みんなの学び場美術館 館長 イクコクサカです。

 

今日は写真家 井上有喜さんのインタビューをお届けします。

 

井上有喜さんは2019年5月に仙台の晩翠画廊で、色鮮やかな写真作品の個展を開催された写真家です。

私はそこで初めて井上さんと出会い、とても感動をいただきました。

 

井上有喜さん

 

 

井上さんがどのような思いで写真を撮られ作品にされているのかとても興味深く、インタビューさせていただきました。

 

第1回 写真を始めたきっかけ、写真という表現方法について

第2回 撮影のテーマについて

第3回 社会との接点、「あなたにとって写真とは?」

の3回にわたって紹介させて頂きます。

 

第3回の今日は、井上さんが写真で本当は伝えたいと思われていること、「井上さんにとって写真とは?」について、お聴かせいただきました。

どうぞお楽しみ下さい。

 

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弘前

サイズ(単位:mm):20mm

2016年4月 撮影

 

 

 

 

 

ヨセミテ滝 アッパーフォール

サイズ(単位:mm):44mm

2013年5月撮影

 

 

 

 

 

バルセロナ・サグラダファミリア

サイズ(単位:mm) :14mm

2015年10月 撮影

 

 

 

 

 

ボゴタ 塩の教会

サイズ(単位:mm):44mm

2013年5月 撮影

 

 

 

 

 

上海 森ビルより

サイズ(単位:mm) :24mm

2015年9月 撮影

 

 

 

 

 

チベット カイラス山

サイズ(単位:mm):300mm

2011年10月撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

クサカ

発表の時や題材的に社会との接点を意識されることはありますか。

例えば貧困の地域を撮られた時に、そこにメッセージを込めているとか。

 

 

井上有喜さん

もともと何で写真を撮っているかというと、撮影のテーマのところで少し触れましたが、私は中国や少数民族をたくさん撮ってきています。

 

クサカ

はい。

 

井上有喜さん

そこでは民族的な困難、貧困も目の当たりにしてきました。中国で撮った老人と子供の写真も多くあります。私は好きな写真がたくさんありますが、10人中9人は興味ない訳ですよ。でも10人に1人位はそういう写真を良いと言ってくださる方もいます。

 

だから個展の時も、何でそういう写真を入れなかったんですか?と言われる方もいらっしゃいました。実際そちらの写真の方が多いですし、いつかやってみたいのですが。

ただ、そういう写真ってずっと見ていてたい写真ではないし、社会性が強過ぎるので・・・。

 

本当は社会的な私の見た悲しさとか、怒りを伝えるというところを写真の原点でやり始めたので、やりたいという思いはあるのですが、今、中国で仕事をしているのでやれないというのがあります。

 

クサカ

それは表現者としては辛いところですね。

 

 

井上有喜さん

子供達の悲しみとか笑顔のない老人達というのは被写体として、とても心惹かれるものがあります。日本にはいないから。

 

 

クサカ

生きている環境が違うと心情も違うのでしょうね。

 

 

井上有喜さん

チベットとか、ウイグルとか、モンゴルというのは、自分の国と文化を強引に失わせられている人たちで、かつて漢民族を攻撃したことのある人たちじゃないですか。

彼らが過去に中国を攻撃したばかりに今、復讐にあって国境の内側にいて、名誉というのを全て虐げられているんですね。日本も中国を攻撃したことあるじゃないですか。

だから正しく中国を怖がって理解しないと、私が見てきたチベットとか、ウイグルとか、モンゴルみたいになるよ、というのを私は伝えたいですが、伝えられないというもどかしさがあって。

 

お酒飲んで話はするし、そういう時に写真見せたりはしますけど、それを発表したりとかはやりたいけどできないですね。

 

 

クサカ

そうですか。私を含め、そこに気がついている日本人は少ないかもしれません。

 

 

井上有喜さん

私はこれまでにも中国に入るときに、フォトグラファーとバレていたのかいないのかはわかりませんが何回かカメラ機材とか没収されたことがあるんです。没収された理由を聞くと「あなたはこの国に対して不利益なものを撮影して公開する可能性がありますから」と言われました。だから多少マークはされているんです。カメラとか、ニコンプロフェッショナルサービスの会員、日本広告協会の賛助会員というのもわかっているでしょうし、リストとか手に入れてますから。

 

 

クサカ

入国管理が厳しく徹底されているのですね。

 

 

井上有喜さん

一人一人の外国人を洗っているでしょうから、スパイのリスクをかけられているのだと思います。でも、日本にいても日本の公安局からスパイだと思われていた時期があって。

 

 

クサカ

えっ。どうしてわかったんですか。

 

 

井上有喜さん

公安局の人が定期的に、2、3年毎月のように私のところに来ていましたね。インタビューだと言って。中国のことをいろいろ聞かせてくださいという大義名分で来ていましたけど。でも私のことを洗っていたのだと思います。急に来なくなったので。

 

 

クサカ

それだけ、出入国の頻度が多いのですね。

 

 

井上有喜さん

ええ。あと行っているエリアが・・・。怪しいじゃないですか、チベットとかウイグルとか、なんでそんなしょっちゅう行っているのか。

 

