最初で最後(その12)
最後に、本当に身勝手で、最低なお願いをしても、いいですか?
頭を抱きしめられたまま、なんだろう、と思った。
今まで散々振ったけど、やっぱりお付き合いしてください、とかかな?
付き合えないのは変わらないけど、私のことが好きになってきました、とかかな?
色んなことを想像して、勝手にドキドキしていた。
4月になったら、もう私に会いにこの地に来ないでください
それまで頭を抱きしめられていたけれど、その言葉に私は後ずさりした。
彼の方を見つめても、彼は何も答えなかった。
「残酷です」
私の第一声は、それだった。
「知れなかったことを知るために、会いに行くんです。
作れなかったものを作るために、会いに行くんです。
私ちゃんと聞いたじゃないですか。
『まだ、○○さんのことを好きでいていいんですか?』
って。
それを許してくれたのに、会いに行くのは許さないなんて、残酷です」
見せたことのない涙を、ついに見せてしまう。