象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

鏡張りの部屋、その22〜中年女サビオレの失踪と〜

2019年06月21日 05時02分08秒 | 鏡張りの部屋

 先日は、突如”サイコパス”のバックナンバーにアクセが集中し、少しびっくりですが。多分、最近の殺傷事件の影響かもですかね。全てを脳の異常と決めつける訳にもいかないんですが、過去の凶悪な独裁者も、戦争を捏造した大統領らも、今の様にMRIで脳を調べたら、99%の確率で脳みその異常でしょうな。


 さてと、6/4以来の”鏡張りの部屋”ですが。前回は、ダーレムの愛人のレオニーが何者かに刺され、重症を負うもカミーユの必死の応急処置とDr.ドレフュスの見事な執刀で何とか命だけは取り止めた。

 
 手術を終えたドレフュスは、鮮血に染まったエプロンを脱ぎ、マーロウに囁いた。

少しでも処置が遅れたら
助からない所でした
でも何故、こんな辺鄙な所に運んだんですか?
刺されたのは、ロス郊外だと聞いてますが
何とか助かったから良かった様なものだが


 マーロウは、少し間をおいて答えた。

実は、ここに運んだのは私です
レオニーさんが命を狙われてる
という情報は、既に耳に入ってました
以来ずっとレオニーさんを付けてたんです
ある組織との接点を探る為にもね
しかし、奴らもバカじゃない
ある匿名の顧客から電話があって
彼女が刺された事を知りました
彼女を発見した時は、既に重体でした
勿論、犯人は見当も付きません
組織の連中か?彼女の客か?単なる強盗か?
秘書に連絡をとり、ここに運ばせたんです
そして、貴方に偶然出会ったんです
本当にラッキーでした
見つからなかったら、彼女は死んでたし、
証言も得られなかったでしょう
つまり、今回の探索は全てパーとなる所だった


 Dr.ドレフュスは、深くため息をつく。そして、ゆっくりとタバコを蒸す。

貴方は何時も危険な綱渡りをしておられる
私に一言電話下されば、
もっと安全な所で処置できたのに
本当にギリギリの所でした
でも貴方が追ってる組織は
巨大過ぎて、危険過ぎやしませんか?
貴方が心配で堪らんのです。


 マーロウもタバコを深く蒸した。

心配には及びません
貴方に頼ったら、貴方に危険が降りかかる
ロスは麻薬犯罪の宝庫です
娯楽用大麻が合法化になった今
貴方だって、安泰だとは言い切れんのです
とにかく今日は、ドレフュスさん
貴方に感謝です


 ドレフュスは少し微笑んだ。

貴方も、昔とちっとも変りませんね
自分の事はそっちのけで
人の心配ばかりで
結婚して落ち着いたらどうです?
犯罪の少ない地域でゆっくりと暮らすとか?
浮気調査なんか楽勝でしょうに


 マーロウは思わず大声で笑った。

私が、、、ですか?
全く舐められたもんだ
でも、浮気調査の方がずっと危険だし
全てにおいて高く付く
それに女は、自分の為なら全てに嘘を付く
守秘義務なんて
守ってる方がアホらしいですからね
ご心配ご無用です
こう見えても、女には不自由してません
仕事が途切れる事もない
顧客は皆金持ちばかりで、報酬も悪くない
覆面捜査官とも繋ってるから
危険な情報は、全てお見通しなんですよ
ただ今回は、発見が少し遅れただけです
早速、秘書を叱っときますよ


 Dr.ドレフュスはマーロウから報酬をもらうと、老支配人とカミーユにお礼を言った。

1ヶ月分の薬と置いときます
痛がるようでしたら、鎮静剤を飲ませて下さい
マリファナは絶対ダメですよ
身体の抵抗と治癒力を弱めますから
傷口が完全に塞がるまでは
絶対に無理させないで下さい
暴れるようでしたら、睡眠薬を飲ませて下さい
それに何かあったら、ここに電話下さい
今日は色々とお世話になりました


 老支配人とカミーユは深々と頭を下げ、ドレフュス医師を見送った。 

ああ今日は疲れたわ
でも助かってよかった
一時はどうなる事やらと
本当は気が気でなかったの
あの人の愛人でなかったら、匙を投げてた所よ
でもレオニーさんが生き伸びてくれたお陰で
探偵さんのお仕事も、一気に捗りそうね
そう思わない?マーロウさん?


 探偵は若い女に柔らかな視線を向ける。

そんな事ないさ
単なる強盗殺人未遂の線なら
何も証拠は得られない、全て降り出し
組織ぐるみの犯罪なら、
こんな荒行事はしないだろう
全ては彼女が回復してからだ
ああこんな時間か、事務所に帰らないとな


 若い女は探偵に耳寄せする。

あの中年女は調べなくていいの?
サビオレよ、あの女絶対に怪しいって!
支配人を刺した後、
レオニーの殺傷未遂が起きたのよ
タイミング的にも出来過ぎだと思わない?
絶対あの女よ、何か企んでる筈だわ!
 

