月に一度は溺れたい

不真面目に真面目なブログです。感情豊かにセックスしたい。

最初で最後(その13・最終回)

彼は私の顔を両手で包み込んで、しっかりと目を見つめて私に言った。

○○さんなら、どこに行っても大丈夫。
私なんかよりよっぽど、○○さんはこの仕事に向いてます。だから、頑張って……

私は泣いたけれど、思ったより早く泣きやんだ。
3回も告白をした。
その度に振られてきた。
家まで行った。
身体も重ねた。
それでも彼は、私を選ばない。
気持ちの固さと、彼のずるさを知った。

……帰りましょうか

彼が身支度を始めた。
私はもう着替えていたので、彼の準備が終わるのを、ぼーっとしながら待つだけだった。
玄関を出る前に、彼を呼んで、抱きしめてもらった。

一緒に過ごせて、良かったです

彼がそう言ってくれたのに、打ちひしがれた私は、
「『会いに来るな』と言えたからですか?」
と、皮肉っぽく言うことしかできなかった。
彼は困ったように笑って、

うーん……違います

とだけ言った。
理由は話してくれなかった。
素直に「何故ですか?」と聞けばよかったと、後悔した。


車の中では、あまり会話も弾まなかった。
「ありがとうございます。
色々至れり尽くせりで、お邪魔しました。
……それじゃあ、また明日」
降りる間際、彼が少し話してくれた。

私がいかに身勝手な人間か、分かりましたか?

「……はい。今日初めて分かりました」

ふふ。じゃあ、身勝手ついでに2つお話しますね。
まず1つ目。私、昨日が初めてでした。

「えっ!?」
あはは、と彼が笑う。
童貞を、奪ってしまっていたらしい。

いやぁー、初めてで緊張して勃たないってこと、あるんですねぇ笑

「え、いや、、初めての相手が私なんかですみません……」

そして2つ目

ここで、車の前を近隣の住人が横切ったのを横目で見た。
早く話を切り上げようとしているのを感じた。

人との別れで涙したのも、初めてです。
……それじゃあ、また明日

夢のような一日が、終わりを告げた。




これで終わりです。
長々とお付き合い頂き、ありがとうございました。