オンライン観劇㊸ ストラトフォード・フェスティバル「じゃじゃ馬ならし」 | 明日もシアター日和

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 舞台収録映像のオンライン配信、自分の観たいリストもそろそろ末尾になってきました。このストラトフォード・フェスティバルでのシェイクスピア劇の過去舞台配信企画も、12作品を配信するということで、これが最後です😌

 

 この戯曲は喜劇なんだけど、その性差別的・暴力的表現ゆえ、昔から問題の多い作品とみなされていて、演出家は現代の観客に受け入れられるよう、いろいろ工夫してますね。

 割と一般的なのは、カタリーナ(以下ケイト)を従順でおとなしい妻に「飼いならした」と思った夫ペトルーキオだけど、じつはケイトはそういう芝居をしただけで、そうやって夫を手玉にとる方法を覚えたケイトの方が一枚上手という演出😙  あるいは、似たような気質の2人がバトルをするうちにゲームを楽しむような感覚になっていくとか👍  あるいは、ケイトが片意地張るのをやめ素直になったら本来持っている気立ての良さが露わになり、最初は持参金目当てで結婚したペトルーキオもそれに気づいて2人が本当の愛を育むとか😊  でも今回のこの舞台は、演出意図がちょっと分からなかったな😓

 

 この戯曲は、居酒屋で酔っ払って暴れたすえに寝込んでしまった職人スライが、目が覚めた時に見せられる劇中劇という構成になっています。

 それがここでは、ステージに人気役者が出てきて前口上を述べたり歌ったりしているときに、一人の観客が騒ぎ出すところからスタート。「これは正しいシェイクスピア劇の始まり方じゃない、歌なんか歌わない。自分はここのパトロンだぞ。おまけに演劇批評ブロガーで、悪いレビューを書いたらお前ら困るぞ」みたいに脅し文句を並べ立てる。あげくにステージに上がって女性蔑視的な発言をするところをスタッフに殴られて倒れる。そこで役者たちが、彼が目覚めたら芝居を見せてあげようと思いたち……という感じで本編が始まるという、なかなか手の込んだリアルな演出👏

 で、その狼藉を働いた男が劇中ではペトルーキオを演じるわけです。ペトルーキオのような暴力的で傲慢不遜、高圧的で女性軽視、拝金主義な男は今あなたの横に座っているかもしれないよ、そしてあなたは被害者ケイトでもあり得るよ、ということかな😑

 

 本編の方の演技は総じてアクティヴでエネルギッシュ、叫び風のセリフの応酬も多くて騒がしいです。バトル部分はかなり過激で、本当に殴り、叩き、顔に唾を吐きつける😱

 ペトルーキオがコメディー味のない造形で、最後までシリアスでユーモアのセンスがなかったため、ケイトや召使いたちへの乱暴には虐待に近いものを感じたな😖  ケイトはそんな彼の奥底に、恐怖心や小心さや弱さが潜んでいると思ったのだろうか。

 

 そのケイトだけど、必ずしも同情されるような女性ではなく、確かに「shrew=御しがたいほどの気性の激しい女性」なのね💦  この舞台でも「人に頭を下げて頼んだことなどないし、その必要もなかった私が……」と言うセリフを憎々しげに怒りに燃えて吐き出すし💥  ペトルーキオに「どんなにつまらない親切にもお礼ぐらいは言うものだ」と諭され「Thank You」の一言を本当に言いたくなさそうに口をヒン曲げて絞り出す🔥  やはり人間的に欠けている部分があると思うな。それでも、そんな彼女がペトルーキオに屈して、自分らしさを封印させられ自分の個性を捻じ曲げられていくシーンはとても痛々しいです😢

 

 戯曲では終盤、互いへの敵意と誤解が溶け仲直りしたケイトとペトルーキオが、ケイトの妹の結婚式に晴れがましく現れるんだけど、この舞台では、このシーンに登場するケイトは暗く緊張した表情で身体もこわばって見え、全く幸福そうに見えないのね。

 問題のある例の長ゼリフ(女は弱い存在だから守ってもらうために、妻は夫に従うべきだ、みたいなことを朗々と語る部分)を彼女がどういう気持ちで言っているのか、私はつかめなかったです🙄  その彼女を見つめるペトルーキオの表情が何を意味しているのかも分からなかった🌀  最後にペトルーキオにキスを促されたケイトは、真顔で彼の胸ぐらをグイッと掴んで引っ張リ寄せるようにするんだけど、あの動作の真意は?

 分からないことだらけだけど、私にはケイトは、自分の芯を曲げられ自我を殺された屈辱、その悶々とした思いを溜め込み、最後まで怒りに燃えているように見えました。彼女はねじ伏せられ、社会的規範の中に閉じ込められたままであり、だからこの舞台は、現代社会でも見られる男女/夫婦のあり方に対する強烈な批判、あるいは風刺なのかな🤔とかね。

 

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