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年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『小さな会社の稼ぐ技術』栢野克己

「うちは何でもやってるのに、なぜうまくいかないのか?」

「それは何でもやっているからです(笑)」

 

だいぶしばらくぶりの更新になってしまいました。

読書を辞めたわけではないんです。

実は以前予告していた通り、吉川英治『新・平家物語』を読んでいる真っ最中。

 

吉川英治は版権がすでに切れているため、『宮本武蔵』や『私本太平記』、『三国志』などは青空文庫で無料で読めるのですが、『新・平家物語』は現在作業中につき未収録。

その代わり、アマゾンで検索すると全16巻の号本版がわずか99円で販売されていたりします。

僕が手を出してしまったのはまさにこれ。

過去には前述の『三国志』などの長編作品をスマホで読んだ経験もあり、いつでもどこでも気軽に読める電子版は超・長編作品を読むのに最適!なんて思っていたんですが、これがまた以外に難航しています。

 

読んではいるんですが、吉川作品独特の読みにくさもあってなかなか進まない。

さらに『新・平家物語』は平清盛源義経源頼朝等々、その時々で主人公や視点が目まぐるしく変わる非常に読みにくい作品なんですね。

 

さらに電子版の場合、読書量が目で測りにくいというのもネックで、実本なら「今日はこの巻の最後まで読んじゃおう!」と意気込んだりするんですが、それがない。なので毎日ほんの少し読んだだけでも、なんとなく読書した気になってしまう。結果として、遅々として進んでいないというのが実情です。

 

断っておきますが、決してつまらないわけではなくて、非常に面白く読書を楽しんでいるのは間違いないんですが。

 

現在まででようやく全体40%を超えたところ。

伊豆に幽閉されていた頼朝が遂に打倒平家の旗を上げ、清盛の死ももう間もなく。義経とも近々合流するかなーといったところ。やがて主人公格の1人として加わるらしい木曽義仲もまだ登場せず、先は長いですねー。

 

中小企業本

前置きが長くなりましたが、『新・平家物語』の間に割り込むようにして読んだのが本書『小さな会社の稼ぐ技術』。

以前から中小零細企業の事業承継についての本を読んできましたが、その流れの一つと言ってよいでしょう。

 

中小零細企業の経営が行き詰っている多くの要因って業種に限らず似通っていて、その一つが「下請け依存」が挙げられます。

大半の企業が大手から仕事を貰う下請けとして仕事をしているのですが、その依存度が半分どころかほぼ100%近い会社も多いのです。

ところがバブルが弾け、リーマンショックも挟んだ現在、儲かってる業界ってないですよね……。

 

建設業界・製造業界・食品業界、どこも苦しい、苦しいと言っているような業界ばかりです。

建設で言えば人口減少に加え、ライフスタイルの変化もあって新築着工件数は減る一方。

製造業にしたって生産量が右肩上がりで増えているのはごく一握りと言えるでしょう。

食品業界だって似たようなもの。

 

中小・零細企業が大手の下請けとして何十年の蜜月関係を築いてきたとしても、肝心要の大手自体の生産量が減ってしまっているのですから、当然下請けの仕事は減るばかり。

さらに原料高だの増税だの働き方改革だので出ていくお金を増えるばかり。

 

それでもいつかは昔のように良い時代がやってくるのかもしれないと、頭上を吹き荒れる厳しい風に身を縮こめるようにして耐え忍んでいる中小・零細企業が沢山あるのです。

 

でも、それじゃあダメです。

 

時代は変わりました。再び建築業界が活性化するなんて、南海トラフ級の巨大災害で国土の大半が平地に戻らない限り無理な話でしょう。

製造業も、他の業界だって同じです。

これからますます人口減少は加速化しますからね。

 

待っているだけじゃダメなんです。

 

じゃあどうしたら良いか。

 

その答えの一つが本書にあります。

 

下請け脱却

一言で言うとこういう事ですね。

下請けからの脱却。

 

