進行の仕方、患者がどんな気持ちになるかをよく知らないし、中には誤解があったり偏見を持つ人がいることもわかります。

 

 

MSが原因で別れてしまうカップルが多いと聞きますが、ドラマでは妻が夫とのSexを体の感覚がなくなってしまったからと言って断りだしたり、妻が働けなくなったからやりたくもない定職につかなければならなくなった夫の不満が爆発したり、はたまた妻の妹の恋人は結婚を決めたばかりだったのに離れて行ったりと、MS患者やその周りで現実に起こっているだろう場面がいくつも描かれています。(夫はもう少しで妻の妹とキスしそうになってましたが)

 

 

妻の両親が勝手に自分の家の一部を障害者向けに改装して娘夫婦を住まわせようとしたり、妹がまだ歩ける主人公に「びっくりさせる(良い)贈り物」として車椅子を用意したり、主人公はそのことでかえって傷ついてしまう。これもあり得る話ですね。「MS=車椅子」というイメージを持っている人が多いんでしょうね。そして神経科のドクターは主人公にちゃんと「患者によって症状も悪化のスピードも違う」と説明している点も、ドラマを通じて病気の本当の姿を理解してもらうにはとてもいいと思います。

 

 

ドラマの終わり方はとりあえずハッピーエンドですが、その後どうなるかはわからないなと思いました。主人公が助けを受け入れられる気持ちになるまでの葛藤がよく表現されているのは良かったし、ドイツらしく変に希望を持たせようともしない現実的な感じがしました。妻が今までストレスをたくさん抱えて一家の稼ぎ頭としてがんばってきたのに、夫は妻が病気になったのでいろいろなことを諦めなければならずに不満タラタラになるって、自分の知っているドイツ人男性たちが頭に浮かびました。その反面、ドラマのように妻がどんな体になっても一緒に生きている男性たちも何人か知っていますけど。

 

 

ちなみに免疫抑制剤の製薬会社や病院、ドイツ多発性硬化症協会などMSに関わっている場所でMS患者の家族のための無料のセミナーが行われたり冊子が出されています。ドラマの中では医師が主人公にMSについてのパンフみたいのを渡していたし、妻のお母さんが尿もれ用の下着のパンフみたいなものを読んでいました。夫がセミナー受けるとかのくだりがあったら、もっと良かったのになと思いました。

 

 

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