リハログ

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はじめまして。yusukeです。柔道整復師/鍼灸師/理学療法士 3つの資格を取得。各種養成校の学生向けに「リハログ」を運営しています。30代一児の父として頑張っています。

ミッドスタンス(mid stance:Mst)立脚中期まとめ【歩行分析】

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ミッドスタンスとは

ミッドスタンス(以下Mst)とは、ローディングレスポンス(以下LR)の後に起こり、膝関節・股関節が鉛直配列に近づき身体重心が最も上方に持ち上がる時期です。

LRで足底前面が地面に接し、下腿が前方に傾いてくるのを制御することが重要な時期となり、傾きが最大になり踵が浮くまでを言います。

この足関節の制御をankle rocker機能と言い、Mstにおいて重要なイベントとなります。

 

Mstは立脚期の前半と後半の中間の場面になるため、「立脚中期」と言われます。

 

 

アンクルロッカー(ankle rocker)機能とは

アンクルロッカーとは回転中心が足関節にある時をいい、Mstで起こります。

 

具体的にはヒールロッカーの後に起こる下腿三頭筋によって制御される足関節背屈のことです。

 

床反力の作用線はこの相で足関節の前方へ移動していき、それにより足関節背屈方向のモーメントが発生し増加していきます。

この際、軸は足関節で、足底が床に接した時点から足関節は回転中心となります。(Mstで足全体は床に固定されます。)

 

筋の活動としてはヒラメ筋が下腿の前方への動きを安定させ、腓腹筋とともに遠心性収縮によって足の制御された背屈を生じさせます。

下腿三頭筋の機能はMstでの立脚安定に欠かせません。

(『観察による歩行分析』訳者月城慶一・山本澄子・江原義弘・盆子原秀三 医学書院2005年)

 

 

ミッドスタンスの役割

ミッドスタンスでは(以下Mst)ではLRで足底前面が地面に接地したあと、「①下腿の前傾を制御」し「②安定した立脚を維持」しつつ「③身体重心を上方に持ち上げる」という3つの役割があります。

 

この役割を達成することにより、下腿の前傾(ankle rocker機能)の前半では前方への推進力が加速していき、後半ではその加速を制御しブレーキをかけていくことで、スムーズな前方への推進が可能となります。

 

Mst時の下肢のアライメントは、股関節屈曲0°、膝関節屈曲5°、足関節背屈5°、距骨下関節外反位(LRより減少)です。

 

LRとの違いは膝関節・股関節が伸展位になっていくことと、下腿が前傾していく(ankle rocker機能)ため足関節背屈位になることです。

 

IC・LRでの股関節屈曲20°は、Mstで伸展され0°となります。またLRで衝撃吸収のために屈曲した膝関節はほぼ伸展位(屈曲5°)となります。

 

歩行のそれぞれの場面は、実は連続しています。

そのためそれぞれの場面でのアライメントには理由があります。

 

なので場面ごとに記憶するのではなく、ストーリーで理解していく必要があります。

 

なぜMstではこの肢位をとるのか

【股関節】

まず股関節0°中間位について考えていきます。

IC・LRで20°屈曲位で維持されていたのが、この時期に伸展され0°中間位となります。

同時に股関節と膝関節はほぼ鉛直に配列され、身体重心が上方に持ち上がります。

 

このとき股関節周囲の筋活動は必要なく、反対側の振り出しの勢いと股関節の床反力ベクトルが股関節の後方を通ることによる伸展モーメントにより受動的に伸展します。

 

さらに矢状面では中間位ですが、前額面では骨盤の4°の側方傾斜が起こります。すなわち股関節が4°内転します。

これを制御するのは、外転筋群であり、この外転筋力が足りないとトレンデレンブルグ徴候が起こります。

また、外転筋群と同様に重要なのが大内転筋です。

この大内転筋は骨盤を膝関節上に配列する作用があり、殿筋群により骨盤の側方安定化が図られている時に、膝関節の位置を制御します。

 

このように股関節では矢状面と前額面の両方で重要な働きがあります。Mstでは矢状面では受動的な伸展が起こり身体重心を上方に持ち上げつつ、前額面では荷重が乗ってくるために外側に動揺する骨盤を制御する必要があります。

 

【膝関節】

膝関節はこの時期に屈曲5°とほぼ伸展位になります。

LRで屈曲して衝撃吸収に働いた膝関節は、股関節と同様に反対側の振り出しの勢いと股関節の床反力ベクトルが膝関節の前方を通ることによる伸展モーメントにより受動的に伸展します。

ただしMstの前半では大腿四頭筋により膝関節を安定させる必要があり、床反力ベクトルが膝関節の前方を通った時点で大腿四頭筋の活動は停止します。

 

【足関節】

足関節はこの時期に5°背屈位となります。

これはLRで足底全面が地面に接地した後、下腿がさらに前傾してくるためです。

そのためLRでの5°底屈は、Mstで5°背屈となります。これをankle rockerといいます。

これにより前方への勢いは維持されます。

 

ただし、この前傾が行き過ぎないように制御も必要となります。

そこで重要になるのが下腿三頭筋の遠心性収縮です。この制御により下腿とその上の大腿の前方加速は制御され安定した、膝関節伸展が可能となります。

 

【距骨下関節】

距骨下関節はこの時期に外反を減少させます。

LRで外反位となり下腿を内旋させて膝関節を安定させていましたが、身体重心の外側への移動と、下腿三頭筋の強い収縮で内反方向のモーメントが発生し外反を減少させます

 

まとめ

Mstでは下腿の前傾を制御し安定した立脚を維持することと、身体重心を上方に持ち上げることが重要となります。

 

股関節中間位は反対側の振り出しと股関節伸展モーメントにより受動的に起こります。

前額面では外転筋群と大内転筋により骨盤の外側移動の制動と、膝関節の安定がなされ荷重が乗ってくる下肢を制御し安定した立脚を可能にします。

膝関節5°屈曲位はほぼ伸展位であり、反対側の振り出しと膝関節伸展モーメントにより受動的に起こります。ただし前半では大腿四頭筋による膝関節安定化が必要になります。

足関節5°背屈位はLRでの5°底屈位から下腿が前傾した結果であり、下腿三頭筋の制御が必須になります。これにより下腿・大腿の受動的伸展を制御し安定した立脚が可能となります。これがいわゆるankle rocker機能であり、前方への推進力を適切にコントロールするメカニズムです。

 

重要なMstの機能をこの機会にぜひ整理してみてください。

 

【参考文献】

1)キルステン・ゲッツ=ノイマン(著),月城慶一,他(翻訳):観察による歩行分析.医学書院,2008.

2)石井慎一郎:動作分析 臨床活用講座 バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践,メジカルビュー社,2016.