ヴェネト・ラグーンに浮かぶ キョッジャ島(旧市街)
ヴェネツィア市と橋で結ばれ、ほとんど市の一部。
ゴンドラ
広がる青と、陽のかがやきはきみの上高く
きみの下には永遠(とわ)に静まりかえる海
きみのほっそりした背骨が軽やかに揺れ
運びゆく弦(いと)のしらべと戯れの恋。
きみのしなやかな舷側はしっとりと黒く真けんそうで。
楽しい今日の渋で鞣(なめ)されているかぎり甘ったるく、
甘ったるく奇妙な、死んでゆく夢、
少年時代と恋の終る夢。
ぼくの若き日々は辷(すべ)る
見知らぬ行くてのさきざきへ
美しく耀く広がりをこえ、
細身のゴンドラ、きみのようにかるがると速やかに。
というわけで、まずはヴェネツィアでの“舟歌”の実況を↓
イタリア民謡「オ・ソレ・ミオ(おお私の太陽)」
ヴェネツィアにて実況
しっかりした音程と声量、これなら、オペラハウスの舞台でも通用しそうですねw
「舟歌」とは、ウィキ日本語版によると:
「もともと船頭が舟を漕ぐのに都合の良い調子で口ずさむ歌であったと考えられ、このような民謡や労働歌としての舟歌にロシアの『ヴォルガの舟歌』、日本の『最上川舟唄』などがある。
クラシック音楽においては、メンデルスゾーンが『無言歌集』で『ヴェネツィアのゴンドラの歌』を作曲したのが早い例であり、その後ショパン、アントン・ルビンシテイン、フォーレ、チャイコフスキー、プッチーニ(「マランゴーナの舟歌」)、ラフマニノフらが作品を残している。〔…〕 またオッフェンバックのオペラ『ホフマン物語』の中の『ホフマンの舟歌』も有名である。」
船頭さんだとか、最上川だとか。こんなことを書いてるのは日本語版だけですが、こういう説明もいいと思いますw
やはり、いちばん有名なのは「ホフマンの舟歌」。Youtube にも、各種音源が出ていますが、イタリア民謡調の歌い方を選んでみました。サイゼリヤで耳が馴れちゃってるせいかなんか、‥いいですねえ、この歌いっぷり↓
オッフェンバック「ホフマンの舟歌」
アルバノ・カッリージ/vocal
そして、このさい、「最上川舟歌」↓
山形県民謡「最上川舟歌」
福田こうへい/vocal
「ヴォルガの舟歌」は、「ヴォルガの船引き歌」とも言うんじゃなかったっけ‥‥
調べてみたら、やっぱりこれは、舟に乗ってる船頭さんじゃなくて、川をさかのぼるときに、岸から人間が綱で引っ張ったんですね。↓レーピンの有名な絵画だと、いかにも非人間的な重労働ですけど、革命的ロマンチシズムな粉飾も混じってるみたいですよ。じっさいには、人や荷物をおろしたあとのカラの船を上流に戻す時に、人間が引っ張ったらしいです。人や荷物は、馬車に乗せて道路を走ったほうが速いですからねw
ちなみに、明治・大正の日本では、鉄道馬車と並んで、“人力鉄道”も (こちらは、おおぜい人を乗せて) ふつうに走ってたそうですから。
「ヴォルガの船引き歌」は、ソヴィエト赤軍合唱団の音源が人気が高いですが、ここでは、もう少し昔にはやった素朴な歌いっぷりで:
ロシア民謡「ヴォルガの船引き歌」
ポール・ロブスン/vocal
クラシックも聴いておかないとw
メンデルスゾーンの『無言歌集』(ピアノ曲集です)には、「ヴェニスのゴンドラの歌」というのが3曲あります。その中で、ギトンがいちばん好きなのは↓この曲なんですが、‥‥どういうわけか、いちばん人気がないんですねw ヨウツベでも、探さないとなかなか出てきません。でも、メロディーは単純だし、3曲のなかで、いちばんわかりやすい、いい曲だと思うんですがねえ。。。
メンデルスゾーン『無言歌集』から
「ヴェニスのゴンドラの歌」作品62の5 アンダンテ・コン・モト
エグリ&ペルティス/ピアノ(2台)
さいごに、↓これはちょっと掘り出し物です。グリンカといえば、“ロシア音楽の父”。でも、「ルスランとリュドミラ序曲」しか知らない人が多いw 聴く機会がないですね。
グリンカは、青年時代にイタリアで音楽の修業をして、ロシアに西洋音楽を持ち帰ったんです。なので、ヴェネツィアのゴンドラ舟歌が、レパートリーにあってもおかしくはない。
小品のピアノ曲ですが、どうしてこんないい曲が知られていないんだろう‥‥と思うくらい名曲です。ぜひ、お耳を拝借...
ミハイル・グリンカ「舟歌」
ドミトリー・ブラゴイ/ピアノ
キョッジャ
日焼けして、ぎっしりと並ぶ玄関口(ファッサード)、
隠れた壁龕(ニッチ)の聖母像、
あいだを縫う鏡面、たゆたうゴンドラ
褐色の漁師を乗せた幅のある小舟。
そして、くずれた壁の煉瓦のあいだに、
狭い路地奥、階段と運河とに、
どこにでも望みなき悲しみがまどろんでいる
むかしの話を語りかけてくる。
ぼくは怖いのを隠してそっと歩く
タイル張りの路――かれらを起こしてしまうかもしれない
もし悲しみが目覚めたら!もう逃れようがない!
ぼくは急いで通り過ぎる、船着場を捜す、
海はどこだ、旅の船に乗ってしまおう。
ぼくのうしろで、路地たちは悲しそうにためらい、寝静まる。
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