社会保険労務士酒井嘉孝ブログ

東京都武蔵野市で社労士事務所を開業している酒井嘉孝のブログです。
(ブログの内容は書かれた時点のものとご理解ください)

新型コロナウイルス感染拡大による労災・通勤災害について

2020年03月12日 14時21分49秒 | 社会保険・労働保険
特定社会保険労務士の酒井嘉孝です。

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が続いています。報道にもある通りイベントは開催自粛、中止・延期の措置が取られています。また、大手のテーマパークでは休業の延長、航空機の減便、北海道では鉄道路線の減便も行われるとのことで経済活動への影響ははかり知れません。

接客を行う業種ではテレワークというわけにもいかず、通常通り営業している商店や会社もあります。
不特定多数の人と接する接客業では新型コロナウイルスに感染した方と接触することも考えられます。

では、その新型コロナウイルスに感染した方と接触した従業員が、新型コロナウイルスを起因とする感染症に罹患してしまった場合、労災(=業務災害)となるのでしょうか。
業務災害とは業務に起因するケガを負う、疾病に罹患する、という災害に見舞われた場合に給付されるものですので、接客している際に罹患した、同僚からうつされた、という判断となれば労災保険からの給付があるものと考えます。
ただ、実務上は病気をだれからうつされたかという判断は難しいものです。これを書いている3月12日現在ではこの新型コロナウイルスの感染ルートを追いかけているようなので、ほかの可能性がないと判断されれば現段階ではほかの感染症よりは労災と判断される可能性はあるかもしれません。

新型コロナウイルスに関しての通勤災害の判断はもっと難しくなります。
テレワーク、時差通勤が広がっていて混雑は幾分緩和されているとはいえ、通勤電車では人と人が近い距離にあり感染のリスクはあります。
労災保険法上での「通勤による疾病」は通勤による負傷に起因する疾病その他通勤に起因することの明らかな疾病と規定されていますので、だれからうつされたということが明らかで通勤電車以外で接触がなければ通勤災害と判断されることも考えられます。
通勤に起因することの明らかな疾病というのは判断は難しいですが、過去には地下鉄サリン事件やタンクローリー横転事故でガスが発生し、そのガスを吸い込んだ通勤中の人が通勤災害と認定された例があります。

この新型コロナウイルス(COVID-19)の感染症に関しては政府からも新たな施策が日々出ている状況でもあるので柔軟な対応がとられることも考えられます。
しばらくは厚生労働省からの発表等を注視したいと思います。


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