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上野・不忍池





↓こちらにレビューを書いてみました。

【必読書150】石川啄木『時代閉塞の現状』(3)

―――大都会の甍(いらか)をながめて


1908年4月、啄木は、妻子を小樽

残したまま、単身上京した。
「小説で身を立てる」

2度目の挑戦であった。

しかし、3年間のブランクのあいだに

彼のスタイルは時代遅れになっていた。

四苦八苦するなかで

眠れない夜にノートに書きつけた

異様きわまりない短歌群…

「これはいける!」と膝を打った啄木は、

ノートの短歌をキレイに直し、

世間の人が喜ぶ形に整えて発表した。

こうして、「国民歌人」啄木は誕生した。

湯川秀樹博士は、

国民に愛唱される『一握の砂』よりも

ノートに書かれたままの短歌群のほうが
「啄木の無意識の世界深層心理みたいなものが

生な形で出ていて、…実におもしろい」
と指摘した。
私も同感である。

詩や小説を書きたいと思っている人は、

啄木ノートを読むといい。

ここには、汲めども尽きぬモチーフの源泉がある。

あの宮沢賢治も、

ここから「でんしんばしら」を盗んでいる !!

 

東京で、朝晩の通勤時に

啄木は人びとの観察を始めた。そして、

“民衆”の発見への転回があった。

その転回自体、明治国家への

かれの姿勢の変化を示している。」

(鹿野政直)