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オスカー・ワイルド



↓こちらにレビューを書いてみました。


志賀直哉と里見弴―――
―――同性の愛慾と葛藤(8)




里見弴と4歳年上の志賀直哉との同性愛


1913年つゆ明け間近のうだるような昼下がり、

志賀直哉は、東京市電の路面電車に乗っていて

人身事故に出遭います。親の眼を離れた幼い

男の子が、轢かれる寸前で、電車の救助網

すくい上げられ、奇蹟的にけがも無くすみました。

 

直哉は、この体験を小説『出来事』にまとめます。

20日近くをついやして彫琢されたこの作品は、

眠りこむような蒸し暑さのなかでの突然のできごとに

仰天する電車の中の人びと

集まってくる沿道の野次馬たちそれぞれの

個性にみちた行動を生き生きと描き出しています。

しかし、著者の眼は、就中、少年と若い男性の

裸身のエロスに注がれている、そのことが

私たちを瞠目させます。直哉はそれを

晴れわたった夏空のように爽やかな景物として

描いているのです。

 

『出来事』を脱稿した 8月15日、お盆の

にぎやかな人出に湧くお台場海岸へ、

直哉はオトコのはだかを求めて出かけます。

その帰り、同性愛エロスに酔い痴れた不注意のあまり

直哉はみずからが山の手電車に接触して大けがを

負うことになるのです。

 

このほか、今回は、アイルランド出身のオスカー・ワイルド

――「史上最初のゲイ」として知られる世紀末の耽美詩人を

志賀直哉がどのように言及していたかにも触れます。