本当はそういう社会的なメッセージを伝えたいなという思いもあって写真を始めたという経緯もありますが、そこはちょっと作品にならないし。

うちの家内の影響もあって、カレンダーはパッと見て一般の方の評判が良い写真でやったほうがいいというのもあって。自分で選ぶと暗〜い写真も入ってくるんです。

 

かつてそういう写真もカレンダーに入れていた時期もあり、その時期にそういう写真いいねと言ってくださる方もいましたけど、圧倒的な多数の方は綺麗な海とか綺麗な山とか、そういうものを見たいという方が多いので、そういうものにしてきましたけど。

 

それは私が本当に撮りたい写真じゃないし、今回の晩翠画廊の個展もそのカレンダー写真の延長なのです。本当は社会的な写真を撮りたいですが、ビジネスマンをやりながらって無理なんですよね。

 

 

クサカ

そうですか。個展で発表されたような美しい写真と、本当に井上さんが撮られたい写真と、いつかトータルに発表できる時が来ると良いですね。

 

さて、では最後の質問になりますが、井上さんにとって写真とは?

 

 

井上有喜さん

人を驚かせるためのツール。自分の驚きを人に伝えるためのツール。両方ですね。

 

 

クサカ

おおー。(感動!)

 

 

井上有喜さん

自分がびっくりしたものを使って、人をびっくりさせるための道具ですかね、あえて言えば。

 

ムービーでもなんでもいいんですけど。個展をやる前も、ドローンだとかムービーの方が面白くなってしまって、どっぷりハマっていたんです。

ムービーって瞬間人に見せて、感動させやすいんですけども、デジタルデータじゃないですか。

プロダクツとしてつまらないと思いますね。

コンテンツがDVDにしてもCDなどのデジタル媒体で寿命があるし、再生すれば見られるんでしょうけど、再生するための機材もいるし、だから作品として残してにくい。

 

テープではVHSとかベータとかありましたけど、いつまでその工業製品が残るのかという確証もないじゃないですか。そういった意味でデジタルデータの作品を作っていくというのは、なんかあんまりピンとこないんですよね。作品として未来の人に見せるには、ちょっとやっぱり心配なんですよ。

 

 

クサカ

紙にちゃんとプリントした作品として残されたいということでしょうか。

 

 

井上有喜さん

写真の定義って、多分デジタル画像だけだと写真作品って言い切れないんだと思います。これは私の考えというよりは、国会図書館でも、発行して雑誌として出したりジャンコードを取ったりすると永久保存してくださるんですよね。それも「プリントしたもの」という規定があるので、プリントしたことで写真として完結するんじゃないでしょうか。

 

デジタル画像だけだと、プロダクツと言えないんじゃないかと思います。ただ写真はいくらでもプリントできてしまうので、晩翠画廊の個展ではシリアルナンバーを作って、これ以上はプリントしないという制限を作りました。そうじゃないと版画でも何でもそうですが、価値が下がっていってしまうのでね。

 

クサカ

本当に未来人を驚かすことを考えていらっしゃるんですね。

 

井上有喜さん

基本私、好奇心が強くて遊び人なので。来週から九州にバイクで行って、バイクで九州を回ってテントに泊まって来ようと思っているんです。それを練習に、12月は台湾をバイクで一周して来るんですね。

 

クサカ

井上さんは本当にアクティブですね!

 

井上有喜さん

興奮したいので。いずれヨーロッパとか回ってみたいですけど、今、ビジネスがまだ忙しいので。

 

クサカ

今回は、貴重で素晴らしいお話をたくさんお聴かせいただきまして、ありがとうございました!

 

 

 

仙台 青葉城址

サイズ(単位:mm)14mm

2015年4月 撮影

 

 

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編集後記

 

今回、初めて写真作家のインタビューを掲載いたしました。それは、5月の晩翠画廊で井上有喜さんの写真を拝見して、独自のインクとプリントを用いられているという点で、最先端の科学技術で最先端の表現をするというルネサンス期のような芸術のあり方を現代で体現されていると感じたからです。

 

井上さんは、実は私の同級生であり親友(mikumariさんhttps://www.facebook.com/mikumari.neutral/)のお兄様でもあるのですが、数年前に親友から井上有喜さんが当時写真のブログを書いているとお聞きして拝読したことがありました。特に感動した記事は、旅先でカレン族(首長族)の女性を撮影されたエピソードで、写真を撮る側、撮られる側の心の動きを繊細に綴られたものでした。他にもカメラを持って異国に出入国する時の大変なエピソードなど、とても印象に残っていて、いつかお会いしてみたいと思っていたのです。

 

今回、実際にインタビューさせていただき、私が最も印象に残ったのは、井上さんの「自分が驚きたい!そしてそれをひとに伝えて驚かせたい!」という井上さんの好奇心の強さ、モチベーションです。撮影エリアが世界の辺境という広域さ、100年200年先の未来人をターゲットにされているというのも、とてもスケールの大きい活動をされていて、本当に素晴らしいと思いました。

 

これからの井上有喜さんの写真がとても楽しみです。

井上有喜さんの益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます。

 

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◆井上有喜さんプロフィール

 

 仙台市出身

モータースポーツフォトグラファーの尾関一氏、佐藤安孝氏に師事。

平成12年から10年間、上海を拠点に活動。

N P Sニコンプロサービス会員。

株式会社ラプラス代表取締役社長

(A P A日本高校写真家協会賛助会員)

 

 

 

 

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