八月花形歌舞伎 第四部 | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

「与話情浮名横櫛 源氏店」

幸四郎/児太郎/彌十郎/中車/片岡亀蔵

 

 3月22日俳優座「マクベスの悲劇」以来の生舞台観劇は歌舞伎になりました㊗️  この日が来るのを待ち焦がれていたのに、でも💦「連獅子」「棒しばり」「吉野山」はパスし、観たのはこの「切られ与三」だけです、すみませ〜ん🙇‍♀️  生舞台への渇望状態を超えて、そろそろ禁断症状が出ていたんだけど、舞踊にはなかなか触手が動かなかった😓  自分はやっぱり、歌舞伎の場合は踊りではなく「芝居/演劇」を観たいのね。とはいえ、お目当ての役者さんが踊るなら、それはまた別とか、いろいろ矛盾してますが😅

 

 ご時世ゆえ、その日に中止になる可能性もあるわけなので、歌舞伎座の入口を入ったところでひと安心。3階席で観ましたが、日曜なのに、通常でいう3階Bはガラガラ、3階Aですらポツポツ空席があったな😞  スタッフが口頭で行う注意喚起(携帯電話は電源から……とか)は、それが書かれたパネルを掲げるだけ。終演後は混雑を避けるべく指示に従って退場するんだけど、そのタイミングもブロックごとにスタッフがパネルを掲げて示していて、スタッフが声を張り上げて喋ることはいっさいなかった。場内にはピリピリした空気が充満していました。

 幕開き前に役者さんからご挨拶(録音したものを流している)があって、日替わりらしく、この日は児太郎でした👍  「舞台に立ててほっとしています、万全の態勢で臨んでいます、楽しんでください、そして次もまた是非……」みたいなことでした。当然だけど、低くてちょっと力強い男子の声でドキッとした☺️  緊張しているように聞こえたけど、素というか、格式張っていない若々しい感じが良かったな。

 

 冒頭、お富が口にタバコ入れをくわえ傘をさして風呂から戻ってくるという色っぽいシーンはなく(何故だろう、上演時間の関係?🙄)、幕が開くとすでにお富は座って化粧を直し始めていて、藤八も家の中に入っているところから始まります。

 幸四郎の与三郎。ニンだし何度も勤めているし、安心して見ていられるわ😊  何と言っても姿が良いね。斜め横顔が男前で、スレンダーな身体に着流しが似合いすぎ。家の前で所在なげに石を蹴る姿、戸口に寄りかかったときのボディライン、あぐらをかいてキセルをふかす所作、絵になる〜💓  セリフの抑揚もよかったな。幸四郎の与三郎の魅力は、育ちの良さを感じさせる柔らかさと、拗ねたような甘さかな。個人的にはもう少しキリッとしたクールな感じがほしい。そして武士としての矜持みたいな雰囲気も。これはまぁ、仁左さまがデフォルトになっているからですが😅

 

 児太郎(ちょっとふっくらしたみたい)のお富は初役? ずいぶん落ち着いていてびっくり。古風な雰囲気とあだっぽさがあり、セリフと所作には時に貫禄も感じました👏  お父さんに教わったのかもだけど、自分に気がある風の藤八を適当にあしらっている時の、低い声でちょっと早口になるセリフ回しが玉三郎にそっくりだったな。元・深川芸者としてのプライドと意地みたいなのが醸し出せるともっと良くなるね(偉そうにすみません💦)。

 お富が藤八にふざけて化粧するところは密な演技になるため、今回は、白粉は藤八が自分で塗り、紅はお富が、折りたたみ式の長〜い棒状の筆を「秘密兵器❗️」みたいに取り出して塗ります(亀蔵が「あ、舶来ものですか」って😆)。江戸時代だから「コロナ」という単語は使わず「こういう時でございますから…」って2人で言い合いながら、ソーシャル・ディスタンスを保ってるのが可笑しかった😬

 彌十郎/蝙蝠安の小悪党味、片岡亀蔵/藤八の間抜けっぽさは盤石。中車/多左衛門もいい人っぽさ(知性?)が感じられて良かったけど、セリフにもう少し貫禄がほしかったかも。

 

 最後、本来なら、多左衛門がお富の兄だと分かる→お富が一人のところに与三郎が戻ってきてそれを知る→与三郎がお富の肩をラブラブに抱いたところで幕ですが、私が観た2日目は、与三郎がお富の肩を抱く……となりかけて思いとどまり、手ぬぐいの両端を2人が持って手繰り寄せ合うところで幕という、これまたソーシャルディスタンス・ヴァージョンでした😙  幸四郎のアイディアかな? 児太郎、笑いをこらえていたような😆

 

 今回久しぶりに生舞台を観て、舞台収録映像でありがちな「自分の見たい所が見られない」フラストレーションがないことの気持ち良さを痛感しました👍  与三郎が啖呵を切っている時のお富の表情とか、多左衛門と蝙蝠安がやり取りしてる時に与三郎が端っこでキセルをふかす姿とか、芝のぶ/下女およしが後ろで甲斐甲斐しく働いているところとか、カメラはたぶん映さないでしょう?

 

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