いろいろトンネルの向こう側に。

各国、ロックダウンの延長や緩和のニュースで吹き荒れた週末、みなさまいかがお過ごしですか?私は初日まであと2週間を切りまして、週末も自宅で宿題を持ち帰ってお仕事しています。

 

とは言っても、平日の8時からフル稼働とは違い、週末の朝はゆっくり朝食を作ってルームメイトとおしゃべりしたり、夕方に友達とお散歩に行ったりする余裕はあります。もう、底冷えに寒いので、マスクはむしろ防寒具くらいの気持ちです。ゆったりと過ごしているのに、それでも気がつけば寝てしまった!な毎日でもあります。

 

現在ロックダウン中のウィーンですが、春のような厳重さはありません。主に若年層がもうコロナを恐れなくなってしまっていて、ティーンの集団を街ではよく見かけます。自由とは何かということを考えると、ロックダウン正義!ってわけにもいかないので、自分の倫理を自分は信じるしか無い状況です。それでも不特定多数の人が自宅で集まるパーティーなどが基本的には出来なくなったからか、単純に人が集まる場所が閉鎖されてクラスター化しにくくなったのか、感染者数は下り始めました。ただお亡くなりになる方の数はロックダウン以降上昇していたので、おそらくクリスマス直前まで何かしらの規制は続くのかなと思います。12月には希望者が受けられる全国民を対象とした抗体検査テストも実施されます。私の勝手な予想では、ワクチン接種前にいろいろと現状を知る必要があるんだろうなと思っています。PCRテスト、脳天直撃、鼻がもげそうっていうトラウマがあるのですが、抗体検査はどうなんでしょうか。受けた方がいいだろうけど。

 

予防接種の日程も優先順位の高い人から順次1月から4月まで実施されるようです。変異株が出なければ、今の新型コロナのパンデミックは少し収束の兆しが見えてきたような雰囲気が流れています。どうかそうなりますように。

 

私の関わっているプロダクションは少し日程を後ろ倒しにして、初日のオンライン配信が決まりました。オンライン配信は劇場で劇場言語で制作している人間にとって、あまり嬉しいニュースでは無いのが大方の感想です。映像作品のように、演者の顔をズームにされて、勝手に切り取る手法は、ブラックボックス全体の瞬間、瞬間を作っている側からすると、全然真意が伝わらない撮影方法です。にもかかわらず、なぜか定点では撮影してもらえないもどかしさ。いいんだよ、客席に座ってそこから回してくれればさ…まぁ、難しいですかね、特に大きいプロダクションや劇場だと。パフォーマンスアートでは割とこの考えは共有されていて、定点撮影が主流なのになぁ。パフォーミングアートではなかなか、共有されませんね…。映像だと、歌声の地響きみたいな振動を身体で感じられないので、やっぱり舞台の映像化はアーカイブ以上でも以下でも無いんだなぁとは思います。最初からデジタル化を見越した作品じゃ無いですからね。

 

そんなわけで、中止にならなかったものの、新たな不安の種が芽生えてはいます。時短勤務でなかなかライティングリハーサルが出来ずに、来週から早朝と深夜に組み込まれることに。追いつかない上に、さらにフィルムチームも加わるのでてんやわんやです。

 

でもそれもあと2週間。

この1年半、このインターンの時間の中で、期待していなかったことを沢山学ぶことが出来たような気がしています。期待していなかったこと、というのは、つまりこの今見ている世界が、新しいもので、きちんと、ここでしか出来ない経験をしているということだと思っています。思えばこの3年、ここでの経験は、きちんと新しいのです。

それは同時に、私にも新しい視点が、視座が根付いたということの裏付けでもあります。どれだけ観察出来るか、というのは芸術を自ら作る人間にとって、一番大切なことだと思っています。観察し続け、学び続けたことが、無意識化で、むしろ制作過程の半分以上を占めていると、今回教授と仕事をしてみて、はっきりと理解できました。付け焼き刃なその場のリサーチや方法論は半分しか満たしてくれず、それまでに自分のコップにどれだけ自分で継ぎ足してこれたか。そこにその時の半分が注ぎ込まれて、ちゃんとコップを溢れさせることが出来るのかどうか。そして、その都度またコップの空の感覚を覚えて、乾きと潤いを繰り返せるかどうか。

 

一つのものを見続けても、飽きなくなったのは、自分の引き出しが増えたことだと信じて喜びたいと思いつつ、飽きもせずに何度もなんどもリハーサルを見つめています。

 

余談なのですが(むしろ全部余談なんですが)インターンの最後にして、劇場でのリハーサルが始まり、技術部の大男さんたちのwienerischが全然わかりません。訛りが。そして君はhochdeutschを喋ってるね〜だめだよwienerischを喋らなきゃ〜はっはっは〜と笑われています。みなさんちょっとたまに酒臭い、いい人です。笑。でもwienerischはドイツ語をはるかに上回る難しさだと真剣な顔で訴えときました。いや、もちろんどっちもドイツ語だけど。ただ普段自分が聞いているオーストリアンジャーマンはむしろほぼ標準ドイツ語なんだと気づかされました。奥が深いぜ、オーストリアンジャーマン。

 

もう12月だなんて信じられないなぁ。

大変な1年ですが、残り1ヶ月、みなさまどうぞ無事にお過ごしください!