【まとめ】筋収縮について。筋肉の勉強を楽にするためのまとめ。
筋の知識は運動器の障害を考えるときに必ず必要になります。
理学療法士、柔道整復師、鍼灸師ともに養成校ではかなりの時間をかけて学習します。
臨床ではその基礎知識をもとにさらに掘り下げていかなければいけません。
今回は復習を兼ねて、筋の基礎知識についてまとめます。
- 筋(筋肉)とは
- 骨格筋
- 筋の収縮を理解するために筋原線維を理解する
- 筋収縮はどうやって起きるの?
- 筋収縮はどうやって調整してるの?
- 筋収縮から生まれる「筋張力」
- 筋膜とは
- 神経膜も似た構造をしている
- まとめ
筋(筋肉)とは
「筋」は何でできているんでしょうか。
筋自体は主に筋細胞(筋線維)でできています。そこに血管や神経が入り筋収縮を可能にしています。
筋には骨格筋、平滑筋、心筋の三種類があります。
筋といわれると骨格筋が一番イメージしやすいのではないでしょうか。力こぶを作る上腕二頭筋や一般に腹筋といわれる腹直筋など、身体の外側から確認できる筋はほぼすべて骨格筋です。
骨格が作るフレームにこの骨格筋や脂肪のボリュームが加わって、人間の体格を形成しています。
では平滑筋とはなんでしょうか。これは主に内蔵や血管の筋肉をいいます。
内臓も収縮して機能を果たしており、この収縮は内臓の中に筋で構成される部分があるため可能となっています。
見た目には見えませんが、内臓も筋肉で動いています。
ただし骨格筋と違い、不随意といって自分の意志で動かすことはできません。
心筋は心臓固有の筋肉です。心臓は一定のリズムで収縮する必要があり、特殊な構造をしています。そのため心筋といわれる専用の筋肉があります。
これも不随意の筋であり、自分の意志で動かすことはできません。
骨格筋はいわゆる運動神経が繋がり、大脳皮質からの指令で自分の思うように収縮可能です。脳から脊髄を錐体路や錐体外路とわれる伝導路が通り、そこから末梢神経である運動神経にバトンタッチして筋肉まで配線がつながっています。
この流れのいずれかがやられると麻痺という現象がおこり、筋肉が動かせなくなったり過剰に緊張してしまったりしてコントロールできなくなってしまいます。
では平滑筋や心筋はというと、これをコントロールする神経というのが自律神経です。
自律神経は興奮時の交感神経、安静時の副交感神経として一般にも知られていますが、このような作用だけではなく、重要な臓器のコントロールを担っています。
骨格筋、平滑筋、心筋はそれぞれ役割の違いはありますが、いずれも筋細胞により形成される「筋」の仲間です。
今回は主に運動に関わる骨格筋についてまとめていきます。
骨格筋
骨格筋は筋細胞の集合により構成されています。細胞がたくさんあるということは、核もたくさんあるので多核の組織となります。
また、骨格筋は細分化していくごとに名称が変わっていきます。
骨格筋は筋束といわれる筋線維の束が集合して出来ています。この筋線維ひとつひとつが筋細胞であり、その中に筋原線維といわれるより小さいものがはいっています。
一般的に細胞の中には細胞内小器官(ミトコンドリア、核、粗面・滑面小胞体、リソソームなど)がありますが、筋細胞ではやや構造が異なります。
まず細胞内で細胞内小器官以外の部分を細胞質といいますが、筋では筋形質といいます。その中に同様に細胞内小器官があるのですが、筋の場合はそのほとんどを筋原線維が埋めています。
また滑面小胞体は筋小胞体という名称に変わり、筋原線維の周辺を取り囲んでいます。
そこに横行小管という管がつながり細胞の表面までつながっています。
この管を伝って活動電位が伝わり、筋の動きを可能としますが、それは後ほどまとめます。
通常細胞の表面は細胞膜が覆っていますが、筋では筋鞘という名称に変わります。
まとめると、大まかな流れとしては、骨格筋→筋束→筋線維(筋細胞)です。
その筋線維(筋細胞)の構成要素として、筋鞘・筋形質・筋原線維・筋小胞体・横行小管・核・ミトコンドリアなどがあります。
そして、筋の理解で重要になってくるのはこの中の「筋原線維」です。
ここに筋節(サルコメア)というミクロのメカニズムがあり、そこにアクチン・ミオシンという部分があります。これらによって、ミクロのレベルで収縮が起こります。
(※正式にはアクチンフィラメント、ミオシンフィラメント)
この最小の収縮が積み重なり、目に見える程の筋収縮になります。
なのでこの筋原線維の理解が、筋収縮の理解となるため、学習の要点となります。
筋の収縮を理解するために筋原線維を理解する
先ほど書いたように、筋収縮がどうやって起こるのか知るためには、筋原線維を理解する必要があります。
筋は縮んで短くなり、関節を動かすということは体感でみんな知っています。
しかし、医療職としては、この縮むという筋の変形がどのようにして起こるのか、そのメカニズムも知っておかないといけません。
筋収縮は筋線維(筋細胞)の内部に存在する、「筋原線維」のレベルで起こります。
この筋原線維の中に「アクチン」フィラメント、「ミオシン」フィラメントというものがあって、この2つを主な登場人物として理解していく必要があります。
アクチンは細胞内小器官の一つである細胞骨格というものに相当し、細胞や核の形を維持するフレームのようなものです。これがミオシンの上を滑って筋収縮が起きます。
アクチンがミオシンの上を滑るのは、ミオシンの頭部といわれる部分が、アクチンをたぐり寄せるようにしておきます。
しかし、この動きは通常ロックされていて、神経による電気刺激がないと解除されません。なので運動神経のコントロールがあって初めて筋収縮が起こせることになります。
筋収縮はどうやって起きるの?
