TKAの術後、スムーズに膝が曲がるようになるために留意すること

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膝について
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TKA術後はいったん筋力・可動域ともに低下します。

筋力に関しては3か月から6か月で術前の筋力よりも向上することが知られています。

 

可動域に関しては、術後は120°から140°程度しか曲がらなくなり正座などはできなくなります。

それでも大半の日常生活動作は問題なく行えるようになり、術前の状態からすれば満足度は高くなります。

 

で、この膝の可動域に関してですが、術後からある程度積極的に動かしていかなければ目標とする120°以上に到達しないことがあります。

 

今回は、この可動域を改善させていくための方法をまとめていきます。

 

 

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1.TKA術後の膝の可動域制限の原因は?

TKA術後の可動域制限にはいくつか原因があります。

 

①術後の腫脹

②疼痛による防御性収縮(筋の過緊張)

③術創部の滑走性不全

④術後の癒着

 

 

①術後の腫脹

TKAは簡単に言うと、膝の前面を切開し、関節面を切り取り新たな関節をはめ込む手術です。

術中は思ったより膝を動かします。

そのため当然ですが炎症が生じます。

 

膝を切開したことによる炎症+術中の操作による炎症

による腫脹が術後は一定期間見られます。

 

②疼痛による防御性収縮(筋の過緊張)

術後は炎症⇒腫脹により強い痛みを伴います。

痛みがあると動かすことに消極的になります。

つまり、潜在的に身体を固めて出来るだけ動かないように働いてしまうわけです。

このように身体が固まることを防御性収縮といい、これが過度になると可動域制限をきたします。

 

組織の炎症が落ち着き、腫脹も収まってきてるのになぜか膝が固いままである

とか

エンドフィールの感じ方が、「押せば曲がるけど抵抗感を感じる」などの軟部組織性に変わってきていれば防御性収縮が過度に働いている可能性があります。

 

細かい膝の痛みについてはこちらの記事に部位別に記しています。

リハビリにより改善する可能性のある膝の痛みの原因とその解決方法4選

 

 

③術創部の滑走性不全

術後、術創部のツッパリ感を訴える例は比較的多いです。

実際に、文献では膝の可動時に「皮膚の影響はさほどない」と言われています。

そのため、実際には皮膚レベルの術創部ではなくその深層にある膝蓋上嚢などが影響しているのかもしれません。

 

本当に皮膚レベルで可動域制限を引き起こしている場合は、膝を曲げる際に膝前面の皮膚を寄せながら屈曲させていくと楽になるはずです。

 

これで大きな変化がない場合はもっと深層に問題があることを示唆しています。

 

 

④術後の癒着

術後、関節内に癒着を認めることがあります。

癒着を認めると極端な可動域制限を感じるようになります。

 

そうなってしまうと徒手的なアプローチでは可動域の改善が見込めなくなり、観血的関節授動術が選択されます。

 

癒着の原因の一つとして”関節の不動化”が挙げられます。

術後、極端な不動が関節内の癒着を引き起こす可能性があり、術後の大きなリスクになります。

 

そういった点も踏まえて術後のリハビリは重要になってきます。

 

この癒着に関して、一つ文献を紹介します。

人工膝関節全置換術後における可動域制限因子の検討-観血的関節授動術を施行した一症例の術中所見より-

この文献では癒着した症例に対し、観血的関節授動術を実施した例を述べています。

ここでは、膝内側部よりも外側部に癒着が強く見られ、膝外側構成体の可動性を考慮したアプローチの重要性が示唆されたと記されています。

 

 

 

2.TKA術後の可動域訓練の方法は?自動運動 VS 他動運動

TKA術後は多くの施設でCPM(持続的他動運動装置)が使用されていると思われます。

そして、そのCPMと合わせてリハビリを膝を曲げる運動を行っていくといった流れが一昔前からスタンダードな流れになっています。

 

セラピストの意見もまちまちで、

「他動でがっつり動かさないと絶対に曲がらない」

とか

「無理に曲げたら防御性収縮が入って余計曲がらなくなる」

などなど・・・

結構意見が分かれる所かと思います。

 

この辺に関しては、ガイドラインでは以下のように記されています。

 

CPM装置

術後短期的使用: 推奨グレード B エビデンスレベル 1

術後長期的使用: 推奨グレード D エビデンスレベル 1

・TKA後CPMの使用は、関節可動域に関して有効であるが、臨床的意義に関しては小さい。

また、麻酔下のマニピュレーションの実施数は減少するがエビデンスとしては弱い。

・通常の理学療法士による介入のみと、それとCPMを併用した場合、術後3か月の時点では屈曲角度、腫脹、機能、疼痛に有意な差は認められなかった。CPM 使用の有意性は認められなかった。

・自動運動を中心とした理学療法と比較して、CPMの有効性は、短期的にも長期的にも認められなかった。

・CPMの使用は、短期的には関節可動域の改善に有効である。しかし、長期成績には影響を与えなかった。また、CPMの長期使用は関節可動域の改善にほとんど影響はない。

・TKA 術後、通常の理学療法にCPMを併用することによるさらなる効果は認められなかった。

・TKA 術後、通常の理学療法に CPM を併用することは、患者にとって有益である。しかし、その使用期間、強度についてはさらなる研究が必要である。

 

CPMの使用に関しては短期的には勧められるが、長期的な使用は効果がないと去れている
いずれにせよ、使用期間の明確な設定がないため曖昧な要素が強い

 

 

□関節可動域訓練

自動運動: 推奨グレード A エビデンスレベル 2

他動運動: 推奨グレード D エビデンスレベル 2

・自動関節可動域運動はTKA後の機能改善に有効な方法であり、理学療法士による他動運動の有意性は認められなかった。

理学療法士は膝関節の他動運動よりも、日常生活活動に着目した機能運動に積極的に関わるほうが好ましい。

・TKA 施行後の CPM またはスライダーボードを用いた関節可動域運動は、通常の理学療法と比較して、さらなる効果は認められなかった

 

可動域訓練は他動運動よりも日常生活に即した形での改善を図った方がいい

 

このようにガイドラインからは、他動運動よりも、自動運動の方が効果があると記されています。

 

この背景には、痛みの捉え方も大きく関わっていると思われます。

脳科学の方面からも「膝の痛み」について言及されており、情緒的な部分への介入の必要性が強くなってきています。

 

 

3.まとめ

今回は、TKA術後の膝の可動域改善をいかにスムーズに行うか?そのための方法はどのようにしたらいいか?についてまとめていきました。

 

一般的に言えば「誰かに思いっきり曲げてもらえばすぐに曲がる」的な思考になることもありますが、意外と自動的に日常生活の中で動かしていくことが最良であるというのが現状のスタンダードであるようです。

 

確かに実際に何か特別な問題がない限り、細かく曲げる運動を行うよりもダイナミックな動きの中で膝を動かしていった方が経過は良いように思います。

 

それでは本日はこの辺で、、、

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!!

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