フライフィシングについて – フライラインを選ぶポイント AFFTA チャート

2024/03/16AFFTA,AFTMA,シューティングヘッド,スカジット,スカンジナビアン,スペイ,フライフィッシング,フライライン

フライフィッシングは他のどの釣りと比べてもキャスティングが重要と言えますが、さらにプレゼンテーションを行う時もフライラインをどう操るかで魚の反応が大きく違ってきます。フライロッドの選択と同時に正しいフライラインを選択することが、飛距離、正確性さらには疲れにくさにつながり釣果UPに直結するのが面白いところだとも言えます。

基本:フライロッドはフライラインの「ヘッド部分」を「ループ」に整えてキャストしている

何らかの重みのあるものを反発力で飛ばすのがロッドの役割ですが、フライロッドはフライラインの先端の「ヘッド部分」の重みを利用してロッドを曲げて、その反発力でU字型の「ループ」の形にラインを撃ち出しています。このヘッド部分の重量(グレインという単位で指定します1グラム=15.434グレイン)がフライロッドごとにデザインされたロッドパワーと合っていれば楽にキャストすることができます。

ヘッド部の重量に応じて番手が決められており、0番〜16番(大きくなるほど重い)をフライロッドの番手と合わせて使います。

もしフライラインの重量がフライロッドの指定より重たかったら?問題ありません。通常よりも短めにヘッドを出してキャストすればいいだけです。また、どのロッドも最低50グレイン程度の幅は投げられるように作られているので、快適とは言えないまでも投げるだけなら1、2番手ずれていても大丈夫です。最近は素材の革新が目覚しく、水面の抵抗を利用してロッドを曲げてキャストするウォーターボーン・スタイルのキャスト向けのロッドに至っては、3番手以上の幅で作られている物も出てきました。

オーバーヘッドキャストとウォーターボーンキャストの違い

頭上にループを作るオーバーヘッドキャストの場合、「U」の形(Uループ)になったヘッド全体の物理的な力(=ライン重量 x ライン加速度)を使ってロッドを曲げてラインを撃ち出しますが、ウォーターボーンキャストの場合は、リーダーからヘッドの一部が水面に張り付いていることで支点=アンカーをセットしたら、ヘッドの残りの部分を自分の後ろへスイープ&リフトして「D」の形(Dループ)にしてロッドを弓として使ってラインを撃ち出します。

オーバーヘッドキャストは水面にラインを付けずにキャストできる利点がありますが、自分の後方へループを撃ち出すバックスペースが必要になります。フライロッドへはヘッド部分の重量全てがかかることになります。

ウォーターボーンキャストは近くの水面へラインでインパクトを与えてしまいますが、自分の後方へ作るDループのバックスペースだけあればキャストすることができます。フライロッドの先端が力点、水に張り付いているラインシステムの一部が支点となるので、ヘッド部分全体ではなく一部の重量だけがかかることになります。専用のフライラインを使わずにキャストしたい場合は、フライロッドの指定よりも2-3番手上のラインを使います。もしくは柔らかいミドルアクションのロッドを使い、低い位置でスイープして抵抗力を最大化してアンカーを利かせてからDループを作ってシュートします。

飛距離を出したい場合、風の中でも直進性のあるキャストをしたい場合は、「スカンジナビアン」や「スカジット」といったスペイキャストに適正化された専用ラインを使います。

フライラインのつくり・・・素材:コアとコーティング

一般的なフライラインはラインの強度や性格を決める「コア」と呼ばれる芯材と、コアを保護しつつ浮力をコントロールしたりラインハンドで扱いやすくするための「コーティング」のチューブ構造で作られています。コアが空気を含めば水に対する比重が軽くなり浮くライン、コアが空気を含まなければ比重が水よりも重たく沈むラインとなります。

ブレイデッドコア

コアが空気を含みやすくなるよう、ダクロンやPEなどの網糸をさらに網糸に組み上げてコアにしています。高い浮力が求められるフローティングラインに使われます。

モノコア

コアが空気を含まないよう、モノフィラメントがコアとなっています。ナイロンや伸びが少ない素材が使われており、素早く沈めたいシンキングラインに使われます。

ブレイデッドモノコア

気温が高い真夏や熱帯地方向けのラインに使われていて、モノフィラメントを網糸に組み上げてコアにすることでブレイデッドコアよりもハリのあるフローティングラインになります。低い温度では硬くなってしまうので、気温が低い季節や寒冷地では使えません。

