象が転んだ

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真夜中の訪問者その16、多重夢って見ますか?〜もう一人の自分を映し出す鏡〜

2019年04月26日 02時48分58秒 | 真夜中の訪問者

 私は一度だけ三重夢を経験した事がある。二重夢はそこそこあるが。三重夢はこの時が最初で最後だった。もう20年ほど前の事だから少し記憶は曖昧かもだが、何とか思い出してみよう。
 因みに、多重夢を見るのは思ってる以上に疲れが溜ってるケースが多く、自分を客観的に見る必要があるので、そういった”夢の中で夢を見る”という事が起こるとされる。


発端はサービスエリアにて

 GWに入る前の事だった。営業先の熊本から福岡へ帰る途中だったかな。支店長を横に乗せ、北九州の実家まで送る途中の事だった。
 夜は再び熊本で呑む予定だったから、熊本から高速に乗り、ノンストップで一気にというつもりだったが。支店長が気を利かせて、途中のサービスエリアで食事をしようという。 
 私も久しぶりの帰郷だから、早く帰途に着き、少なくとも夕方には友人を誘う予定を立て、予め電話もしておいた。とにかく早く帰りたかった。

 サービスエリアで軽い食事をとった。あまり食い過ぎると運転中に眠くなるからだ。しかし、巨体の支店長は食う量も半端ない。一日5度の食事なんてへっちゃらな人だ。
 当時の私は支店長の運転手のような役割だったから、この大食感と食事を付き合うのが仕事みたいなもんだった。お陰で食が極端に細くなり、一日2食の癖が未だに離れない。

 さあ出発しようとエンジンを掛けた瞬間、支店長は眠くなったと言い、運転を辞めさせ一緒に寝るように誘う。
 私としては少なくとも夕方には柳川の自宅に帰りたかった。一気に北九州まで直行したかったが、支店長の言う事は絶対なのだ。
 下手に口答えすれば、”誰のお陰で今の自分があると思ってるんだ”と言い返される。全く戦後になっても、図太い封建主義は根強く息づいてるのだ。


最初の夢

 仕方なく寝る事にした。不思議とすぐに眠りについた。30分程で目が覚めたが、何だか雰囲気が違う。横を見ると支店長はイビキを掻いて寝てるが、場所は何処かで見た様な田舎の小さなレストランの駐車場だ。
 ”あれサービスエリアで休憩したんじゃなかったっけ”
 不思議に思ってると、支店長が目を覚ました。すると、もう一度食事を取ると言う。
 ”えええー、もう一度ですか?”
 私は丁重に断り、車の中で待つ事にした。
 もう頭の中はパニックだった。ここは何処?って状態だ。しかし車は自分のに違いはなかった。何だか微妙に変だと思ってる内に、再び眠りについた(2度目の眠り)。


2度目の夢

 同じ様に、30分ほどして再び起きた。しかし今度は、場所は同じ小さなレストランの駐車場だったが、シチュエーションが違った。
 支店長は横にいないし、何かこれも変だなと思ってると、一緒に飲みに行く筈の友人が車に乗り込んできた。
 まだ早いし、もう少し休憩してから出発しようと言う。
 ”おいおいまた寝るのか?”
 ここまで来ると、何処までが現実で何処までが夢かの区別が全く付かない。

 でも何かがおかしい。俺は寝る事を拒んだ。”すぐに出発しよう、早く着いたら熊本城でも見学しよう”と友人を説得し、アクセルを踏んだ。
 しかし、3度眠くなった。恐ろしく眠くなった。友人は笑った。言わんこっちゃない。


3度目の夢

 これまた近くの公園の駐車場に車を泊め直ぐに眠りについた(3度目)。これまた30分した位か、直ぐに目が覚めた。今度は俺が助手席に乗り、友人が運転してた。場所は私の自宅近くだった。えええーつ。
 30分ほどすると、これまた友人が眠たくなったから休憩しようという。そして再び何処かで見た様な小さなレストランの駐車場で休憩した。俺は運転を変わり、そのまま熊本に直行したかった。ここで寝ればもう取り返しのつかない事になる。俺は夢から戻れないのか。


