プロレス統計

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プロレスにおける”格”の数値化試行:新日本プロレス編

プロレスにおいて頻繁に登場する概念であるものの実態がはっきりせず、人によってまるでとらえ方が異なるもの(というのは山のようにあるんですが、その中の一つ)に”格”というものがあります。
つい先日のプロレス系のまとめサイトで”格”についての掲示板での議論のまとめが挙がったりしていましたが、ものの見事に共通見解に至っていないのは面白くすらあります。

そもそも”格”ってなんぞや?どういう意図でこの概念にこの名前が付けられたのか?を調べるべく漢字字体の意味を調べてみると、いくつかの用法の一つに「おもむき。ようす。ねうち。身分。」というのがありました*1
「おもむき」とか「ようす」っていうのは外から感じられる情報で、「ねうち」や「身分」というのはそのものの価値を意味するものなのでてんで異なる要素が内包されているようですが、
これってすなわち「なんらかの外部情報を元に決められたランキング」のようなものというイメージが”格”にはあるんではないでしょうか?

そういうふうに表現すると気になってくるのは「どんな情報を元に作られるか」という話。
勿論ファンの間で共通見解が得られているようなものではないんでしょうけど、逆に「どういう情報でつくれば”格”のランキングとして説得力があるのか?」も気になるところ。
というわけでそんな謎の深い”格”について探るため、今回は新日本プロレスにおいていくつかの数値からプロレス統計式”格”ランキングを作ります。

 

集計したもの

今回用いたデータベースとしては新日本プロレス公式サイトに載っている試合結果データ(2007年5月~2020年6月まで)*2を集計してを使用しています。

”格”を決める数値9案

まず初めに2019年のみのデータから”格”のランキングを作成するべく、上述のまとめでの議論でよく”格”の判断基準として出ていた数値や私が”格”を判断する時に念頭に置きそうな数値をピックアップしました。
ピックアップした数値は以下の9つ、

  • champ:一年間に王者でいた期間数
    (例=王者としてスタートし、ベルト奪われ取り戻すと2となる)
  • single_champ:↑のシングル王座版
  • iwgp:↑のIWGPヘビー級版
  • single_title:シングル王座のタイトルマッチ数(勝ち負け問わず)
  • single_title_WIN:シングル王座タイトルマッチでの勝利数
  • main:メインイベント登場数
  • main_WIN:メインイベントでの自力での勝利(ピンフォール奪取)数
  • main_title:メインイベントでのタイトルマッチ回数(勝敗問わず)
  • main_title_WIN:メインイベントでのタイトルマッチ勝利数

とりあえず集計で算出しやすいものだけ選んでいますが、まとめの議論だと「テレビの出演数」とかも出ていてそれもできれば集計して見たいんですけどなかなか難しそうなので断念。
格数値単独によるランキングの詳細は末尾に載せますが、格数値によるランキングのまとめがこちら。

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結構どの数値を基準にするかで結果がバラついたんですが、どのランキングが自分内の”格”ランキングに近いかでおおよそどの数値を重要視しているのかが分かるかもしれませんね。
とはいえ個人的に言えば「どれもイメージと違う」という感じもします。
それはまぁここで考量していない数値を”格”の算出に使っているから、というのもあるんでしょうけど、他にもいろんな数値を複合的に用いて判断しているから、ということもありそう。

プロレス統計式”格”ランキング(仮)

各数値を使った複合的判断、となるとその重みづけや計算方法などの吟味も必要だとは思うんですが、今回は(仮)ということで単純に各ランキングでの順位の逆数(2位なら1/2、5位なら1/5)を各ランキングでの得点とし、9つのランキングでの得点の合計を”格”値とし、この”格”値によるランキングを出してみます。
(同立なら同順位として計算する)

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その結果がこちらで、結構イメージに近づいたような心地はします(個人的に)
結果としてはオカダが6.66でトップですがメインイベント関連の4部門含む6部門1位なのでそれだけで6点を獲得しているのでそりゃあ総合でもトップになるわな、と。
この数値に対して現実での活躍を思い出すと2019年はNJC優勝→MSGでタイトル奪取→G1最終公式戦まで決勝進出の可能性を残す→翌年ドームまでベルト防衛…ときっちり1年間メインストリームを維持していた感もある。

ある種驚きなのは2,3位にジェイとオスプレイの外国人選手2名が入っている点ですが、
ジェイはドーム~MSGまで王者でしたしその後IC王者にもなった、
オスプレイはBOSJでの活躍からG1でも活躍していますがそれらの合間にNEVERやIWGPジュニア王者にもなっているわけで、活躍度合いでいうとやはりすごかった。

この二人に続くのが棚橋と内藤ですけど両者ともに年始ドームでベルト獲得してはいるんですけどその後が中々続いていない印象。
棚橋の場合はジェイに奪われて以降中々浮上の機会がなかったイメージで、内藤もIC戦線で飯伏に取って取られてを繰り返していた感。
そういう意味で足踏みを強いられた年だったのかな、と。