コーティング

主にPVC樹脂がコーティングとして使われています。コーティングを発砲構造にすることで浮力を高めたり、反対にタングステンなどの比重の重い金属粒子を練り込むことで素早く沈めたり設計されています。

フライラインのデザイン

フライラインは飛距離とコントロールの両方を満たすため、5つのセクションに分かれています。

  • ティップ・・・リーダーと接続するための1/2〜1フィートほどのセクション。
  • フロントテーパー・・・リーダーからフライまでのターンオーバーをコントロールするためのセクション。急なテーパーほど重たいフライをターンオーバーしやすく、緩いテーパーほど丁寧なターンオーバーしやすい。
  • ベリー・・・ロッドへ荷重をかけるための重さを与えるセクション。太く短く作ればコンパクトかつ重たいフライやティップを投げやすくなり、細く長く作ればスムースなロングキャストがしやすくなる。
  • リアテーパー・・・ループの大きさや飛行をコントロールするためのセクション。急なテーパーほどヘッド部をロッドから素早く出しやすく手返しがよくなり、緩いテーパーほどエネルギーをベリーへスムースに伝えやすくなり安定したう距離を生みやすい。
  • ランニング・・・必要な距離までのライン全長を確保するためのセクション。細く作れば摩擦抵抗を落とした直進性により飛距離が稼ぎやすくなり、太く作ればライン操作がしやすくなる。

様々なフライラインがデザインされていますが、キャスティングや釣りのスタイルに応じて使い分けることになります。

テーパーデザインとフルライン/シューティング

ダブルテーパー “DT"

両端にテーパーがつけてあるフライライン。ヘッド部とランニング部が一体成形されている「フルライン」であり、渓流向けフライライン やスペイラインで使われています。痛んできたら前後を巻き替えることができます。

ウェイトフォーワード “WF"

飛距離を重視した先端だけにテーパーがつけてあるフライライン。DTと同じくフルラインであり、遠心力を利用してラインスピードを上げて遠くまでシュートできるために、大きな川や湖、海で使われています。スペイキャストできるように設計されたものもあります。

シューティングテーパー “ST"

シューティングヘッドとも呼びます。WFラインのヘッド部分だけになっている物で、シューティングラインと組み合わせて使います。WFラインよりも細いシューティングラインを使うことで抵抗を減らし、さらに飛距離を伸ばすことができます。また、釣りの時にヘッド部分だけ取り換えることで異なるシンクレートを釣り分けることができます。

シューティングライン “SL"

ランニングラインとも呼ばれ、シューティングヘッドと組み合わせて使います。フライラインと同じようにPVCコーティングされている物や摩擦の少ない独自プラスチック素材でコーティングされている物はハンドリングしやすく主に止水のストリッピングの釣りで主に使います。本流では飛距離とスイングの釣りでの水切れをよくするためフラット形状のモノフィラメントをシューティングラインとして使います。

レベルライン “LV"または"LL"

フライフィッシング世界選手権から生まれてきたニンフィング「ユーロニンフ」で使われるテーパーがついていない細いフライラインです。飛距離は出ませんが一般的な太いフライラインよりも水の抵抗を受けづらいので12m以内を正確に手返し良く釣るために使います。

フローティングライン(F)とシンキングライン(S)

水に浮く「フローティングライン」と水に沈む「シンキングライン」があり、水面や水面直下を釣るドライフライやニンフの釣り、バスフィッシングや浅瀬のサイトフィッシングではフローティングラインを使います。「F」という記号で表記されます。

シンキングラインは沈む速度に合わせてタイプ1〜タイプ8(1は毎秒1インチ沈む)といった具体にクラス分けされていて「S」という記号で表記されています。毎秒4インチ=約10cm沈むラインは「Type 4」もしくは「S4」と表記されます。自分で調整して使うアングラーのためにグレイン(1グラム=約15.4グレイン)で表示されているラインもあり850グレインの場合は「850GR」と表記されます。フローティングラインではカバーできない水深をニンフで釣ったり、流れの中の深い場所にいる魚をストリーマーを送り込んで狙うスイングの釣り、ベイトを活発に追うプレデターをストリーマーで狙うストリッピングの釣りで使います。

