【リスク管理】脈拍測定の基本まとめ
リハビリを実施する際、バイタルサインの確認は重要になります。
介入できるかどうかの判断材料にしたり、運動時の負荷量が適切か確認するなど毎日の臨床で必ず測定する場面が出てきます。
しかし、測定した数値から心肺の状況を判断することはなかなか難しいです。
今回は自身の勉強のために脈拍測定の基本をまとめてみます。
脈拍(脈拍数)
脈拍数(あるいは心拍数)とは「一分間の拍動数」を指します。
成人の安静時脈拍数は60~100/分(bpm)で、これが正常値になります。
これが60以下になると「徐脈」、100以上になると「頻脈」と呼ばれます。
脈拍の測定法
脈拍は橈骨動脈に触れ、1分間測定して何回拍動したかを記録します。
簡易に15秒で測り4倍したり、30秒で測り2倍したりすることもあります。
ただし不整脈があるケースでは1分間で測定することが望ましいとされています。
数値そのものより変動が大事
血圧も同様ですが、数値そのものより安静時に比べてどの程度変動しているかが重要です。
また日々の経過を確認して、通常どの程度か把握しておくことで病態の変化に気づくきっかけになります。
ちなみにアンダーソン・土肥の基準では安静時脈拍120/分以上ではリハを実施せず、運動中140/分以上を超えれば運動を中止するとなっています。
運動中の120/分以上は回復を待って再開になっています。
さらに日本リハビリテーション医学会の基準では安静時脈拍40/分以下では積極的にリハビリを行わないという項目も追加されています。
虚血性心疾患の運動処方(進行基準)では120/分以上または40/分以上増加しないことが挙げられています。
(厚生省「循環器疾患のリハビリテーションに関する研究」班に基づいた進行基準)
この辺は知っておいて損はないと思いますが、実際の臨床では患者さん個人で管理する数値が違い、医師に相談しながら進めるケースが多いと思います。
そのため、これらの基準に当てはめるということよりも普段の数値の把握とそこからの変動を観察しておくことが重要となってきます。
脈拍数と心拍数の違い
「脈拍数」は橈骨動脈などの末梢血管の拍動数であり、「心拍数」は心臓そのものの拍動数となります。(心拍数はモニター心電図や聴診器で測る必要があります。)
つまりセラピストが臨床で測定しているのは脈拍(脈拍数)ということになります。
カルテに記載する時は脈拍数(pulse rate)、心拍数(heart rate)のためPR、HRなどと書かれる場合があります。また看護師によってはレートと表現されたりします。
この心拍数と脈拍数に差がある(脈拍数が少ない)ことを「脈拍欠損」といいます。
これは例えば心電図での心拍数の数値と自分が測った橈骨動脈での数値に差がある場合などです。
これは心臓が拍動しているにも関わらず、有効な血流を末梢の血管に送れていない状態で、いわゆる空うちしていることを指します。
この空うちの数は心拍数と脈拍数の差分の数になります。
これにより心機能の低下を知ることができます。
末梢に血流を送れてないという意味で、徐脈に近い状態になります。
また、脈拍欠損を最も起こしやすい不整脈として心房細動が挙げられています。
交互脈
これは強い脈拍と弱い脈拍が交互に起こる場合を言います。
弱い方の脈拍は触れにくく、結果的に脈拍数は下がってしまいます。
結果的に心拍数と脈拍数に差ができてしまい脈拍欠損となることがあります。
交互脈の特徴としては、強い脈拍がある程度あるために、血圧は保たれている場合があるということです。
血圧が正常でも、脈拍に注意する必要があります。
どのように心拍数を管理するの?
上記のような特徴を知っておいた上で実際どこまでの脈拍数変動を許容するかという所なのですが、医師に相談しつつリハ職としても基準を持っておく必要がります。
そこで目標心拍数の計算が必要になってきます。
いわゆるkarvonenの式を使います。
まず計算を行う前に準備しておく必要があるのは「最大心拍数」と「安静時心拍数」です。
安静時心拍数は患者さんを測定すれば容易に調べられますが、最大心拍数はなかなか測定が難しいケースも多いのではないでしょうか。
なぜなら高齢の患者さんをそこまで追い込む必要があるからです。
最大心拍数とは運動の負荷量を増加させてもそれ以上増加しない心拍数を言い、洞結節の刺激頻度の限界を表します。
また測定するにもCP-Xなどの負荷試験の設備がなければ困難です。
そこで簡便な式による予測最大心拍数を算出します。
これは「220-年齢」の式に当てはめて計算します。
これをもとにkarvonenの式で目標心拍数を出していきます。
karvonenの式(目標心拍数)=「(最大心拍数-安静時心拍数)×k+安静時心拍数」です。
このkとは運動強度のことで、低心機能では0.3~0.5、通常心機能では0.6と言われていますが、患者さんに合わせて選びます。
文献により異なりますが、例えば生活習慣病などの因子を持つ人では0.2~0.4が妥当との報告もあり、症例に合わせて文献を調べる必要があります。
不整脈の場合は自動血圧計ではエラーがでやすい
不整脈とは心房細動や期外収縮などに代表されるもので、その名の通り脈が不整にになります。こうなると一定のリズムではなくなるため、自動血圧計ではエラーが出やすくなります。
そのため徒手的に1分間かけて計測する必要があります。
これら不整脈のうち心室頻拍(VT)や心室細動(VF)は心臓の収縮が早すぎて空うち状態になり有効な脈が生じません。
また徐脈も危険な不整脈であり、逆に次の心臓の収縮までが遅いため血液が末梢に送れず、脈拍数が減ってしまいます。
これらのリスクがある人は心電図が装着されているケースがほとんどですが、何らかの原因で橈骨動脈の脈拍数があまりに減っている場合には注意が必要です。
また不整脈に限らず、運動後に脈拍が弱くなるようなケースでは、血圧低下と同じく負荷量が過多になっているケースがあるので注意が必要です。
まとめ
今回は大まかにですが脈拍測定についてまとめてみました。
自分の勉強のためですが、参考になれば幸いです。
リスク管理は難しいですが、今後も理解を深めていきたいと思います。