大腿筋膜張筋が腰痛の原因であった症例について

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症例検討
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どうも。

kabosuです。

 

今回は症例検討シリーズです。

 

腰痛を訴える方は、病院以外でも多く見受けられます。

家族とか友達とか、様々ですね。

 

そんな病院以外で遭遇する腰痛の多くは、

筋へのアプローチで改善することが多い印象です。

今回は、上記のような”非特異性腰痛”へのアプローチ内容を報告していきたいと思います。

 

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1.はじめに

今回、体幹伸展時に腰痛をきたしている症例に対しアプローチを行いました。

症例は体幹伸展時に腰部に詰まる感じがあると訴え、それ以上は身体を反れない状態でした。

そんな症例に対し身体的評価を行い、問題のある筋へアプローチを行った所、痛み・可動域共に改善が見られたのでそれを紹介します。

2.症例紹介

・30歳代男性

・職業:医療職(日々、身体的な負荷は少ない)

・体型:やや肥満ぎみ

・運動歴:あり(最近は運動不足気味)

・最近スポーツで膝を痛めて(元々痛めていた)現在は辞めているとのこと

3.身体的評価

①体幹の自動運動テスト

・体幹の後屈可動域制限あり

※体幹後屈時、腰部につまり感の訴えあり

・体幹の前屈可動域制限あり

※腰痛の訴えはないものの前屈時に床に指がつかない

※太もも裏のハリ感訴えあり

②トーマステスト(腸腰筋や大腿直筋のテスト)

・両側とも陽性

①膝を抱えた際に対側の下肢が持ち上がる⇒腸腰筋の短縮

②膝を抱えた際に対側の膝が伸びる⇒大腿直筋の短縮

③膝を抱えた際に対側下肢が外転位になる⇒大腿筋膜張筋の短縮

症例は、上記3つすべての陽性反応が確認された。

※上記3つの陽性反応の内、外転位のみ自力で修正することが困難であった

※①と②は制限があるものの正常の位置に向けて動きを出すことができていた

トーマステストについてはこちらに詳しくまとめています。

腸腰筋や大腿直筋の短縮を評価するトーマステストの方法と解釈の仕方

 

③Oberテスト(大腿筋膜張筋のテスト)

・両側とも陽性(大腿筋膜張筋の短縮あり)

※膝屈曲位にしても陽性反応が出るため、中殿筋前部繊維の問題も含まれる可能性あり

Oberテストについてはこちらで詳しくまとめています。

大腿筋膜張筋の短縮を評価するOberテストの方法と解釈の仕方

 

4.大腿筋膜張筋について

図:大腿筋膜張筋

3D解剖学より引用

【起始】

腸骨稜外唇の前部、上前腸骨棘、大腿筋膜の深面

【停止】

腸脛靱帯を介して脛骨外側顆の下方(ガーディ―結節)につく

【大腿筋膜張筋の主な働き】

股関節の屈曲、内旋、外転

※大腿筋膜張筋は他の股関節屈筋によって股関節が屈曲しているときに、股関節の外旋動作を抑制させる作用を持つ。つまり大腿筋膜張筋は歩行時や走行動作で脚を振り出す際、股関節が外旋するのを防ぎ、足がまっすぐ前に出るようにするという重要な役割を果たしている。

【大腿筋膜張筋を支配する神経】

上殿神経(L4~L5)

【関連する疾患】

上前腸骨棘裂離骨折、腸脛靭帯炎(ランナー膝)などなど・・・

5.大腿筋膜張筋が腰痛の原因であると判断した理由

①体幹伸展運動時に腰痛が出現する

体幹伸展動作を制限する組織は、主に体幹前面や股関節前面の組織となります。

身体の前面を通る組織が何らかの原因で短縮もしくは緊張することで、体幹伸展時の腰椎の正常な前弯の出現の制限や骨盤の正常な動きが阻害されます。

つまり、

「体幹伸展時に、骨盤の後傾運動が起こり、それに伴って腰椎は多少前方移動する」

この動きが制限されることにより腰椎の椎間関節同士が早期から衝突し、腰痛の出現を引き起こしていると解釈しました。

今回のアプローチの対象に挙がった大腿筋膜張筋も身体の前面を通る組織であるため、体幹の伸展運動を阻害する一つの因子であることがわかります。

 

②トーマステストでの外転偏位、Oberテスト陽性がみられたこと

①の体幹伸展の阻害因子だけだと原因の候補は数多くあることになります。

そのため、身体の前面筋の評価を行いました。

 

