あなたも怖かったかもしれないが、わたしはもっと怖かった

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マンションに帰ってきて、自宅のインターフォンを押す。

もし嫁が在宅していればエントランスドアを開けてもらって、わざわざ自分でカギを取り出す手間を省く。

この日はエントランスドアが開いたので、どうやら嫁は部屋にいるようだ。

エレベーターに乗り込み、部屋がある行き先階ボタンを押す。

ん?

オレ以外には誰も乗っていないはずのエレベーター内に何者かがいる気配を察知した。

素早く見回すと…

ぎぃえーーーっ!

ゴ、ゴキブリ!!!

しかもけっこう大きめのやつ!!!

このマンションに住んでそれなりになるが、初めての事態にちょっとパニック。

慌ててエレベーターを降りようとするが、時すでに遅し。ちょうどエレベーターのドアが閉まりきったところで、オレは狭い空間でゴキブリと対峙する羽目になってしまった。

普段はそれほど気にしたことはなかったが、エレベーターの速度が遅っせーの!!

もっと…もっと速く着いて欲しい…さっさと降りたい…

いや、待てよ…よく考えたら…

まずい、まずいぞっ!!

このまま一緒に行ったら、オレが住んでいる部屋の階までゴキブリを連れて行くことになってしまう。

とっさに1つ下の階のボタンを押してやった。

ゴキブリには下の階でエレベーターから降りてもらおう。オレの住んでいる階さえ安全であれば、他の階の住民のことなど知ったことではない。

あれ?

そういえば、うちの玄関に殺虫スプレーが置いたあったな…

エレベーターの目の前の部屋に住んでいるので、階に着いたらパッと飛び出て、玄関から殺虫スプレーをサッと取って…

こいつを殺す!!

いつも嫁はエントランスドアを開けたついでに部屋の玄関のカギも開けておいてくれるので、エレベーターを降りたらパッと飛び出て、玄関のドアをバッと開けて、殺虫スプレーをサッと取って、シューっと…

上昇を続けるエレベーター内で完璧な殺害計画を練る。

ちょうど殺害までのイメージがつかめたところで、エレベーターのドアが開いた。

計画遂行っ!!

エレベーターをパッと飛び出し、玄関のドアをバッと開け…

あれ?!

ドアが開かん!!

嫁が玄関のカギを開け忘れたか?

こういう緊急事態に限って何で開けておかないんだ!!

ドアノブをガチャガチャさせながらドアを引っ張ってガンガンさせ、早く開けろアピール。

それでも開かん!!

おいっ!!

今は自分のカギを取り出している余裕もない1秒を争う戦時下だというのに何なんだ!!

すると室内から声がした。

「えっ…えっ…だ、だれですか?」

…え?

それはこっちのセリフでもある。

おまえも誰?!

嫁じゃないやつが部屋にいるぅ!!

ここでようやく気が付いたのである。

ここ…1つ下の階だったわ…

そういえば1つ下の階ボタンも押してたことを思い出した。

だが、この人に事情を説明しているヒマはない。

「だれですか?」という問いかけには答えず、慌ててゴキブリがいるエレベーターに再び飛び乗り、自分が住む階に移動。

パッと飛び出て、カギの開いていた玄関のドアをバッと開けて、殺虫スプレーをサッと取って、シューっと…

計画通り、殺害成功!!

いやぁ、怖かったぁ~

まだ一度も会ったことがない下の階に住んでいる方へ。

そういう理由で、お宅のドアを見知らぬ男がムリヤリ開けようとしていたわけです。

全てゴキブリのせいです。

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