シンクティップライン、マルチセクションライン

ウェーディングの釣りで離れた場所の深みを狙う場合、全体がシンキングのフルラインではフライラインの先端が狙った深さへ沈む前に途中にある石などにラインが引っかかってしまったり、不都合な場合があります。シンクティップラインはラインの先端部分だけがシンキングラインに設計されている2セクションのマルチセクションラインです。ツーハンドを使ったつりではさらに3つのセクションに別れたマルチセクションラインなどがあります。

3つのセクション別にシンクレートが設定された「Varivas スリーセクションシューティングヘッド」

フライラインの表記

フライラインのパッケージや商品ページには省略記号でそのラインの規格が表示してあります。

例えば渓流で使うフライライン が「DT3F」と表記されている場合は、「ダブルテーパー、3番、フローティング」を意味します。

湖で使うフライライン が「WF8S2」と表記されている場合は、「ウェイトフォーワード、8番、タイプ2」を意味します。

シングルハンド・フライロッドとフライラインの適合チャート-AFFTA

シングルハンド・フライロッドの場合、本来はオーバーヘッドキャストで使うことを想定しており、フライラインの番手は原則としてティップ部分を除くフライラインの先端30フィートの重量で計測して決まります。一般的なフライフィッシングで使うシングルハンドの場合は、番手だけを合わせておけば、適合チャートをあまり覚える必要がないと思います。

飛距離を重視したロングベリーのフライラインの場合、先端が40フィートとなっていますが、これも先端30フィートで番手は決まります。

番手ヘッド部重量(グレイン)許容範囲ヘッド部重量(グラム)
16054-663.9
28074-865.2
310094-1066.5
4120114-1267.8
5140134-1469.1
6160152-16810.4
7185177-19312.0
8210202-21813.6
9240230-25015.6
10280270-29018.1
11330318-34221.4
12380368-39224.6
13450438-46229.2
14500488-51232.4
15550538-56235.6
16600588-61238.9

ロッド指定よりも上の番手のラインを使うことを「オーバーライン」と呼び、下の番手のラインを使うことを「アンダーライン」と呼びます。同じベリーの長さのラインを比較した場合、体にとって楽に投げられるのはオーバーラインですが、わざとアンダーラインにして長いベリーを使ってロッドを曲げて遠くに飛ばすこともできます。

また、オーバーヘッドキャストのスタイルで大型のフライを投げたり深く沈めるためにシンクティップやポリリーダーなどを使う場合ですが、ライン重量に加算して考える必要がありますが、水面を使ったウォーターボーンキャストを行う場合は極端に長いティップや重たいティップを使わない限り、あまり気にする必要はありません。

ツーハンド・フライロッドとフライラインの適合

ツーハンドの場合、オーバーヘッドで投げることは一般的ではなく、どんなキャスティングスタイルで釣りをしたいかによってロッドの特性が大きく違ってきます。

スペイまたはトラディショナル

スコットランドのスペイ川に始まったロングベリーやミディアムベリーを使う伝統的なスタイルで実釣ではフルラインを使います。大きく深いDループを作ってロッドを曲げてシュートします。オーバーヘッド用に設計されていないロッドが多いので、注意が必要です。

タックルバランス、ティップから出すライン量、アンカーとスイープのタイミング、リフトからシュートのタイミング・・・全てに注意を払わないと綺麗に飛んでいかないので、覚えるまでに時間がかかるため今ではベテラン向きと言えます。

スカンジナビアン

1960年代のキャスティング競技会から生まれた、シューティングヘッドを使うスタイル。ショートベリーとも呼ばれて、現在ではロッドの長さに対して2.65-3倍の長さのショートベリーのシューティングヘッドを使い、シンクレートに合わせてヘッドとリーダーを取り替えて使います。トラディショナルほどではありませんが、「タッチ&ゴー」とも呼ばれる一つの流れでDループを作り出しロッドを曲げてシュートします。ツーハンドロッドを持つ時のアンダーハンドに力を入れて操作するので「アンダーハンド」とも呼ばれます。

