アマゾン・プライムで視聴 映画「ナショナル・ギャラリー 英国の秘宝」 | 明日もシアター日和

明日もシアター日和

観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

監督 フレデリック・ワイズマン

 

 いま国立西洋美術館で「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」が開催中ですが(10/18まで)、思うところあってそれはパス🙇‍♀️  その代わりという訳ではないけど、たまたまAmazon Primeにドキュメンタリー映画があったので再見。これは2015年に映画館上映されたとき観てますが、とても充実した内容で面白かったんですよね🎊

 ナショナル・ギャラリーに3カ月潜入し、さまざまなシーンをカメラに収めて3時間の映画として編集したものです。作品解説ガイドツアー、スタッフの会議風景(予算編成、広報、マーケティング、タイアップ企画など)、作品を支える職人たち(修復、額縁制作)、企画展の様子(「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」「ターナー展」)、教育プログラムやワークショップの様子などを織り込み、ナショナル・ギャラリーという一つの壮大なタペストリーを紡ぎあげています。

 

 特に興味深かったのはやはりガイドツアーで、キュレイターが絵画の見方のヒントを解説してくれるのがとても参考になった👍  以下はその一部です。

 

ジャコポ・ディ・シオーネ祭壇画の一部「崇拝する聖徒たち」(1370-1年)

 中世の絵画を観るときはそれが置かれた場所(主として教会)に自分がいることを想像してみて、と。細長い窓からわずかな光が差し込む空間、室内は薄暗く、ロウソクの光が絵の中の金色を照らしているその中にあなたは立っている。あなたは読み書きができず、死が身近で毎日誰かが亡くなっている、そういう社会に生きている。絵には天国も地獄も描かれていて、自分は天国に行けるだろうかと思いながら観ているかも……🙏

 

ジョヴァンニ・ベリーニ「殉教者聖ペテロの暗殺」(1509年)

 聖ペテロとその従者が刺客に襲われている💥その向こうでは、何事もないかのように、きこりが木を切っている😱  絵の大部分を占めているのはきこり達と木々。悲劇に無関心な人たちを描くことで、悲劇がより悲劇的に感じられてくるブリューゲルイカロスの墜落のある風景」も同じ手法。

 

ハンス・ホルバイン「デンマークのクリスティーナ ミラノ公妃」(1538年)

 当時のイングランド王ヘンリー8世の、4番目の妻候補としてお見合い用に描かれた肖像画。正面を向いた肖像画は欠点が隠されることがない。光の当て方で表情が生まれ、この場合、冷笑しながら画家を観察しているかのよう。彼女は聡明で世界を正面から見据える、何事にも動じない女性だろうと思わせる。ヘンリー8世は最初の妻と無理やり離婚し、2度目の妻に無実の罪を着せて斬首した身勝手な男😡  賢明なこの女性は縁談を断ったそうです👏

 

ジョージ・スタッブス「ウィッスルジャケット」(1762年)

 スタッブスはリアルな馬の絵で知られる画家。皮なめし工場から馬の死骸を譲ってもらうそれを天井から吊るすまず筋肉と腱を全て描く筋肉を削ぎ取って次の層を描く骨に達するまでそれを繰り返す。躍動感のある絵はこうしたデッサンの積み重ねから生まれたそうです。病院で解剖学の勉強もしたらしい💦  完成までの背景を知ることも大事だと。

 

J.M.W.ターナー「戦艦テメレール号」(1838年)

 テメレール号が戦艦としての役目を終えタグボートで曳かれていく風景。水は「感性」「憧れ」「喪失感」のメタファー、ここでは「終焉」である。溢れ出る夕日の豊かさと地平線に青く伸びる街並みの穏やかな光の揺らめき、光と闇の接点を曖昧にする繊細なグラデーション、帆の正確な形とそれを照らす光、綿密に計算されて置かれたこれらすべてが画家の感情のメタファー✨ では、画家はブイとタグボートという2つの黒をどう調和させたのか?

 

ゴッホ「ひまわり」(1888年)

 イエローとグリーンがふんだんに使われているが、テーブルと花瓶のラインはブルーで描かれている。そこに画家のどんな意図が隠されているのだろう? 歴史、色、形、構図、さまざまな視点で絵を解読し、画家の心を理解しようと試みること

 

 映画はダンスで締めくくられました。2012年の企画展「変身物語ティツィアーノ」のときに、ロイヤル・バレエとのコラボで行ったイベント。「ディアナとアクタイオン」「アクタイオンの死」の絵の前で、ウェイン・マクレガー振付「Machina pour Metamorphosis」エドワード・ワトソンリアン・ベンジャミンが踊っています。とても抽象的だった〜😅

※画像はすべてナショナル・ギャラリーから。

 

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

明日もシアター日和 - にほんブログ村