コバンザメのように、寄生虫のように元請け企業から仕事が降ってくるのを待つのではなく、自分たちが直接顧客から仕事を得られるような会社に変わる事。

今風の言葉で言えばBtoBからBtoC。

元請けが10000円で受けた仕事を8000円で下請けに下し、実際の工事費が5000円だとすれば下請けの利益は3000円になりますが、下請けが顧客から直接10000円で受注すれば、利益は5000円に増えるわけです。

 

かといって、今まで大手建設会社の下請けとして新築住宅の屋根工事だけを請け負っていた零細企業が、いきなり元請けとして新築住宅の仕事を受注する工務店に成り代わる事はできません。

例えできたとしても、資本力・技術力その他の局面で劣勢が続き、程なく倒産の憂き目に遭うのは間違いないでしょう。

 

“弱者”である零細企業が“強者”と同じ土俵で争っても勝負にすらなり得ません。

 

じゃあ、一体どんな戦い方をすればいいのか……というのが本書の内容。

 

弱者の戦略として、著者は下記四つの項目を挙げています。

  1. 強者や大手と違うことをやる「差別化」
  2. 総合1位ではなく「小さな1位」
  3. あれこれではなく「一点集中」
  4. 顧客とじかに接近戦

さらに、戦略を実現しやすい商品分野として

  • 手作り、少量生産、オーダーメイド
  • 市場が小さい、ニッチ
  • 衰退産業
  • イメージが悪い、怪しい

といった大手やエリートがばかにする分野を勧めています。

 

前述の屋根屋さんを例に挙げれば、専門技術を生かした屋根の修繕……それも大手リフォーム会社が猛威を振るう総合リフォームではなく、屋根に特化したプチリフォームに絞って営業をする、という事です。

 

一歩踏み込んでそれを「雨漏り専門」にまで絞り込めば、大手建設会社やリフォーム会社は雨漏りの工事だけなんてやりたがらないから自社の独壇場になり得ます。

 

さらに重要なのは「地域を絞り込む」事。

移動時間は全て無駄。移動時間を減らす事は利益率の向上に直結します。

加えて地域の中に特化して営業する事で口コミが広がり、「雨漏り=〇〇社」といったイメージが浸透させる事で営業コストの削減も期待できます。

 

ランチェスター戦略

本書の土台となっているのはランチェスター戦略。

元々は戦争時に弱小軍隊が巨大な軍隊に立ち向かうためにはどうすればよいか、といった技術をまとめた戦略だそうですが、現在では中小企業事業者の間で黒字経営を目指す上でのバイブルとしてもてはやされているそうです。

 

本書では上に挙げたような戦略を、具体例を挙げながらかなり詳細にわかりやすく紹介してくれています。

 

個人的には非常に為になる一冊でした。

やっぱりビジネス書も読まなきゃダメですね。読む本にもよるのでしょうが、小説からは得られないものが間違いなくあります。

特に本書は、ビジネスマンにはオススメの一冊です。

 

「弱者の戦略」と言いますが、ビジネスにおいて「自社は強者です」と言えるのは限られていますからね。圧倒的に弱者であるケースの方が多いはずです。

そんな場合に、一体どんな戦略をとるべきなのか。

自社が勝ち得る局面とは。

 

とにかく得られるものの多い良書でした。

本書の前に出版された『小さな会社☆儲けのルール』という作品もあるそうなので、そちらも近々読んでみたいと思います。

 

 
 
 
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#小さな会社の稼ぐ技術 #柏野克己 読了 めちゃくちゃ久しぶりの更新になってしまいました。 でも今回読んだのは大当たり。 #ランチェスター戦略 という弱者の兵法をベースに、中小零細企業が経営改善を目指すための考え方や進め方を具体例を挙げながらわかりやすくまとめた本です。 差別化、小さな1位、一点集中、接近戦 悩める経営者さんたちにぜひとも一読して欲しい一冊です。 ちなみに現在吉川英治の新・平家物語を読んでいる最中です。更新がないのもそのため。 まだ半分も読めてません。 先は長いなー。 #本が好き #活字中毒 #本がある暮らし #本のある生活 #読了 #どくしょ #読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい . . ※ブログ更新しました。プロフィールのリンクよりご確認ください。

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