4度目の夢(最初の覚醒)

 しかし、ここにても急速に睡魔が襲う。仕方なく、眠りにつく(4度目)。これまた30分程で目が覚めた。起きた時は自分がハンドルを握って運転していた。助手席には同じ友人がイビキを掻き爆睡していた。周りは暗くなりかけ、もうすぐ熊本市街地に入る所だった。
 もうこれは絶対におかしいと気付いた。友人に詳しく聞こうと思ったが、熟睡状態で起こす訳にもいかない。しばらく運転すると、突然強烈な睡魔が襲った。近くのコンビニに車を泊め、5度目の眠りに付く。


5度目の夢(2度目の覚醒)

 これまた30分程で目が覚めた。横に友人がいると思いきや、横にいたのは支店長だった。えええー、どういう事よ。

 支店長は起きていた。
 ”まだ眠りたかったらずっと寝ててもいいよ、家族には遅くなると電話したから”と言う。
 俺は考えた。絶対に何かがおかしいと。今のこの状況が現実なら、高速道路のサービスエリアの筈だ。しかしここは、とあるレストランの駐車場だ。そうだ最初の夢で出てきたレストランだ。つまり、夢の中の世界をぐるぐると永遠に周り続けてるのだ。


3重夢の仕組み

 ここで私は気付いた。これも夢だ、それも3重夢だったのだ。夢の中で頭を整理するなんて信じられない話だが。
 最初の夢がこのレストランの駐車場で休憩してる夢で、2番目の夢が友人と同じレストランで休憩してる夢。そして3つ目が、自宅近くを友人が俺を乗せて運転してる夢。
 その後、この3つ目の夢から1つの夢が覚め、俺は熊本の市街地の近くを運転していた。これが2つ目の夢で、それが覚めたら今の最初の夢に戻ったという訳だ。

 という事は、このレストランも横にいる支店長も偽物っていう事だ。よーし、少しばかりからかってみようかなと思ったら、今まで起きてた筈の支店長が爆睡してるではないか。
 そこで革靴で思い切り引っ叩いてみようと思った矢先、これまた強烈な6度目の睡魔が襲う。もうここまで来ると、この多重夢を存分に楽しんでやろうという気にもなる。


ようやく三重夢が冷め、現実の世界へ

 6度目の眠りに付くと、直ぐに目が覚めた。勿論高速道路のサービスエリアだった。横にいる支店長は起きていた。ここにてようやく現実の世界に目覚めたのだ。
 ”よく寝てたな、でもまだ時間があるからゆっくり寝てていいぞ”という。

 時計を見た。僅かに1時間ほどしか経ってなかった。何だか3日ほど寝た様な気がした。アクセルを全開にして、一気に北九州へ向かった。インターチェンジを降り、支店長の実家へ向う。寄っていけやと誘われるも当然のごとく断り、一気に家路へ向かった。

 夢と同じ様に、夕方には何とか自宅についた。シャワーを浴び、友人に電話し、今から迎えに来ると再び電話する。
 友人を乗せ、30分ほど運転するとこれまた睡魔が襲った。
 ”また三重夢かよ?”友人は笑った。
 友人と運転を交代し、7度目の爆睡に入った。  
 目が覚めた。そこに支店長はいなかった。俺はホッとした。もう周りは真っ暗だった。熊本の市街地のネオンがやけに眩しかった。
 起きた私の顔を見て、友人は再び笑った。
 ”支店長じゃなくて残念だったな”

 俺も笑い転げた。
 ”支店長だったら、おもしろかったのに” 


多重夢の知らせ?