こうしてみるとリング上のデータのみを用いているのでどうしても”格”というよりは「活躍度合い」を示している感じもするので計算手法や用いるデータの修正は要検討という感じです。

”格”値推移から見る時代の移り変わり

でもまぁせっかくなのでどう計算手法で2007年~2020年までの”格”値の推移を調べてみたんですが、そこで興味深いものがあったのでここでご紹介します。

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上図は2007~2020年までのオカダ、棚橋、中邑、内藤の”格”値の推移を示したものです(この4人がトップ4というわけではない)。
この4人と言えば新日本の生え抜き(というかヤングライオン経験者)でトップに立った選手たちという感じですが、この14年間を見てもその”格”値は結構上下し入れ替わりがあったようです。

で、”格”値について「どの選手がもっとも高かったか?」で色分けしてみたのが下の図 

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2007~2012 棚橋期

2007~2012年にかけては、時折中邑が上回る時期もあるものの、おおよそ棚橋が”格”値で上を行く棚橋期となっています。
厳密に言えば2007~2010までが棚橋&中邑両立期で、1年ごとに格値が入れ替わるように交互にトップに立っていた時期、と言えるでしょう。
しかし2011年以降は特に棚橋の格値が大きく伸び、内藤の格値が低くなることになります。
すなわちこの時期こそ棚橋が「新日本のエース」として確立し、トップとしての全盛を誇ったタイミングと言えるでしょう。

2012年というとオカダの凱旋があった年なのですが、オカダの格値は棚橋と中邑の間で、中邑への影響はさておきオカダの登場によって逆に棚橋の格を押し上げることになったという面はあるかもしれません。

2013~2015 中邑期

そして2013~2015年は中邑の格が大きく伸び、2013年こそオカダが最も高くなるものの、2014年以降は4人の中でトップをとる、いわば中邑期となっています。
この格値の大きな伸びは「イヤァオ!」という決めセリフに代表される「クネクネ」なキャラクターがファンに受け入れられ、また2013年ドームでの桜庭戦などに依る「中邑の試合に間違いなし」的空気感によるカリスマ化によるものでしょう。
思えば2011~2012年はこのキャラクターへ移行するにあたっての準備期間という感じもあり、一時的に”格”を落として変貌を果たしていたという部分はあるかもしれません。

2016~2019 オカダ期

2016~2019年はまさにオカダ期と呼ぶべき時代が到来しています。
理由の一つとしては中邑の離脱というのもあったんですが、それとタイミングを同じくして棚橋の格値も大きく値を落としているのが印象的でもあります。
2012年にオカダという新たなライバルの登場で格値が挙がったのと表裏一体で、中邑というライバルの喪失で棚橋の格値に影響があった、んでしょうか(2016年は棚橋自身ケガも多かったのでそのせいという気もしますが)

そういった2大巨頭の失速によってトップとして立たざるを得なかったのがオカダさんですが、この時期というと内藤さんのLIJとしての台頭が記憶に新しいところ。
実際に2015年まで低迷していた格値が2016年に大きく跳ね上がっていますがオカダには及ばず、翌年以降は依然として高い(棚橋と同程度の)格値をいじするものの、トップには至らない期間が続いていたようです。
この時期の内藤ファンは「跳ねたのに及ばない」感にイライラしていたような覚えもあります。
それと同時に内藤ファンに限らずオカダのIWGP政権に対する忌避感みたいなものが多く見られた記憶がありますが、それもこの高すぎる格値のせいだったのかもしれません。

2020~? 内藤期(仮)

そして2020年はまだ半分しか終わっていませんがそれでも格値大きな変動があり、ついに内藤が格値でオカダを超え、内藤期(仮)を到来させています。
はたしてこれが本物かどうかは、今年の試合がすべて終わった後にまた解析してみたいところです。

まとめ

  • プロレス統計式”格”値はリング上での活躍を反映していそう
  • 一部トップ選手の隆盛を格値で再現可能

 

所感雑感

というわけで久々のよくわからない指数算出コーナーでした、その昔勝利指数とか考案してた*3のを思い出しましたね。
果たしてどこまで説得力があるものなのかは謎ですが、こういった数値であれば一応集計してある国内興行のデータからも算出できるので新日本に限らず他の団体でもやってみたいところです。
勿論今度はもうすこしブラッシュアップしてからですが。

今回やってみて思ったのはこういう”格”っていうのは特徴量みたいなものなのでディープラーニングの手法で「格というのは実はこういう数値で決まっている」ということが調べられる感じもするんですが、如何せんまで知識が足りないのだ。
何時かは使ってみたいんですがね

きょうはこれまで、それでは

おまけ:各順位数値

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負けない度を入れても良かった・・・