ミセスCAのオン&オフ日誌

外資系CA /英会話講師 Vikiのブログ

外資系エアラインのブリーフィング【エピソード2】

外資系エアラインのブリーフィング【エピソード2】

 

前回、日本を出発するフライト前のブリーフィングについて書いた。

今回は、日本へ向かうフライト前のブリーフィングについてお話する。

 

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フライト当日の流れ【帰国便バージョン】

 

わたしたちが宿泊するホテルは、空港から離れた場所にある。

ホテルと空港の間を行き来する交通手段は、クルーバス。

片道20分から30分、バスに揺られる。

 

クルーバスを降りたら、まず空港セキュリティに向かう。

ここが、ひとつめの関門だ。 

制服のジャケットとハイヒールを脱ぐ。

スリッパにはき替える。

ベルトをしている場合、それも外すよう命じられる。

パソコン、タブレット端末をカバンから取り出す。

わたしはここでいつも、追い剥ぎにあったような気分になる。

 

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「ピーーーッ」

万全を期したつもりが、ポケットのなかの口紅やペン、髪飾りの金具が反応したりする。

ガタイのいい空港係員に、「ハイもう一回!」と命じられ、スゴスゴとやり直す。 

これから長ーいフライトが待っているというのに、勘弁してよ(泣)

いつぞやは、口紅の中身までマジマジとチェックされ、辟易した思い出がある。

こんなに善良な?顔をしたニッポン人のわたしが、口紅に何を仕込むというのか! 

(にいちゃん、『ミッションインポッシブル』の見すぎやで〜)

 

無事にセキュリティを通過したら、つぎはクルーベースへと向かう。

クルーベースとは、ターミナルの一角にある、乗務員専用オフィスのことである。

チェックインを済ませ、自分が乗務する便のブリーフィングルームに行く。

フライト直前の、打ち合わせが行われる部屋だ。

ドアのところに便名が書いてあって、中に入ると人数分の椅子が置いてある。

そこでは、いつものごとく握手とハグが飛び交う。

「ハーイ!」

「ハロー!」

わたしはいつも、この刹那にメインスイッチが入る。

 

夏の風物詩 アイスクリームのお話

 

夏のある日。

ブリーフィングルームに入る直前のこと。

廊下で、コックピットクルーがアイスクリームを食べているシーンに遭遇した。

夏になると、よく見かける光景だ。

体格がよく威厳のある男性が、アイスをペロペロしているさまは、とてもかわいくてほほえましい。

今年も夏がはじまったと、しみじみ実感する瞬間である。

 

トーキョー行きのブリーフィングが行われる部屋へと向かう。

ドアを開ける。

すでに着席していたメンバー全員が、そろってアイスクリームをなめている。 

パーサーも、スチュワードも、みんな。

なんのためらいもなく、ペロペロしている。

もちろん、制服着用だ。

日本の航空会社では、ぜったいにありえないシチュエーションだと思う。

毎年のことながら、軽くカルチャーショックを受ける。 

 

「キミのぶんもあるよ」

そうだ。

そうだった。

この会社では、盛夏にアイスクリームがふるまわれるのだ。

気候が良い、夏のヨーロッパ。

バケーションも取らずに頑張っている社員へのご褒美として、アイスクリームがふるまわれるのだ。 

スーツケース置き場で見た、巨大な棺桶みたいなのは、冷凍庫だったらしい。

 

「あ、うん、ありがと」

このなかで、日本人はたったひとり。

圧倒的マイノリティのわたし。 

とまどいを共有するすべもなく、すすめられるがままアイスにかじりつく。

動揺するわたしを見て、みんなが笑う。

ガリガリ君のような、ソーダ味のシャーベット。

中にはクリーミーなチョコレートが入っている。

「どんなコンボよ」と心の中でつぶやきながら、とりあえずシャリシャリと食べる。

 

アイスクリームを片手に

 

そのとき!

ドアが開いて、別のクルーが乱入してきた。

隣の部屋で、ブリーフィングをしていたメンバーだ。 

パーサー以下、全員が電車のように連なっている。

前の人の肩に片手をのせて、もう片方の手にはアイスクリームを持っている。 

わたしの知らない歌を口ずさみながら、テーブルの周りを踊りながら練り歩く。

トーキョー行きのクルー全員とハイタッチを済ませると、その勢いのまま出ていった。

 

「What’s that?(いまの、なに?)」 

わけがわからないわたし。

ただ、その雰囲気が面白くて面白くて、爆笑してしまったけど。

聞けば、長年スチュワードとして頑張ってきたクルーが昇進し、はじめてパーサーとしてシカゴへ発つとのこと。 

仲間を想い合う気持ちが、ほんとうに強い人たち。

さっきのパレード?は、出陣の儀式だったのだ。

 

ユーモアを交えながら仕事を楽しむ姿勢には、いつも刺激を受ける。

とかくピリピリしがちな現場において、救われることが多い。

すべてのフライトは、ブリーフィングからはじまる。 

ブリーフィングの空気感が、その後のフライトを左右すると言ってもいい。

顔を合わせた瞬間から、われわれはチームだ。

ブリーフィングは、チームビルディングのたいせつな時間なのである。

 

 

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