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Lucas & Arthur Jussen

 



           瞑 想

 人びとの願うところ
 流血と罪悪と大砲の轟きにみちびかないものはない。
 自然よ、汝をようやく見出した者は、
 往くところどんな国もどの人も
 みな親しき同胞
(はらから)、聖なる故郷となる。

 世界のどこにでも
 風は吹き水は落ち、
 青い空気と海の晶光は
 ここかしこ遍
(あまね)し。
 天末
(てんまつ)に淡い黄金(きん)の雲
 と穏やかな月、
 森に獣の叫び、遥けき渚
(なぎさ)
 鳥の囀
(さえず)り、山、樺、岩の小径(こみち)――
 みなわたしのお気に入り、わたしの心の宝もの、
 おのずから穏
(やす)らぐ魂の慰め。

 罪もて罪を測るなかれ!
 おまえとおまえの歩みをば
 自然の際限なき忍耐と較べよ;
 自然はおまえと共に往く。
 自然を己れの棲処
(すみか)とすれば、
 夕べは訪れ朝
(あした)は来たる
 恙
(つつが)なくも匿(かくま)
 父の家に。

 



 16-17世紀のオランダといえば、ポルトガル,イギリスを押しのけて日本貿易を独占したことで、私たちにも馴染み深い外国ですが、当時オランダは、スペインから独立し、「黄金時代」と呼ばれる繁栄の頂点にありました。

 

ティールマン・スザート『Danserye(舞曲集, 1551年)』から
ロンド
ロンドとサルタレッロ
ロンド(むかしひとりの娘がいた)
コレギウム・アウレウム/演奏

 


ティールマン・スザート(Tielman Susato、或いはTylman Susato, 1500年頃 - 1562年頃)は、ルネサンス期の作曲家であり、アントウェルペン〔現・ベルギー〕における器楽奏者、出版業者である。

 スザートは秀でた作曲家でもあった。スザートは、器楽曲も多産であったが、それらの多くは今日でも演奏され、またレコーディングされている。1551年に『Het derde musyck boexken ... alderhande danserye』という舞踏音楽の本を出版している。単曲を集めたものであるが、芸術的アレンジを加えており、多くは舞曲形式で書かれている(アルマンド、ガイヤール等々)」

Wiki:「ティールマン・スザート」
Wiki:「Tielman Susato[eng]」


 しかし、聞いてみると、3曲とも聞いたことのある曲ばかり。他の国の他の作曲家の名を冠せて、楽譜集やCDにも載っています。著作権なんて無かった当時のことですから、誰が最初に作ったかは、あまり気にしないのでしょうか。スザートのオリジナルなのか、それとも市井の踊りの曲を集めて編曲したのか。いずれにしろ、当時オランダには、いろんな国の音楽や文化が伝わって来て、たいへんにぎやかだったようです。

 ところで、話は飛ぶんですが、最近オランダのクラシック音楽といえば、↓この兄弟から眼が離せません!


 

シューベルト『アレグロ イ短調 “人生の嵐』 D947
アレグロ・モデラート
ルーカス&アルトゥーア・ユッセン/ピアノ

 



 



ルーカス・ユッセン(1993-, オランダ,ヒルヴェルスム)とアルトゥール・ユッセン(1996- 同)は、幼少の時からピアニストのデュオとして活動している兄弟である。母はフルートを教える音楽教師、父はオランダ放送フィルハーモニー管弦楽団のティンパニー奏者でポップ・アンサンブルのパーカッション担当という音楽的環境に育つ。オランダのピアニスト ヤン・ヴェインとポルトガル出身のピアニスト マリア・ジョアン・ピレシュの指導を受けて、2006年には、13歳と 10歳で、モーツァルト『2台のピアノのための協奏曲』を、リカルド・カストロ,ラン・ラン,オランダ放送室内フィルハーモニー(ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン指揮)と共演した。以後、バッハ、モーツァルト、シューベルト、プーランク等々を演奏、また、しばしばオランダのテレビ番組に出演し、アイドル・タレントとしても人気を得ている。2010年以来、ドイツ・グラモフォンと契約している。

 兄ルーカスは、2010年から2年間のアメリカ留学のあと、2013年からはリスボンのレイナ・ソフィア音大でドミトリィ・バシキロフに師事している。オランダ室内管弦楽団のアーティスト・イン・レジデンスでもある。

 弟アルトゥールは、アムステルダム音楽学校でヤン・ヴェインに学んでいる。」

Wiki:「Lucas & Arthur Jussen[deu]」
Wiki:「Lucas & Arthur Jussen[eng]」


 ユーチューブにも放送録画が出ていますが、オランダでは小さい時から2人でテレビに出て、大人気だったようです。ヨーロッパの音楽趣味の個人ブログでも、早くから注目されていました。

 そのころの録画をいま聴いてみると、2人とも、子どもとは思えない硬質のタッチなんですね。しかも超絶技巧。さいきんも、その方向はますます強まっているようで、あのポリーニのデビュー当時の衝撃を思い出します。

 2人連弾のピアノ・コンクールというのは無いので、国際的な賞は取れないかもしれませんが、個性の強い演奏スタイルは、単なるアイドルの域をはるかに越えています。 

 

 ちなみに、アムステルダム ‐ リスボン と聞いて、あることを思いついたかもしれませんが、本人が露出を望まないマイノリティ(少数者性)は、そっとしておきたいものです。


 

モーツァルト『4手のためのピアノソナタ』ハ長調 K.521 から
第1楽章 アレグロ
ルーカス&アルトゥーア・ユッセン/ピアノ

 


 最後は、もういちどシューベルト。ゆったりしたピアノ・トリオで、締めくくっておきたいと思います。

 

シューベルト『ピアノ3重奏曲 第2番 変ホ長調』 D929 から
第2楽章 アンダンテ・コン・モート
アンブロワーズ・オブリュン/ヴァイオリン
マエル・ヴィルベール/チェロ
ジュリアン・ハンク/ピアノ

 


 おしまいのヘッセ詩↓ですが、朗読動画があったので、貼っておきます。BGMも字幕もありませんが、画面でふんいきの足しになるかも。。。

 

『転 機』(1901年)
ヘルマン・ヘッセ/作
フリッツ・シュターフェンハーゲン/朗読

 



      転 機

 青春はすでに泡となって消え
 二度と帰ることなく沈んだ、
 かたや夢想に耽って取り過ごし、
 かたや酔いしれて時を空費した。

 そしてまったくわたしのものとはならなかった
 歌と星の数々の世界、
 一夜明ければ郷愁となり夢となり
 とどかぬ蒼い過去とはなっていた。

 

 

 

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