まずはトーマステスト。

トーマステストは腸腰筋や大腿直筋の短縮を見るテストです。

ここでは腸腰筋・大腿直筋の両方とも短縮傾向になっていました。

そして、それとは別に評価側の下肢が外転位をとっており、自力で修正が困難でした。

そのため腸腰筋や大腿直筋の短縮は認めるものの、大腿筋膜張筋の方が問題として大きいのではないかと判断しました。

 

そのため次に、Oberテストを実施しました。

Oberテストは大腿筋膜張筋の問題を評価するテストになります。

このテストで大腿筋膜張筋の短縮が確認されました。

 

よって、体幹伸展を阻害している筋は、腸腰筋・大腿直筋・大腿筋膜張筋の3つの内、大腿筋膜張筋の影響が大きいと判断しました。

※症例は膝を痛めているという背景も一つの判断基準とした

※大腿筋膜張筋は股関節と膝をまたぐ筋肉であり、股関節と膝の両方に作用する

 

③文献から引用

「急性腰痛症患者における大腿筋膜張筋に対するダイレクト・ストレッチングの即時的効果」

理学療法科学 28(6):779–782,2013

上記の文献にも大腿筋膜張筋と腰痛の関係性が示されています。

シングルケーススタディではありますが、この筆者も大腿筋膜張筋やハムストリングスへの介入が非特異性腰痛症例の姿勢や歩容の改善が即時的に得られることを経験していると述べています。

この文献では、大腿筋膜張筋(骨盤前傾位にさせる)とハムストリングス(骨盤を後傾位にさせる)の両筋がそれぞれ緊張することによって、骨盤の自由度が低下し、日常生活場面において腰部へのストレスを高めてしまうことになると述べています。

 

今回の症例もハムストリングスの緊張は強くSLRの制限は確認されていました。

このことから、この文献で示されている内容にも当てはまることが言えますね。

 

6.大腿筋膜張筋への理学療法(ストレッチや筋膜リリース)

大腿筋膜張筋への介入は下の図のように行っていきます。

大腿筋膜張筋は二関節筋であるため、常に緊張している組織の一つになります。

症例もOberテスト陽性であるため短縮位で固まっている状態でした。

そのような状態にある組織に対して刺激を加えても反発があり深い刺激が入りません。

そのため、以下の点に注意してリリースしていきます。

●まずは組織をあえて短縮位に持っていき、組織を強制的に緩めるようにする

●その状態で刺激を入れていく(固い部分を探していく)

※短縮位に持っていくことで収縮することが無くなるため自然に緊張が落ちる

●刺激量は「イタ気持ちいいレベル」で行う

●30秒から90秒間持続して圧迫する

このように刺激していくことで大腿筋膜張筋のリリースが図れます。

 

7.大腿筋膜張筋へのアプローチ実施後の変化

大腿筋膜張筋のリリース後は、Oberテスト・トーマステスト共に改善がみられています。

また、体幹伸展時の腰部のつまり感も軽減し可動範囲も広がっていました。

※トーマステストに至っては、腸腰筋・大腿直筋の短縮反応も改善されおり、股関節の伸展・膝の屈曲運動が行えていた

 

8.まとめ

今回は、大腿筋膜張筋と腰痛の関連性について症例を通してまとめていきました。

腰痛の原因は様々です。

今回はその中の一部分を紹介したような形になります。

ただ、今回のトーマステストの所で書いたように、

「一つの組織がゆるむと、他に問題があった組織も同時に緩んでいく」

といった現象が起こります。

今回は狭く一部分の中での反応になるわけですが、これは腰痛などの大きな問題でも言えることだと思います。

腰痛は、身体機能面以外にも心理面が影響していると言われています。

先程の変化を腰痛で置き換えれば、心理面に対し何らかのアプローチを行えば身体機能面の問題も同時に改善する可能性があるってことになります。

※心理面に介入して腰痛が軽減したなら身体機能面の問題も改善していると判断されますよね

このように、問題がたくさんあるからといって、すべてに対してアプローチをする必要はないってことです。

「たくさん治療するのに時間をかける」のではなく、「何が原因なのか?を特定すること」に時間をかけたほうが効率がいいことがわかりますよね。

 

今回は、そのような視点の切り替えるいい機会になりました。

皆さんも他に問題点を特定するいい方法があれば教えていただければと思います!

 

それでは本日はこの辺で。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

 

合わせて読みたい記事

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腸腰筋や大腿直筋の短縮を評価するトーマステストの方法と解釈の仕方

 

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