【理学療法】回復期病院での基本動作評価と病棟ADL設定のポイント!
回復期病棟に入棟される患者さんの状態は千差万別です。
それこそ歩行がスイスイできる人から寝たきりの人まで様々です。
このような回復期病棟においてセラピストに求められるのは、「現状の能力の把握」とそれに基づいた「ADLの設定」です。
誰に求められるかといえば、主に医師・看護師です。また、患者様やご家族に説明する場面もあるかもしれません。
他職種との連携の際に、この部分で意見できなければセラピストの役割を果たせていないと言われても仕方ありません。
また患者様やご家族にしっかり説明できなければ信頼関係が築きにくくなります。
しかし、このADLの設定が非常に難しい部分でもあります。
今回はリハ職として臨床で求められるADLの設定についてポイントをまとめてみます。
※ADL設定については病院ごとに違いがあり、あくまで一例であることに注意して下さい。
- まず現状を評価する
- まず座位と移乗を評価してみる
- 起居動作を評価する
- 排泄コントロールを見ておく
- 実際に動作をみる
- 大まかな病棟ADLまとめ
- FIMの内容を理解する
- 移動能力を評価する
- できない動作の問題点を考える
- 他職種に相談する
- まとめ
まず現状を評価する
回復期病院あるいは病棟に入院・入棟時、最初の介入では評価を実施して病棟ADLの設定を行う場面があります。
ADLの評価?と思うかもしれませんがまず最初に評価するのは基本動作能力です。
寝返り動作、起き上がり動作、起立動作、座位といった起居動作の評価に始まり、移乗動作、立位、歩行とその能力を把握していきます。
最初の内はこれらを予め羅列しておき、自立レベル・介助レベル・見守りレベルの三つを当てはめていきます。
その上でADLを想起していきます。
まず座位と移乗を評価してみる
慣れない内はADLを漠然と想起するのは難しいです。
そこでおすすめなのは座位保持ができるのか、移乗できるのかの二点に絞って見てみることです。
なぜなら「座位」と「移乗」はADL上ポイントになるからです。
ADLといえば食事・更衣・整容・トイレ・入浴のselfcare5項目と移動を主に見ていく事になります。
FIMを見ればわかるのですが、これらの項目が含まれているだけではなく、移乗は詳細に「ベッド・椅子・車椅子」「トイレ」「浴槽・シャワー」とそれぞれの移乗に点数付けされるようになっています。
これは「移乗能力」がトイレや入浴、そして日中のベッドからの移乗の際に重要なポイントとなってくるからです。
そして座位保持は、これらの場面で当然できていなければ目的を遂行できません。
「トイレ」で用を足すにも、「入浴」時に身体を洗うにも座位保持が必要になります。
それどころか、「食事」でも椅子や車椅子で食べれるかどうかの判断ポイントになってきます。
座位保持ができなければ、食事はベッド上ギャッジアップとなってしまいます。
トイレもオムツになり、入浴もストレッチャー浴や機械浴といった寝たままのものになってしまいます。
つまり、座位保持と移乗ができるだけで生活範囲はずいぶん広がります。
ここをまず評価してみるとわかりやすいかもしれません。
起居動作を評価する
次に見ておくべきなのは、起居動作です。
これらはベッド上での生活のどこに介助が必要なのか、他職種に伝えるために重要です。
寝返りがうてなければ、ベッド上で体動がないわけですから褥瘡リスクが高まったりします。そのため定期的に体動を介助したりポジショニングする必要がでてきます。
起き上がりも、全介助で起こせば病院生活上問題は無いですが、他の基本動作獲得につながる貴重な運動の機会なので、できるだけ自分でやってもらうためのポイントを病棟スタッフに伝えておく必要があります。
例えばギャッジアップすれば可能であったり、少しの工夫でできる場合もよくあります。
排泄コントロールを見ておく
FIMでも排泄コントロールは個別に点数づけされていますが、尿意・便意は非常に重要なポイントになります。
これで自宅に帰れるかどうかが決まるケースもあるくらいです。
多くは認知面の問題などによりトイレに行きたいと自分でわからない場合があります。
こうなると当然、失禁や排便してしまう可能性が高まります。
