Arigatonahonto
4泊5日の二人暮らしが終わった。
Arigatonahonto
Wasuren
タッチパネルが苦手な彼からの、最後のメッセージ。
日本語入力モードに戻せなかったのだろう。
慣れない手つきで、私が貸したタブレットを操作して送信する様子を想像すると、目頭が熱くなった。
1えんかりた
つぎあうときかえす
心
置い
ていく
ありがとう
謎のメッセージを残して、彼は出ていった。
自宅に帰りポストを開けると、合鍵が入っていた。
「この合鍵で鍵を閉めて、ポストに入れてから帰ってね」
約束通りで、ひとまずほっとする。
ひんやりとした部屋には、私の息遣いしか響かない。
彼はもう居ない。
4泊5日の夢は、もう終わったのだと知る。
コンロに鍋が置いてあった。
よく見ると、タグや説明書などが付いていて、買ったばかりのものだと気付いた。
彼が買ったのだ。
もうダメやん、この鍋
フライパンも、もう少し大きい方がええで
美味い!全部美味い
……「心」ってこれの事か。
涙が溢れた。
机の上に何故か置きっぱなしだった50円玉が、49円になっていた。
よく分からないが、「1円借りた」の意味も分かった。
次に会う口実、のつもりなのだろうか。
他にも、部屋中に爪痕を残して彼は帰っていった。
おれが
ついてんで
じし
ん
もって
勇気なんて、いつも貰っています。
パラパラとカレンダーをめくると、2人が出会った日に丸印がついていた。