 マーロウは鼻で笑った。

お嬢さん、推測と主観で判断しちゃ困る
はっきり言うが、彼女はホシじゃない
支配人と何があったか知らないが
刺し傷を見る限り、致命傷とは程遠い
マリファナかなんかで、陶酔してたんだろう
ま、一応事情徴収はするがね
彼女の潔白を証明する為にもだ
お嬢さんには悪いが、今回はハズレだな
では、今日はここで


 マーロウは老支配人にも軽く挨拶をすると、そのまま去っていった。


 老支配人はカミーユの肩を叩いた。

今日は色々とあったが、ホント無事でよかった
ホテルを経営してると、色んな事があるのよ
探偵とも長い付き合いだが、
アイツは何時も、冷静に物事に対処する
奴の兄がいた頃は
ごく単純で、無鉄砲な熱血漢だったが
兄が死んでからは、凄く大人になったな
最初の一歩が、確実で精確だから
大事には至らないんじゃよ
全く奴には頭が下がるの
それにお前もの、ほんと今日はよくやった
カミーユ!お前も成長したの
旦那の死は無駄じゃなかったの


 カミーユは老支配人から離れ、ベッドに横たわるレオニーを病室に連れていく為に、男を呼んだ。

ダーレム、少しは手伝ってよ
寝てる場合じゃないわ、やる事は沢山あるのよ
今晩は私が付き添うから
明日は一日中アナタが付き添ってね


 男は、レオニーを地下の病室に運んだ。酸素マスク越しの彼女は深く熟睡したままだった。まるで死んでるかの様に静かだった。もしこのまま意識が回復しなかったらと思うと、気が気でいられなくなった。

カミーユ!オレも今晩は付き合うよ
何か怖い気がするんだ
もしこのまま、、、なんて事があったら?
瀕死の重症を負った彼女に
背を向けて寝るなんて事は、俺には出来ない!


 若い女は微笑んだ。男は少しホッとした。病室内には和やかな空気が充填していた。


 その時、老支配人が慌てて病室内に入ってきた。少し狼狽した様子だ。

アンタ達、あのサビオレを見なかったかの?
最近、少しオカシイと思ってたがの
精神的に混乱してる所があったから
医療用の大麻を処方してやったんだが
悪い方向に出ちゃったかの?
ホント、アンタらは知らんのか?


 カミーユは素っ気なく言い返す。

言ったでしょ!私の勘が的中よ!
ヤバくなったんで、
探偵がいない間に逃げたんだわ
マーロウさんも甘いのよ、あの女には
苦労して育ったからって、
悪いのはゴマンといるわ
支配人も白状したら?
サビオレに刺されたって、正直に
そしたら警察が来て、何もかも解決よ
何も心配する事はないわ
それに、レオニーさんが全てを白状して、
全て解決よ!順風満帆だわ
そう思わない?ダーレム!
 
 男は少し怒りを覚えた。

少し言い過ぎだぜ!
アンタは100%サビオレを疑ってるが
彼女が支配人を刺したっていう
証拠は何処にもない
別に、彼女に肩入れする訳じゃないが
あれは悪い女じゃない
人を平気で殺せるオンナじゃない
カミーユ!アンタには感謝してるが
やっぱり言い過ぎだ!


 老支配人が慌てて口を挟む。

二人共どうか揉めんでくれ!
脇腹の傷は浅かったからの
誰が刺したとしても、
殺意は全くなかったんじゃ、
それにサビオレも、色々と事情があって
ツラい毎日じゃったんだよ
ああ、それと探偵さんにも電話したがの
女の携帯を逆探知できるというてたから
行き先は、調べれば分かると言ってたの
とにかく今夜はレオニーさんを宜しく頼む
あんまり事を荒立てんでくれの


 老支配人は病室を後にした。

 女は少し興奮が収まったようだった。

結局は、探偵も薄々疑ってんじゃないの、
瀕死の重症を負った貴方を救ったのは誰?
あの時はもっと深刻だったのよ
それに比べたら、今回は順調過ぎるほど
嗚呼、あの女さえいなければ
このホテルは安全なのに
支配人も、厄介な女を連れ込んだものだわ
男って皆、ああいう女には弱いのよね
目の前に、こんな素敵な女神がいるのに
全く世の男たちには、見る目がないわ!


 男は頭を傾げつつ、女を見て笑った。
 そしてベッドに深く横たわるレオニーを見た。確かに一時よりも血色はずっと良さそうだ。体中に躍動感が漲りつつある様な感じがしないでもない。ほんとカミーユの言う通りだった。

 男は心の中で、カミーユに深く感謝した。目の前の若い女が、異常なまでに逞しく眩しく見えた。

 

ようこそ、
我がホテルカリフォルニアへ

🎵ここは素敵な場所でしょ🎵
🎵ここは素敵な人達でしょ🎵



2 コメント

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死にませんね (hitman)
2019-06-21 06:27:16
中々、死者が出ませんね。

もうそろそろ殺人事件が起きると待ってますが。
東野圭吾だったらすでに何人か死んでるんですが。
中年女のサビオレが一番最初に死ぬのかなと予想してたんですが。でもこのままだと彼女が死に一番近いですか。

何か展開を邪魔するみたいで悪いんですが。もうそろそろ展開が動いても良さげです。
hitmanさんへ (lemonwater2017)
2019-06-21 12:14:32
そ〜うなんです。
人を殺してまで物語を書こうとは思わないんですと言いたい所ですが。

出来るだけ”殺人”を使わずに、何処まで推理小説が書けるのか?試してる段階ですかね。

マーロウの顔も潰したくないので、ここら辺は難しい所ですが。

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