じつは排泄コントロールの状況により決める病棟ADLのポイントがありここがけっこう重要です。
尿意・便意があって移動能力が自立していれば、そのままトイレ自立です。
次に尿意・便意があって移動能力が介助レベルならナースコール対応となります。
ナースコールで介助者を呼んでもらえば、失禁せずに日常生活を送れるわけです。
しかし、尿意・便意が無いかもしくはムラがある場合は、最悪オムツとなります。
もしくは時間誘導によってコントロールできる場合もあります。
このように、尿意・便意の有無によって介助の必要性がずいぶん変わってしまいます。
FIMではこれらに個別に点数付けしているのですが、改めて本当によくできているなと感じます。
しかし尿意・便意の有無はその場では評価できません。
リハビリのたびに尿意・便意を催すことがないか確認していくとともに、看護師に生活状況を確認して判断していくことになります。
実際に動作をみる
ある程度、基本動作能力が把握できてADLのイメージがついたら、実際に生活場面をみてみます。
トイレまで実際にいってみたり、入浴を確認したりしてみます。
ここで一連の動作を確認して、できるのかできないのかを判断するとともに、できなければなぜできないのかを考えていきます。
この際、予め座位時間がどれくらいとれるのかを把握するなど、生活場面をイメージして準備しておくことも大切になります。
大まかな病棟ADLまとめ
これは病院によって様々ですが、一例として今まで紹介したADL設定のポイントをまとめてみます。
【トイレ動作】
①便意・尿意あり+移動自立→トイレ内動作自立→トイレ自立
②便意・尿意あり+移動自立→トイレ内動作介助(下衣更衣など)→トイレ内動作介助
③便意・尿意あり+移動介助→トイレ内動作自立→コール対応・トイレ内動作自立もしくはポータブルトイレ検討
④便意・尿意あり+移動介助→トイレ内動作介助→コール対応・トイレ内動作介助
⑤便意・尿意なし+移動介助→トイレ内動作介助→時間誘導もしくはオムツ
【入浴動作】
①座位保持・移乗自立→座位にて入浴→身体を洗う能力によって入浴動作自立か介助か判断
②座位保持自立・移乗介助→座位にて入浴し一部介助
③座位保持困難・移乗介助→ストレッチャー浴もしくは機械浴
【食事動作】
①座位保持可能→椅子または車椅子で食事
②座位保持困難→ベッド上ギャッジアップ
※これらは工夫や環境の変化によって、改善できる場合もあります。大まかなイメージとして捉えてください。
FIMの内容を理解する
上述のように基本動作能力から病棟ADLを想起できるようになったら、FIMの点数付けを理解していきます。
例えばトイレ動作では下衣を上げる・下げる・お尻を拭くなどの項目がどれだけできているかで点数付けされます。
回復期では常にFIMをつけることになると思いますが、ADL評価時にこれらの項目が評価できればよりADLの理解が深まります。
移動能力を評価する
ここまで評価できたら、立位バランスの能力や移動手段の選定を評価していきます。
ここでは転倒リスクに直結してくるため、例えばTUGなどの指標を使ってある程度根拠を持って判断する必要があります。
他職種に伝える際、移動手段は転倒リスクに直結するため根拠を求められることも少なくありません。
できない動作の問題点を考える
病棟ADLを決定しただけでは、ただ状況を判断したにすぎません。
そこからセラピストとして、どのように介入していくか判断していく必要があります。
つまり評価した中で見つかった問題点について原因追究し、最終的にできなかった動作を可能な範囲で出来るようにしていくことが重要です。
また、今後の転帰先や元々の能力を考慮した「目標設定に基づいた問題点」であることが重要です。
他職種に相談する
以上のように評価・決定した病棟ADLは、常に病棟スタッフと共有し、話し合いを重ねていく事が重要です。
リハ職の視点と他職種の視点は違いますし、業務の優先度も違います。
その中でお互い折り合いをつけて、患者さんにとってよりよい方向性を常に模索することがなにより大切になります。
まとめ
今回はADL設定の際のポイントについてまとめてみました。
病院によって基準は様々だと思いますので、一例として捉えてください。
リハ職としては、専門性を発揮するポイントになりますので、今後も勉強を続けていきたいと思います。