しつこいですが、オンラインで観た作品の一部の感想を書き留めておきます。
「ヘンリー五世」＠Barn Theatre, Cirencester, UK（2019年６月）
イギリスの中都市サイレンセスターにあるキャパ200席ほどの小劇場で上演されたものです。役者は８人、現代衣装での演出で今と重ねられ、戦争の醜さや空しさを強調していたな🎉 処刑シーンはセリフではなくその場で銃殺するところを見せ、アジンコートの戦いシーンは映像も使った激しい見せ方で恐怖を感じた😱 ウェールズ、スコットランド、アイルランド兵のお国訛りのシーンなど、お笑いはありません。終始緊張感がありスピーディーでエネルギッシュな舞台でした。
ヘンリー五世を演じた役者は、一般人と同じレベルに立ち、同じように悩み喜び悲しむ人間的な指導者だった。思いを吐露する独白は客席に向かって語りかけ、兵士を鼓舞する「聖クリスピンの祭日」の演説は兵士一人一人を説得するような見せ方で、かなり感動した👏 映像も使われていて、エンディングでは、ヘンリーの死後、ヘンリー六世以降に混乱するイングランド史が語られ、現代の国際情勢の映像が映されるという、戦いの歴史を繰り返してきた私たちに問いかけるような感じだった。
この舞台、批評家たちの受けも上々なようで、地方都市でここまで質の高い芝居を打てるって、さすがイギリスだわ～と感心しました🎊
マリインスキー・バレエ「イワンと仔馬」（2013年収録）
振付 アレクセイ・ラトマンスキー
出演 ウラジーミル・シクリャローフ／アリーナ・ソーモワ／ウラディスラフ・シュマコフ／アナスタシア・ペトゥシコーワ／アンドレイ・イワーノフ／イスロム・バイムラードフ
これ、すごく楽しいんですよね～😊 美術（特に衣装）も振付も、とっても個性的。ラトマンスキー作品はこういう楽しげな作品の方が好きです。衣装はロシア・アヴァンギャルドのエッセンスが効いていて刺激的。抽象化したセットと相まってとてもシュールで乾いた雰囲気です。侍従の衣装の○Ｘ模様がぶっ飛んでいて大好き😆 火の鳥の逆立った真っ赤なヘアスタイルはベジャール「ニーベルングの指輪」のローゲを思い出しました。振付はシーン別にクラシックとモダンが程よく組み合わされていて、見せる部分はしっかり見せている。ダンス以外の振付は、デフォルメしたコント風パントマイムみたいで面白いです。
でもって、ちょっとコミカルなダンス＆演技を見せるシクリャローフ（イワン役）が可愛くて、たまらなくキュート😍 姫君を踊ったソーモアは小悪魔的な可愛らしさがあり、見せ場をきちんと押さえたダンスが良い。皇帝がバカっぽく、その侍従が腹黒そうだけど、２人のやりとりをよく観るとボケとツッコミなんですね😂 クラシックの王道ばかりじゃなく、そろそろこういう作品も持ってきてほしいな。
パリ・オペラ座「白鳥の湖」（2019年収録）
振付 ルドルフ・ヌレエフ
出演 レオノール・ボラック／ジェルマン・ルーヴェ／フランソワ・アリュ
ヌレエフの振付け作品は個人的にイマイチ好きになれないのが多いけど、「白鳥の湖」はすごく好き。王子の深層心理を描いたということで、そこにフロイト的解釈を取り入れているところが面白いです👍 家庭教師／ロットバルトの意味を拡大したことで、王子、白鳥、悪魔の３人（と言っていいのか）の絡みがとても重層的で見ごたえがある。
ジェルマン、とてもよかった～。彼はマチュー同様、永遠の王子様ダンサーですね💕 ナイーヴで夢見がちな雰囲気がジークフリートにぴったりだし、立ち姿やしぐさが優雅でダンスも綺麗だった。
レオノールのオデットは繊細さや儚さはあまり感じなくて割とリアルな人間に見えるんだけど、もともと王子が作り出した存在だから問題ないかも😬 オディールは時々笑顔を見せるなどコケティッシュな雰囲気で迫っていましたね。
家庭教師／ロットバルトのアリュは、以前、マチューの王子のときもそうだったけど、身長が少し低いのを補って余りある存在感😎 アリュの役作りはカールとは違った趣があって、強さと支配的な威圧感があったな。家庭教師として王子を見るときの口元の微笑みが、どのようにも読み取れて、ときどき父性的な雰囲気も。その辺はヌレエフが意図したとおりなのかも。
ヌレエフの振付は本当に地獄だなと、あらためて思いました。群舞の振付もダンサー泣かせ。１幕終盤で男性だけの群舞が踊るシーンは（ボリショイとかの男性群舞のダンスは汗と筋肉って感じですが💦）宮廷人なだけにちょっと異様な空気が漂っている😅 ２、４幕の白鳥たちのフォーメーションは白眉でした✨