 結局、夢占いにある様に、自分を客観的に見つめ直す事はなかった。それに疲れてる筈もなかった。
 ただ、今から思うと人生に追い詰められてた時期でもあった。俺はすぐにこの仕事をやめた。お世話になった支店長はその後、行方不明に?なったとか。
 やはり、虫の知らせではなく、多重夢の知らせだったのか。

 しかし1度に5度も夢を見ると、夢から覚める事なく現実に戻れないのではっていう恐怖に襲われる。この時以来、夢を見るのが怖くなったのも確かである。


多重夢は自分を映し出す鏡?

 夢と現実、どちらが本当の自分を描いてんだろうか。三重夢の中に出てきた夢はどれもが、現実そのものであった。後で気付いたが、全て実在するレストランであり、サービスエリアであり、コンビニだった。
 数学的に言えば、現実の中で閉じた夢。自在に行き来できるから、自己同型という事になろうか。まるで”ガロア体”を”多様体”に拡張した様な多重夢だった。多様体に関しては”リーマンその10”参照です。
 1つ1つの夢が螺旋階段で繋がり、眠る度に夢の次元を重ねていく。オイラーもリーマンも多重夢を見る事で、素数とゼータの夢に魘されてたんだろうか。

 もし、夢が現実を僅かに超越した存在だとすれば、その夢を地図の様に表現できれば、”リーマン面”の様に、数とか量とかで夢を測る事ができれば、夢は現実の世界に一歩近づくのか。

 結局、多重夢とは高次元の夢であり、現実により近い夢かもしれない。そして、もう一人の自分をより精確に映し出す、異次元の鏡かもしれない。 



4 コメント

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多重債務じゃなくてよかったですね (びこ)
2019-04-26 06:08:53
というのは冗談ですが、転象さんもよほど疲れていたのですね。

しかし、読ませてもらって、逆に現実って何だろう?と考えさせられました。

また私達が現在生きているネットの世界も、ある意味、多重夢なのかもしれないとも。

転象さんの夢は、予知夢みたいな面もありそうですね。

転象さんがお世話になった支店長氏は、どうなったのでしょうね。行方不明だから、その後がわかるはずもないのでしょうが、気になります。

またその夢の続きを見て、支店長氏のその後を見てきてください。

今回の記事は、小説にしてもいいようなモチーフですね。
夢の知らせ (tomas )
2019-04-26 06:26:30
夢って不思議ですよ。
夢はそんなん見るほうじゃないんだけど、怖い夢って小さい頃よく見たんだ。

そん時思ったのが、もうひとつの現実。正夢ではないけど、何かが起こる前兆。
良いことか悪いことかは判らないけど、何かが起きる。

勿論、起きないのが理想だけど。それに夢って霊感が強い人はよく見るとか。

でも夢と現実が逆だったら、こんなに怖いことはない。

ビコさんへ (lemonwater2017)
2019-04-26 10:15:30
その支店長ですが、既に離婚してたらしく、本社の部長代理の自宅に居候してたらしんです。北九州の実家というのもウソだったんですかね。ヤッパリかって感じでした。

その上、私が支店長に30万程のお金を貸してた事が明るみになり、その責任が暗に新人の私に降り掛かったんです。

それでその仕事をやめたんですが。その後、その支店長が行方不明になった事を暗に部長代理から聞きました。ホントは”借りた金返せ”って言いたかったんですが、関係を持ちたくなかったんでそのままです。

支店長に関しては色んな噂が立ってましたが、悪い人じゃなかった。娘さんと山を登るのが楽しみで、この多重夢を見た時も娘さん自慢をしてました。ただお金に関してはね。

結局、私が唯一経験したこの多重夢は、”この仕事から去りなさい”という知らせだったんですね。もしそのままだったら支店長のエサにされ、それこそ多重債務に陥ってたかもです。
tomasさんへ (lemonwater2017)
2019-04-26 10:19:02
お久しぶりです。

正夢を見た事はないんですが、虫の知らせ的な夢は無くはないですかね。

ただこの多重夢は極々普通の夢で、何ら危機感は感じませんでした。しかしその後大変な事になったんですが。

もう少し危険を感じさせるような夢であったらとも思います。

これ以上書くと湿っぽくなるので、ここまでにしときます。

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