スカンジナビアン向けにデザインされているロッドはオーバーヘッドキャストも念頭に入れていますので、湖や海岸付近を釣る、岸で釣ってからボートで釣るなど、どちらも併用することが多い方にはオススメです。

フライラインの特性としては、ロングテーパーに設計されていますので比較的に小さく軽いフライを丁寧にターンオーバーすることに優れています。最近は素材の進化やスカジットからの影響で太め短めの「ショートスカンジ」と呼ばれるATTAチャートよりも20-25グレイン程度軽めで設定されているものが投げやすく人気になっています。

キャスティングスタイルオーバーヘッド用シューティングヘッドショートベリー/スカンジナビアンミディアムベリー/トラディショナルロングベリー/トラディショナル・ロングベリー
ベリーの長さ30-5050-6060-7070+
計測箇所(先端からのフィート数)40556580
6番250 grain/16.2g420 grain/27.3g460 grain/29.9g600 grain / 39.0g
7番300 grain/19.5g470 grain/30.5g510 grain/33.1g650 grain/39.0g
8番360 grain/23.4g530 grain/34.4g570 grain/37.0g710 grain/46.1g
9番430 grain/27.9g600 grain/39.0g640 grain/41.6g780 grain/50.6g
10番510 grain/33.1g680 grain/44.2g720 grain/46.8g860 grain/55.8g
11番600 grain/39.0g770 grain/50.0g810 grain/52.6g950 grain/61.7g
12番700 grain/45.5g870 grain/56.5g910 grain/59.1g1,050 grain/68.2g

スカジット

1980年代にアメリカ北西部のスティールヘッド(降海型ニジマス)を釣るアングラー、エド・ワード、ジェリー・フレンチ、デック・ホーガンたちが考え出したスタイル。現在ではロッドの長さに対して1.75-2倍の長さの太くて短いスカジットボディのシューティングヘッドへ、異なるシンクレートのティップを接続して使います。3つのスタイルの中で最も投げやすく、重たいシンクティップやフライにも向いているので汎用性が広いスタイルとなっています。スペイやスカンジのようにリーダー部分を中心に同じ場所をアンカーして高い位置でロッドストップしてDループを作ってシュートするキャストと違い、「サステインド・アンカー」と呼ばれるスカジットヘッド自体を水面へ貼り付けて抵抗を最大化してスイープ、低い位置でロッドストップしてDループを作ってシュートします。

スカジット向けにデザインされているロッドは許容範囲が広く、スカンジナビアンが投げられるだけでなく、極端に重たいシンクティップを使わない限りはオーバーヘッドも可能です。

フライラインの特性としては先端が急なテーパーとなっていて、重たいフライやシンクティップをターンオーバーさせるように設計されています。サステインドアンカーでキャストするため固定位置での負荷が計測しづらくATTAのチャートではカバーされていませんが、RIOやBeulah、OPSTなど各社別に用意しているチャートを参照してください。

OPST 「コマンドヘッド」の場合

Commando Head (グレイン)ツーハンドロッドスイッチロッドシングルハンドロッドスカジットボディ長さ
15023312'
1752/33/43/412'
200344/513'
22544/55/613'
250556/713'
2755/667/813'
3005/66/7815'
32566/7815'
3506/77/8915'
37578915'
4007/88/91016'
42588/91016'
4508/99/101118'
475 8/99/101218'

シューティングヘッドとシューティングラインの適合

シューティングヘッドの後端部分とシューティングラインは直径の差が少なければ少ないほどパワー伝達がスムーズとなります。RIOからガイドラインとされている適合は下記の通りです。

  • 200-450グレインのシューティングヘッドには、直径.0024″ – .0026″
  • 450-575グレインのシューティングヘッドには、直径.0030″ – .0034″
  • 575-650グレインのシューティングヘッドには、直径.0035″- .0037″

日本ではより繊細な釣りが求められることもあり、直径.0020"以下で強度のあるシューティングラインも作られています。

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