筋肉の収縮は、「電気刺激」によって起こります。
この電気刺激とは、神経を伝達する「活動電位」です。
それが「神経筋接合部」といわれる神経が筋肉に連結している部分に伝わり、先ほどの筋原線維の構造を動かします。
神経筋接合部とは神経の末端の「神経終末」と筋肉の「運動終板」のことで、ここで神経と筋肉が結合します。
神経と神経の接合はシナプスといいますが、神経と筋の接合を神経筋接合部と表現します。
ここではアセチルコリンが伝達物質となります。このアセチルコリンの作用で、活動電位が発生します。
その活動電位が最初に発生する場所は、「筋鞘」という筋線維を包む膜(細胞膜に相当する)です。ここから「横行小管(T菅)」を通って筋内部に活動電位が流れていきます。
そして「筋小胞体」という袋に伝わります。ここにはCa²⁺が蓄えられていて、筋小胞体に活動電位が伝わるとCa²⁺を放出します。
このCa²⁺がトロポニンというアクチンを束縛しているものに結合します。
このトロポニンによる束縛を解除して初めてアクチンがミオシン上を滑走することができます。
これにより筋収縮を起こすことができることになります。
この筋鞘での活動電位発生(興奮)から筋の収縮までの流れを「興奮収縮連関」といい、非常に重要です。
筋収縮はどうやって調整してるの?
筋収縮は電気刺激が引き金となって起こることがわかりました。
しかし、電気刺激が一瞬伝わっただけではピクッと筋が動くだけです。
先ほどの内容でピクッと動くメカニズムは分かりました。しかし、実際は関節をグーっとゆっくり曲げたり、瞬間的に曲げたり止めたりといろいろ調節して動きって成り立ちますよね。
ピクッじゃ、日常の動きができません。
このピクッは実は「単収縮」という名前がついています。
これがピクピクピク!!!とピクッ1回が終わりきるまでに重なると、筋肉のグーっと持続した収縮になります。(擬音語ばっかりですが笑)
この重なった収縮を「強縮」といいます。
我々が日常でする動きに必要な、グーっという筋の持続的な収縮はこの強縮になります。
またこの一回のピクッが終わる前にもう一回ピクッと重なることを「加重」といいます。
単収縮が加重により積み重なって持続的な収縮や瞬間的な収縮を可能にしているんですね。
そしてその引き金になる電気刺激の量を調節しているのが、運動神経です。
筋収縮から生まれる「筋張力」
筋肉が縮もうとする力を「筋張力」といいます。
先ほどの強縮のイメージが強くなりやすいですが、じつはこの筋張力にはもう一つあります。
じつは筋は何もしてなくても、ある程度の張りが常にあります。正常な筋は弛緩性麻痺のようなダラーンとした状態ではなく、常にある程度の筋緊張があります。
この何もしていない状態の筋の長さを「静止長」といます。
この静止長から筋を伸張すると(ストレッチした状態)、何もしていなくても元々筋に緊張があるのでゴムみたいに戻ろうとする力が生まれます。
この力を「静止張力」と言います。
それに対して強縮で生まれる力を「活動張力」といいます。
筋張力にはこの2つがあり、この2つを足した物を「全張力」といいます。
まとめると筋の収縮から生まれる力には、強縮による活動張力と伸ばされたら元に戻ろうとする静止張力があります。
筋膜とは
筋膜とは骨格筋を包んでいる膜です。
筋膜といえば単純に筋肉を外側から包んでいるイメージをすると思います。
しかし、じつは筋だけでなく、筋束や筋線維のレベルでそれぞれパックされています。
なので筋膜ってじつは筋の内部にもある構造なんです。
筋線維を覆うのは、「筋内膜」
筋束を覆うのは、「筋周膜」
骨格筋そのものを覆うのは、「筋外膜(筋上膜)」
筋線維は筋細胞のことです。筋細胞は外側を筋鞘が覆っています。
そのため筋鞘のすぐ外側を覆うのが筋内膜ということになります。
神経膜も似た構造をしている
神経線維とは神経細胞を指す言葉です。神経線維とはニューロンのことですが、神経細胞体と樹状突起、軸索、神経終末を含みます。
これも神経膜で同じように覆われているのですが、じつは筋膜と似た名称がついています。
神経線維を覆う「神経内膜」
神経束を覆う「神経周膜」
末梢神経そのものを覆う「神経外膜(神経上膜)」
筋膜と一緒に名称を覚えてしまうと覚えやすいかもしれません。
まとめ
今回は筋や筋収縮についてまとめてみました。
わかりやすくするためにやや乱暴にまとめてしまいましたので、詳細は成書で調べて頂ければ幸いです。
筋の基礎知識は、臨床の様々な疑問を理解する上でとても役に立ちます。