エルンスト・カッシーラー,佐藤三夫・他訳『シンボルとスキエンティア』
↓こちらにレビューを書いてみました。
【必読150番外】 カッシーラー『シンボルとスキエンティア』(1)―――
―――デッラ・ミランドラからケプラーへ
カッシーラーについては、先日レビューした『新幾何学思想史』
のなかで、リーマンの非ユークリッド幾何学を、もっとも早く
理解し評価した哲学者として紹介されていました↓
今回は、カッシーラーが、ルネサンスから近代科学の
黎明期にかけて、プラトニズムがはたした役割を
論じた『シンボルとスキエンティア』を読んでみます。
ルネサンスの「人間の自由」を高らかに唱えた
ピーコ・デッラ・ミランドラから、ケプラー、ガリレイを
経て、デカルト、スピノザへと至る科学・哲学史です。
とはいっても、ここでカッシーラーが注目しているのは、
数学的厳密さや、実験、観察とはおよそ縁遠い
ピーコの人間至上主義と“宇宙生命”のアニミズムが
ケプラーらの新しい科学研究の
背中を押すようにして、強力に促したという
逆説的事態なのです。
ピーコの天地創造神は、アダムに語りかけます:
『われわれは定まった住居も、固有の姿形も、
おまえに特有ないかなる天性も、おまえに与えなかった。
われわれはおまえを、天上的なものとも地上的なものとも、
死すべきものとも不死なるものとも創らなかった。
おまえ自身が、自分の自由な造り主であるかのように、
自分の好むどんな姿形にでも、自分をかたちづくるように
そうしたのだ。』
人間は、固定した本性を与えられてはいない。
人間は自分自身を、どんなものにも創り上げることができる。
こうして、「桎梏が破られたのは、科学的基盤に
基づいた純粋に合理的な議論によってではなかった。
むしろ、世界に対する新しい態度と新しい感覚が
必要だったのである。」